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第9章 (2)ヴァロンside

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……
…………。


アカリの生まれ育った町を色々見て歩いて、最後に彼女が連れて来てくれた場所は……。


「大家さんに特別、鍵借りたんだ~」

と、アカリは得意気に笑うと家の扉を開ける。

一度来ただけだけど、覚えてる。
ここは、アカリが育った彼女の自宅だ。


母親が亡くなって突然祖父アルバートに引き取られた為か、家具がそのままの状態の家の中。
さすがに1年以上放置していたせいでホコリっぽいが、以前と変わらない我が家にアカリは懐かしそうに表情を綻ばせていた。


「ここ、私の部屋!」

「うん、知ってるよ」

奥の部屋に案内されて、俺は微笑った。

小さな子供部屋。
ここで、俺は5歳のアカリと会った。


「おかっぱで、前髪揃ってて……。
コケシみたいだったよな?」

「!っ……コケシって……。
絶対に、褒めてないよね……」

俺が思い出しながらアカリの髪に触れると、拗ねた様に彼女が頬を膨らまして見上げる。

大きくなった様で、変わらないアカリ。
あの時からずっと、俺の心を照らしてくれた。

……いや。
それよりも、前から……。


「……。
俺さ、そん時より前に…アカリに会ってるよ」

「!……え?」

俺の言葉にアカリは一瞬呆然。
暫くして、俺の腕をキュッと握りながら問い詰めてくる。


「っ……いつ?
5歳よりも前に……会ってたって、事?」

「……うん。
アカリが、産まれる前に会ってる」

俺の言葉にまた目を丸くするアカリ。
意味が分からないと言った表情を浮かべる彼女のお腹にそっと触れると、俺は微笑んだ。
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