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第11章 (3)スズカside
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しおりを挟む「……どうですか?
顔は少し丸く描いた方が可愛らしくなるんです」
「!……。本当だ」
間隣でマオ様が私の描いた絵を見つめて”なるほど”と言った感じで頷き、再び自分でも猫の絵を一生懸命に描き始めた。
真剣な横顔。
……。
どうしてだろう?
私よりも年上の大人な男性なのに、可愛い。
いつも離れていた一定の距離よりも近付けて、肩がぶつかりそうな位、マオ様の体温が伝わってきそうな位で……ドキドキする。
……このお方は、本当に不思議な人。
身分差を気にしたり、きっと簡単に人を嫌ったり、しないのだ。
”ハッキリ言います。
僕には使用人も夜の相手も必要ありません。
さっきはアラン様の手前、強く拒絶はしませんでしたが……。正直迷惑です。”
最初の夜に言われたあの言葉も、優しさ。
この方はきっと、素直で……。
優柔不断で人を傷付けたり、しない。
昔、父によく言われた。
”他人に流されてフラフラする男は最低だ。
そんなのは優しさじゃない。
自分の意志を貫ける男を選びなさい。”って……。
マオ様に出逢って、父のその言葉の意味と深さを知った。
「……よしっ。こんな感じかな?
全くの初心者なんで、きっちり指導をお願いしますね?スズカ先生」
「はいっ」
下手なりに一生懸命描かれた下絵。
仕事でお疲れなのに屋敷に帰宅する度に慣れない手芸を必死に学んで、丁寧に猫のぬいぐるみを作り上げていく。
少しの妥協も許さず、自分が納得するまで何度も何度もやり直しをして……。
とても初心者とは思えない位に綺麗に仕上がっていく、マオ様のぬいぐるみ。
そのぬいぐるみを見つめる瞳が、強く美しい。
”羨ましい”……。
そう思わずには、いられない位のマオ様の表情。
ずっとずっと、見ていたいと思った。
〈回想終了〉
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