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第13章 (3)ヴァロン(マオ)side
3-2
しおりを挟むレインボーデイの過去の勝利レースには、いくつかの共通点がある。
まずは、この競馬場。
追い込み馬で末脚勝負のレインボーデイには、最後の直線が長いこのコースが最適。
次に、天候。
過去に勝ったレースは全て雨で渋った荒れた馬場。
そして、1枠1番の枠。
寂しがり屋のレインボーデイは大外に行く程やる気を無くし、逆に内枠で他馬に包まれている方がレース中安心して走る。
つまり……。
末脚勝負が活かせる直線が長い競馬場。
馬場は大好きな荒れた泥んこ。
安心して走れる状況。
今日のレースには、レインボーデイにとって絶好の条件が揃っている。
しかも……。
「確かに、レインボーデイはここ最近負け続けています。
……けど。元々仕上がりが遅くて、何度かレースに使わないとヤル気を出さない馬。
今日のレースの直前の仕上がりは、過去最高だそうです」
「!……」
これが、競馬の恐ろしさだ。
競馬場、天候、レースの状況……。
様々な条件が重なった時、普通じゃ予想出来ない展開を呼ぶ。
最後の直線を曲がる時、先に仕掛けてスピードを上げた馬達は遠心力で外にふくれる。
そこで、じっと最内で末脚勝負に力を溜めていたレインボーデイの前に……僅かな隙間が出来た。
そこで、勝負を仕掛ける。
『最後の直線勝負!
おぉ~っと!最内からすごい脚で突っ込んでくるのはっ……。
!……な、なんと!レインボーデイだッ!!』
「!?……な、なんだとっ!!」
実況者の言葉にロイス様は席から立ち上がると、大きな窓ガラスに張り付くようにしてレースを見つめる。
『レインボーデイが……。
先頭のキサラギにっ……並んだぁ~~ッ!!』
ゴール板まで最後の二頭の競り合い。
普通に走ったら、速さも地力もキサラギが上。
……でも。
まだ、もう一つある。
レインボーデイがキサラギに勝る条件が。
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