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第10章 (3)ギャランside
3-2
しおりを挟む「……。
怒ってますか?貴方の意向に背いた事」
ディーラーがボールを投げ入れるウィールを見つめたまま、ヴァロンが言った。
長期任務の事、身重のアカリさんと離れる事。
ワシは昔の自分と重ねて、つい感情を剥き出しにして反対した。
……けれど。
「……。
お前達が2人で決めた道なら、それで良い」
数日前にアカリさんから手紙をもらった。
たくさんのワシへの感謝の言葉と、ヴァロンへの想いが溢れた手紙。
それを読んで分かった。
似ているワシとヴァロンの違う所は……。
「ワシは……。
シュウの母親を愛しておらんかった……」
他の客がウィールのボールの行方に集中する中、ワシは思い出す様に呟いた。
……その場の流れ。
簡単に言えば、シュウの母親とはそういう事。
仕事が思うようにいかずイラついて、酔った勢いで身近にいた彼女を抱いた。
結婚する気もなかった。
たまたま暫く滞在した場所で知り合った女。
……いや、まだ少女の様だった。
彼女の歳も詳しい事も何も知らない。
相手が無抵抗なのを、何も言わないのをいい事に……好き勝手やっていた。
「誰でも、良かった。
……。ワシとお前は、違う」
自分のやりたい事を見付けて彼女の元を去り。
1年以上過ぎてふと近くを通りかかった時、彼女の死を知った。
子供を……。
シュウを産んで、亡くなっていた。
「お前は、お前じゃ。
……後悔だけせんように、生きろ」
そう呟いた瞬間。
ウィール内のボールがカツンッと跳ねて……。
赤の27に、入った。
……。
遊びや賭け事はこんなに思い通りになるのに……。
人と人は何故、なかなか思い通りにいかないのだろう?
ディーラーがワシの前に差し出した山積みのチップを見つめて苦笑いを漏らすと……。
「嘘だな」
ヴァロンがハッキリそう言った。
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