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第1章 この国、最悪
第11話 殿下の噂 ラル
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(最近…カーシュ殿下は変わられた)
ラルはふとベッドに寝転びながら思う。
場所はメイド達の寝室。
大部屋になっており、ベッドの横に小さなタンスと棚が置かれ、カーテンで区切りのあるそこは、決してプライベートが確保されているとは言えない場所だ。
しかし、ラルは言えずにはいられなかった。
「最近カーシュ殿下かっこよ過ぎ!!!」
そう言うと同時に左右、足側のカーテンが開かれる。
「「「うるさいっ!!」」」
「あ、先輩達。まだ起きてたんですね」
「起きてたんですね、じゃないわよ! 今何時だと思ってるのよ!!」
この中でも1番最年長、25歳のメイド、"ハバネ"が腰に手を当てながら話す。
1つの大部屋には、必ず成人したメイドを中心に若手のメイドを置く。何かトラブルがあった時に素早く対処する為である。
「いや~、それが最近カーシュ殿下があまりにもかっこよ過ぎて…つい口に出してしまいました」
「何を今更……カーシュ殿下のカッコ良さは産まれた時からそうでしょ」
「顔がカッコいいのは当たり前です、カーシュ殿下ですから…でも、最近子供とは思えない態度を時々見せるんですよ」
そう言うと、周りにいるメイド達が怪訝に眉を顰めた。
「…カーシュ殿下ってまだ5歳でしょ? それにまだ文字も覚えてないのに…そんな事ある?」
「そうそう、しかも言っちゃ悪いけど…カーシュ殿下って引っ込み思案って言うか…少し大人しい性格だったじゃない」
何処かカーシュを、少し馬鹿にした様子を見せるメイド達。
しかし、ラルの一言でそれは変わった。
「不敬かもしれないけど…アレは王様にも劣らないと思います。何れは『聖王』にだってなるかも…」
「……何を言ってるか分かってる?」
「『聖王』ってここ数百年、世界で誰もなった事も、増してや噂された事もないのよ? それを理解して言ってるの?」
『聖王』という称号は、安易に付けてはならない。
それは世界でも当然のルールだ、
その者の能力、人柄、全てを加味した上で『聖王』と呼ぶに値する人間か、皆に頼られる王の素質があるのか、"聖王協会"が厳正に審査する。
もし『聖王』と言う噂が立ち、それが賊の異名だったとしよう。
そうした場合、噂を立てた者、その者の関係者含め、厳正な処罰が待っている。
それ程に聖王協会は過激で、情報通で、どんな国でも正義を執行する、巨大な組織である。
『聖王』は偉大な称号であると同時に、その『聖王』の周囲の者達にとっは恐怖の称号でもあるのだ。
「私は…カーシュ殿下がそうなると考えています」
しかし、ラルは譲らなかった。
その目には確固たる意志が見られ、ハバネは目を細める。
「……まぁ、良いわ。これまでメイドの仕事を優秀にこなしてきた貴女だからこそ、私は信じましょう」
「ふふっ!」
「しかし!」
嬉しそうに笑うラルの前に、ハバネは指を1本突き出した。
「それは容易に口に出さない事……口に出したら聖王協会の者達が来る、そう思いなさい。貴女達もよ! 良い?」
「「「はい!」」」
先程まで眠そうにしていたメイド達が大きな返事をする。
それはメイド達にとっては、他愛もない話だった。
しかし、これを聞いていたのはこの部屋のメイドだけではなかった。
(ほぅ…?)
扉の前で耳を澄ましてた者は、素早く、そして優雅にそこを後にするのだった。
ラルはふとベッドに寝転びながら思う。
場所はメイド達の寝室。
大部屋になっており、ベッドの横に小さなタンスと棚が置かれ、カーテンで区切りのあるそこは、決してプライベートが確保されているとは言えない場所だ。
しかし、ラルは言えずにはいられなかった。
「最近カーシュ殿下かっこよ過ぎ!!!」
そう言うと同時に左右、足側のカーテンが開かれる。
「「「うるさいっ!!」」」
「あ、先輩達。まだ起きてたんですね」
「起きてたんですね、じゃないわよ! 今何時だと思ってるのよ!!」
この中でも1番最年長、25歳のメイド、"ハバネ"が腰に手を当てながら話す。
1つの大部屋には、必ず成人したメイドを中心に若手のメイドを置く。何かトラブルがあった時に素早く対処する為である。
「いや~、それが最近カーシュ殿下があまりにもかっこよ過ぎて…つい口に出してしまいました」
「何を今更……カーシュ殿下のカッコ良さは産まれた時からそうでしょ」
「顔がカッコいいのは当たり前です、カーシュ殿下ですから…でも、最近子供とは思えない態度を時々見せるんですよ」
そう言うと、周りにいるメイド達が怪訝に眉を顰めた。
「…カーシュ殿下ってまだ5歳でしょ? それにまだ文字も覚えてないのに…そんな事ある?」
「そうそう、しかも言っちゃ悪いけど…カーシュ殿下って引っ込み思案って言うか…少し大人しい性格だったじゃない」
何処かカーシュを、少し馬鹿にした様子を見せるメイド達。
しかし、ラルの一言でそれは変わった。
「不敬かもしれないけど…アレは王様にも劣らないと思います。何れは『聖王』にだってなるかも…」
「……何を言ってるか分かってる?」
「『聖王』ってここ数百年、世界で誰もなった事も、増してや噂された事もないのよ? それを理解して言ってるの?」
『聖王』という称号は、安易に付けてはならない。
それは世界でも当然のルールだ、
その者の能力、人柄、全てを加味した上で『聖王』と呼ぶに値する人間か、皆に頼られる王の素質があるのか、"聖王協会"が厳正に審査する。
もし『聖王』と言う噂が立ち、それが賊の異名だったとしよう。
そうした場合、噂を立てた者、その者の関係者含め、厳正な処罰が待っている。
それ程に聖王協会は過激で、情報通で、どんな国でも正義を執行する、巨大な組織である。
『聖王』は偉大な称号であると同時に、その『聖王』の周囲の者達にとっは恐怖の称号でもあるのだ。
「私は…カーシュ殿下がそうなると考えています」
しかし、ラルは譲らなかった。
その目には確固たる意志が見られ、ハバネは目を細める。
「……まぁ、良いわ。これまでメイドの仕事を優秀にこなしてきた貴女だからこそ、私は信じましょう」
「ふふっ!」
「しかし!」
嬉しそうに笑うラルの前に、ハバネは指を1本突き出した。
「それは容易に口に出さない事……口に出したら聖王協会の者達が来る、そう思いなさい。貴女達もよ! 良い?」
「「「はい!」」」
先程まで眠そうにしていたメイド達が大きな返事をする。
それはメイド達にとっては、他愛もない話だった。
しかし、これを聞いていたのはこの部屋のメイドだけではなかった。
(ほぅ…?)
扉の前で耳を澄ましてた者は、素早く、そして優雅にそこを後にするのだった。
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