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第2章.幻想

47.シャドゥール

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な、何? 今の?
私がそう思っていると、目の前にソーマが現れる。

「ソーマ!! 大丈夫だった!?」

(う、うん。)
ソーマは私の問いに対して辛うじて返事を返す。


「今回だけ手伝ってあげる。」
そう言って私達の前に降りて来たのは、


「ギルドのお姉さん?」
最初にギルドに行った時に端っこに座って本を読んでいたお姉さんがいた。


「私の名前は"シャドゥール"。影の大精霊"シャドゥール"。」


え、影の大精霊って、この『混迷の幻惑書』の?
私は本を触る。


「そう。私の力はその本に宿っている。私は貴方を本から見てた。」


本から…。


「貴方の気持ち、パートナーに対する気持ちは本物。だからあの子を傷つけたくない、その気持ち、分かる。」
シャドゥールは私と額を合わせる。


「何をしてるの?」

「私言った。手伝ってあげるって。」
そう言うとシャドゥールは目を瞑った。


何をするんだろう?
私が見ていると、私の頭の中に情報が流れ込んでくる。


な、何これ、頭が…。
私はそこで頭を抱えて膝を着く。


それを見た黒いソーマがチャンスだと思ってか、私に殴りかかろうとする。


(スプリング!)
ソーマが私の前に立つ。


ソ、ソーマ。危ない…。
私が視界の片隅でソーマを見つめて、手を伸ばす。

いやっ!
ソーマに拳が当たる瞬間、それはまた起こった。


「邪魔しないで。」
シャドゥールが手を振った。


「「「がっ!!」」」
するとシャドゥールから出た大量の影が黒いソーマを縛る。
黒いソーマがビクともしない。


「今貴方の頭の中に幻術のやり方を叩き込んだ。」

「え?」
シャドゥールは一体何を?


「でもそれは一時的に過ぎない。時間は10分。その間に幻術を使いこなして、あの子を助ける。」

「やり方って! 私【影魔術】と【光魔術】しか!」

「私は6大精霊の1人、影の大精霊。そこは安心する。あとは1人で頑張る。」
シャドゥールはそう言うと、私の前から姿を消した。


それと同時に黒いソーマが私に殴りかかってくる。

やばい! 
【影魔術】で避けようにもこんなに近かったら!!


しかし、私の口が自然と動く。

「【風魔術】発動。」
そう言うと私の左側から強風が吹き荒れ、私は黒いソーマの拳を受ける事なく、右横へと転がった。


な、何今の…。
口が勝手に。しかも身体も理解してたかの様に地面に転がったからダメージも無かったし。


「「「うわぁぁぁ!!」」」
黒いソーマが飛びかかってくる。


「【地魔術】発動。」
そう言うと、今度は私の目の前に大きな土の壁が出来上がる。


ドンッ!


大きな音が鳴るが、その壁にはヒビ1つ入っていない。

凄い…。
私は自分が発動してるにも関わらず、呆然とする。近くにいるソーマ、黒いソーマも私のあまりの代わり様に呆然としている。


「「「ど、どうなって…。」」」
黒いソーマは頭を抱えて、私を睨む。

が、どうした事か。
黒いソーマは私を見ると身体を震わせる。

もしかして称号『反逆者』と『幻の風格』の効果が少し出てる?


「…今貴方には私がどう見えてるのかなぁ。」

私は1歩近づく。


「「「お、お前なんて…!!」」」

「私は貴方の敵じゃない。戦う気は最初からないの。」

「「「お前がいなければ、俺とアイツはずっと…!!」」」

「それでソーマは幸せだったのかな。」

「「「ッ!!」」」
私がそう言うと、黒いソーマは初めて言い淀む。

「貴方は良かったかもしれない。でもそれでソーマの未来はなくなっていたんだよ?」

「「「ぼ、僕は死んだんだ!! 未来なんてない!!」」」

「私は貴方を救いた
「「「うるさい!!!」」」
黒いソーマはそう言うと渾身の一撃をスプリングに決める。

「「「は、はは。ふん!油断しやがって!」」」
黒いソーマは粉々になったスプリングにそう言うと、ソーマの方向を振り返った。
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