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第8章 (1)ヴァロンside

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【夢の配達人隠れ家/医療施設の個室】

「……。
俺は、何を守ってる気で……いたんだろうな?」

静かな病室でボソッと呟きながら、俺はアカリの父親ギルバートの事を思い出した。
出世よりも常に奥さんを、家庭を大切にしていたギル。
お陰で生活は夢の配達人なのにいつもギリギリそうだった。

それなのに、ギルはいつも微笑んでた。
奥さんやアカリの話を、いつも笑顔でしてた。
アカリを見ていたらそれがどんなに愛で溢れた幸せな家庭だったのか分かる。
アカリは父親の記憶があまりないと言っていたが、彼女の笑顔を見れば奥さんがどれだけギルと愛し合ってて……。
遺されて必死に生きていたのか、分かる。

家庭を持つという事。
ボーッとしてそうに見えて、ギルにはちゃんと家庭を守る包容力があったのだと思い知る。


白金バッジを手放す、勇気と覚悟。
今の俺に、あるんだろうか……?

アカリと子供の為に、捨てる……決意。


……。

椅子に座ったまま俯く俺。
そんな俺の頭に、フワッと優しく撫でてくれる温もり。


「!……っ?」

ハッとして顔を上げると……。
意識を取り戻したものの、まだボーッとした表情のアカリが俺を見ていた。


「っ……アカ、リ?」

俺の頭を撫でてくれていた手をそっと握る。
するとその瞬間、彼女の瞳から涙が溢れ落ちて……。

俺の心に、滲みた。


「っ……。
ごめ、ん……なさぃ……」

ゆっくり動く、アカリの唇。


「……きら、い……なんて、言ってっ…。
ごめっ……な、さぃ……っ」

弱々しい、声。
悲しそうな瞳。
震える、小さなアカリ。

……。

これが、俺のしてきた事の結果だ。
俺の守ろうとしてきた宝物が、悲鳴を上げてる。
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