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第8章 (2)ヴァロンside
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しおりを挟む”さすがですね、分かりました。
明日新しい仕事を持って行きます。”
シュウからのメッセージを見て、俺は通信機を握り締めた。
”もう少し難しい仕事がしたい”……。
そう返信しようとした指を、止める。
マスターの目を盗んで俺に仕事をくれるシュウに、これ以上我が儘は言えない。
”ああ、ありがと。”
それだけ返信して、通信機を机の端に置いた。
出来上がった仕事をすぐに渡せる様に綺麗にファイルにまとめると、仕事用の鞄に入れる。
すると、鞄の中にある分厚い資料が目に入った。
次の長期任務で使う筈だった資料。
たくさん付箋を貼って、色々書き込んだ。
もう必要ないと思いながらも、捨てられない。
アカリを守る為と思っていたのに……。
本当は、この任務に自分自身がやり甲斐を感じていた。
アカリの元婚約者のアランのやり方を否定しながら、心の何処かで奴を認めてその仕事振りを間近で見たかった。
同じ場に立って、奴に出来ないやり方を貫いて認めさせたかった。
夢の配達人白金バッジとして……。
1人の男として、俺はアランと競いたかったんだ。
「……」
難しい仕事程、相手が強敵な奴程、燃える。
この仕事を成功に導く為の計画が、思案が次々と浮かんできてしまう。
最善の道を常に考えてしまう、自分がいる。
「……ッ」
少しだけ……。
と、分厚い資料を鞄から取り出そうとした時。
「ヴァロン……?」
「!?ッ……」
突然名前を呼ばれて俺はハッとすると、出しかけた資料を鞄に押し込み声の方に顔を向ける。
アカリが、遠慮がちに少し離れた場所に立って俺を見ていた。
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