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第12章 (1)アルバートside
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しおりを挟む「……アカリと、連絡を取ってやってくれ」
「……」
「君が忙しいのは重々承知している。
会いに来てやってくれ、なんて無理は言わん。
せめて、手紙か電話だけでも……」
アカリの意思とは関係なく無理矢理嫁がせ様としていた男が、今更何を言っているんだと思われてもいい。
ただ今は、あの子の笑顔を守ってやりたい。
「口にはしないが、寂しいに違いない。
……。アカリには君が必要なんだ」
「……」
「っ……頼む」
ヴァロン君の片手を自分の両手で握り締める様にして、私は頭を下げた。
すると、暫しの沈黙の後に……。
ヴァロン君が口を開く。
「……アルバート様。
お顔を、上げて下さい」
優しい穏やかな口調でそう言うと、彼は私の両肩を掴みゆっくり上を向かせてくれた。
顔を合わせるとそこには笑顔があり、分かってもらえたのだと安堵する。
……しかし。
「……。
申し訳ありませんが、お断り致します」
「!……え?」
「その件につきましては、今の私には関係のない事。
孫娘様に私が連絡を取る事は出来ません」
「……」
私は、一瞬言葉を失った。
あまりにも淡々としたその返答は”何故、私が?”とでも言いたげで……。
まるで、アカリの事など忘れている様な……表情。
……ああ、そうか。
彼は今、ヴァロン君ではなく”マオ”なんだと……。
完全に仕事しか見ていないのだと、悟る。
仕事とプライベートを完全に使い分ける事は、出来る人間には必要な事だ。
……でも。
「もしかして……。
例の、記事は真実。……なのかね?」
マオと相手の企業の令嬢との噂。
こんな事を聞くつもりではなかった。
でも、望んでいた形とは違った彼の返答と態度にじわじわと怒りが込み上げる。
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