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第11章 (3)スズカside

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【マオの部屋】

「こちらが本日より、マオ様のお部屋にございます」

震えそうな声を必死に抑えて、私はマオ様をお部屋まで案内した。
部屋に男性と二人きり。
それだけで私の心臓はうるさく鳴り止まない。

荷物を机に置き、上着を脱ごうとしたマオ様にドキドキしながら手を差し出すと……。
なかなか上着を渡してもらえない。

どうしたのかとお声を掛けようとすると、先に口を開いたのはマオ様だった。


「……あの。
自分の事は自分で出来ますので、今日はもう下がってもらって大丈夫ですよ?」


!……え?っ……。

まさかのマオ様の言葉に、私は唖然としてしまった。

女を選べというアラン様の申し出に、驚き戸惑う人は確かに少なくない。

けれど、やはりみんな男性。
アラン様の前では遠慮した素振りを見せても、部屋で二人きりになると態度が変わると……。
これまで何度も耳にした。


一見、穏やかそうに見えるマオ様も男性。
しかも、あのアラン様と肩を並べて仕事を熟せる程のお方。
きっと内には激しい心を秘めているのではないか、と……思っていた。

立ち尽くしたままの私。
するとマオ様は溜め息を吐き、自分で上着をハンガーに掛けながら、キッと少し睨む様な横目で私を見ると言葉を続ける。


「ハッキリ言います。
僕には使用人も夜の相手も必要ありません。
さっきはアラン様の手前、強く拒絶はしませんでしたが……。正直迷惑です」

「っ……」

静かな口調なのに、ズバッと相手を切るナイフみたいな鋭い声。
とっさに”怖い”と感じて身を縮めて震えた。

やはり、アラン様の親戚の方。
深く関わり合いたくない。けど……。

”いいな?しっかり持て成すんだぞ?”……。

アラン様の命に背く事は、決して出来ない。
逆らえば、どんな仕打ちが待っているか……。
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