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第8章 (2)ヴァロンside

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【一週間後/自宅】

「にゃ~っ」

「!……リディア。ただいま!」

玄関に入ると、猫リディアが久々に帰宅したアカリを嬉しそうにお出迎え。
彼女が抱き上げるとゴロゴロと、喉を鳴らして甘えている。

今日、アカリは無事に退院。
ずっと担当してくれていたホノカさんの許可が出て、隠れ家の医療施設から自宅に戻ってきた。


「ほら、アカリ。
突っ立ってないで寝室に行くぞ?
まだ無理すんなって言われてたじゃん」

荷物を玄関に置いて背後から包む様に抱き締めると、彼女は嬉しそうに微笑んで顔を俺の方に向ける。


「うん、分かってる。
でも、久々に帰って来られたんだもん。
……今日は、私がご飯作りたい。ダメ?」

”ダメ?”……。
すごく可愛い上目遣いのアングルで、可愛い口調で尋ねられて思わず負けそうになるが……。
俺は頑張って心を鬼にした。


「……駄目です」

俺は猫リディアを抱いたままのアカリを優しく抱き上げると寝室に連れて行き、ベッドにそっと降ろす。


「もう大丈夫だもん。
……せっかくヴァロンと居られるのに、寝てばっかりなんて嫌だよ」

荷物を片付けに行こうとする俺の服の裾を握って引き止めながら、アカリは拗ねた様に呟く。
その仕草にときめく俺。


……俺を殺す気か?

俺は帽子とサングラスを外して棚に置くと、隣に腰掛けてアカリの肩を抱き寄せた。
すると、ふふっと声を漏らして笑顔になった彼女が俺に抱き付いて足をパタパタさせる。

今までの我慢が溜まっていたんだろう。
この一週間、アカリは急に甘える様になった。
思い返せば、結婚して以来こんなにゆっくり彼女と過ごした事なんてない。

これがきっと本来のアカリ。
世の中の新婚の夫婦、なんだよな。
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