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第14章 (2)シュウside
2-3
しおりを挟むアラン様の元へ行った一年以上という月日の中で、彼は一体どれ程の存在になっているのだろう?
たくさんの契約や取り引きを成功させ、間違いなくアラン様の会社に大幅な利益をもたらした人物だ。
そんなヴァロンを周りが……。
いや、何よりアラン様が簡単に手放すのだろうか。
ヴァロンが天才ですごいのは分かっていたが、今回の任務は正直不向きではないか……と。
何だかんだでやってのけるとは思っていたが、もう少し時間がかかると予想していた。
アカリさんや子供の元に帰りたい、という強い思いからなのか……。
実は彼が会社という組織の中で生きていく事に適した能力を持っていたのかは、分からない。
けど、何はともあれ少しでも早い帰還になる事は望ましい。
アラン様という依頼人は、今回のようにどうしても引き受けなくてはならない任務でなかったら、間違いなく私はヴァロンにも他の配達人にも勧めたりしない人物だ。
夢の配達人への依頼は、内容と報酬金が割りに合っているとマスターが判断すれば誰でも申し込む事は出来る。
勿論、殺人であったり、明らかなる逆恨みや復讐。悪事になる依頼はマスターが受理しないから、大きな事件に発展する事はまずないのだが……。
私には、アラン様がただ会社を大きくしたいが為にヴァロンにこの依頼をしたとは到底思えなかった。
自分の方がアカリさんに相応しかったと、ヴァロンよりも上だと知らしめたいのか、それとも何か他に理由があるのか……。
交渉に行った時。変装して行ったにも関わらず、アラン様はすでに初めからヴァロンがヴァロンである事に気付いていた言うし……。
一度会った人物を忘れない記憶力に優れたヴァロンが覚えていないのに、アラン様が彼を特定出来たと言う事は……。
きっと以前から何らかの形でヴァロンの事を徹底的に調べ上げていたからに違いない。
恐ろしい情報力。
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