夢の言葉と陽だまりの天使(上)【続編②】

☆リサーナ☆

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第10章 (4)ヴァロンside

4-1

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【8月14日/依頼人宿泊先の部屋】

明日からの任務開始に備えて、俺は依頼人アランの元に前乗りして詳細を確認する事になっていた。

堅苦しい挨拶はいいと言われ、部屋を訪れて早々渡されたのは変装に使うウィッグとカラーアイレンズ。
今回俺とアランの関係は周りには親戚という事になっているらしく、奴に似せた雰囲気に自分を仕上げる。
黒に近い灰色の髪と、灰色の瞳。
最後に黒ぶちの眼鏡を掛けて洗面台の鏡で自分の変装した姿を見つめて深呼吸すると、俺は洗面所を出てアランの元へ戻った。


「お待たせしました」

「!……へぇ」

アランが座るソファーの側に行くと、頭から足の先まで俺の全身を確認する様に見つめて……。
奴の視線が俺の左手を見て指を差す。


「それ、外して。
任務期間中は独身、恋人もいないと答えろ」

アランが指摘したのは、結婚指輪。


詳しくは言わないが、周りに女がいる影を見せるな、と……。
アランの瞳が俺に命令する。

俺に女がいては不都合な場合がある、という事だな。
”独身の男”も交渉や契約の取り引きの材料。

……。
アカリ、ごめんな。

……。


「わかりました」

俺が左手の薬指から指輪を外し上着のポケットにしまおうとすると、アランがスッと手の平を差し出す。


「契約期間が終了するまで、私が預かる」

”よこせ”と俺を射抜く瞳。
相手は依頼主、逆らう事は……本来許されない。

……。

けど、俺の心が自然と拒否する。
アランを見据えたまま、俺は指輪を自分の上着のポケットにしまった。

するとその様子を見て奴が笑う。


「……反抗的、だな。
まあいい。従順すぎるのもつまらんからな」

そう言うとアランはソファーから立ち上がり、俺の胸に分厚い資料の束を押し付けるように渡してきた。
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