上 下
45 / 57
第2章.幻想

43.謁見

しおりを挟む
「少々、此処でお待ちください。」

私達は今大きな扉の前にいた。扉の両脇には屈強な身体をした兵士が槍を構えている。


私の口の中は乾ききっていた。恐らく自分が思っている以上に緊張しているんだろう。

サキさんも大量の汗を流して、此処に来るまでもずっと無言だった。サキさんはもしかしたら私よりも緊張しているかも。


まぁ、現実では私よりも年下だから当たり前かもね。


「お待たせしました。ではお入り下さい。」
大きな扉が開かれる。扉が開かれると、強い風ざ吹いた気がした。私達はそれに目を瞑った。

目を開けると、そこにはとても大きな謁見の間が広がっていた。
上には大きなシャンデリア、赤絨毯が敷かれており、横には何百という兵士が並んでいた。
奥には玉座があった。王様はまだいない様だ。


ゴ、ゴクリ
私は自然に喉が鳴った。
私達は文官に促され、玉座の前にある階段の下まで行く。
そして跪き、頭を下げた。


「これから陛下が来られます。失礼なき様、よろしくお願い致します。」
文官はそう言うと、横にずれる。


コツ、コツ、コツ


階段の上から小気味良い音が聞こえてくる。


「面を上げよ。」
甲高い声が聞こえた。
私が顔を上げる。そこには私と同い年ぐらいの少女が玉座に座っていた。

私は目を見開いてしまう。
サキさんの方を向くと、私と同じように目を見開いて固まっている。


「そこまで驚くとはな。私がお前の様な幼な子で驚いたか?」
少女はクックックッと笑う。


いや、当たり前でしょ!! 王様が来るって言うから緊張してたのに。
こんな小学生みたいな女の子が来るなんて!!

「私の名は"ラスカ・ファン・ソシャール"! この古の王都 ソシャールの王である!」


…いやー、そこら辺にいる少女が頑張って偉そうにしている感が半端ない。
私が呆れた顔をしていたのだろう。少女が私を睨んでいる。
急いで私は顔を取り繕うが…。


「…そんなに王らしくなかったかのう?」
と額に血管を浮かばせながら言ってくる。


これって喋っていいのかな?
私は文官の方に目を向けると、文官は少しだが頷く。

ならいいか。


「まぁ、少し。」
私がそう言った瞬間、


「陛下になんて言う口の聞き方!!」
「口を慎め!!」
「不敬だぞ!!」


辺りから怒鳴り声が聞こえてくる。
え、言っていいんじゃないの?
うわー、サキさんとかめっちゃオロオロしてる。ごめんごめん。


「お主、名前は?」

「スプリングです。」

「そうか…。」


ラスカ陛下は玉座から立ち上がり、階段を降りて私の前まで来る。

「スプリング、もう膝をつかなくていい。」
ラスカ陛下が言う。
え? いいの? 私はもう1度文官の方を見る。
文官が頷く。


…じゃあいいか。


「今回はこのソシャールを救ってくれて感謝する。」
ラスカ陛下は私に頭を下げる。



「「「陛下! 何を!?」」」
周りの兵士や文官達が騒ぎ出す。



「スプリング。お前がどれだけ不敬な事を言ったとしても、このソシャールを救ってくれた事は確か。お主が居なかったらどうなっていたか…。」
頭を下げたまま言う姿は、先程名乗っていた時よりも大人びて見えた。


この年頃だとあんな事を言われたら怒る筈なのに…。本当にここの王様なんだ…。


「頭を上げてください。」
私が口角を上げて言うと、ラスカ陛下は頭を上げる。


「私がやりたかったからやっただけですので、気にしないでください。」

「ふふっ、まさかそう言って貰えるとはな。ありがたい。」
ラスカ陛下は笑って、頭を上げる。


「何か私にやって欲しい事はあるだろうか?」
ラスカ陛下は笑って私に聞いてくる。


んー、やって欲しい事か。

私はサキさんの方を見る。
何かサキさんあるかな? と私が見てみると、首が千切れんばかりに横に振る。

そこまでしなくても…。あ! じゃあ!


「今回、魔物が襲って来た理由とか分かりますか?」
黒霧と言っても恐らく分からない。恐らくこれは神の尖兵の固有名。魔物って言った方が…


「あぁ。黒霧の事か。」
ラスカ陛下はその事か、とでも言うように呟く。


「え!?」
何でそんな事を知ってるの!? ソフィアさんでもその名前は知らなかったのに!!


「ん? あぁ、黒霧は昔から私達の国に襲ってくるのだ。」
ラスカ陛下は私の顔を見て察し、当たり前かの様に言った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

俺は異端児生活を楽しめているのか(日常からの脱出)

SF
学園ラブコメ?異端児の物語です。書くの初めてですが頑張って書いていきます。SFとラブコメが混ざった感じの小説になっております。 主人公☆は人の気持ちが分かり、青春出来ない体質になってしまった、 それを治すために色々な人が関わって異能に目覚めたり青春を出来るのか?が醍醐味な小説です。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

錬金術師と銀髪の狂戦士

ろんど087
SF
連邦科学局を退所した若き天才科学者タイト。 「錬金術師」の異名をかれが、旅の護衛を依頼した傭兵は可愛らしい銀髪、ナイスバディの少女。 しかし彼女は「銀髪の狂戦士」の異名を持つ腕利きの傭兵……のはずなのだが……。

Infinite possibility online~ノット暗殺職だけど、気にせず依頼で暗殺中!

Ryo
SF
暗殺一家の長女の黒椏冥(くろあめい)は、ある日、黒椏家の大黒柱の父に、自分で仕事を探し出してこそ一流だと一人暮らしを強要される。 どうやって暗殺の依頼を受けたらいいのかと悩んでいたが、そんな中とあるゲームを見つける。 そのゲームは何もかもが自由自在に遊ぶことが出来るゲームだった。 例えば暗殺業なんかもできるほどに・・・ これはとあるゲームを見つけた黒椏家最強の暗殺者がそのゲーム内で、現実で鍛え上げた暗殺技術を振るいまくる物語である。 ※更新は不定期です。あらかじめご容赦ください

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

鉄錆の女王機兵

荻原数馬
SF
戦車と一体化した四肢無き女王と、荒野に生きる鉄騎士の物語。 荒廃した世界。 暴走したDNA、ミュータントの跳梁跋扈する荒野。 恐るべき異形の化け物の前に、命は無残に散る。 ミュータントに攫われた少女は 闇の中で、赤く光る無数の目に囲まれ 絶望の中で食われ死ぬ定めにあった。 奇跡か、あるいはさらなる絶望の罠か。 死に場所を求めた男によって助け出されたが 美しき四肢は無残に食いちぎられた後である。 慈悲無き世界で二人に迫る、甘美なる死の誘惑。 その先に求めた生、災厄の箱に残ったものは 戦車と一体化し、戦い続ける宿命。 愛だけが、か細い未来を照らし出す。

もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR
SF
 『私小説』と、『機動兵士』的小説がゴッチャになっている小説です。百話完結だけは、約束できます。     (アメブロ「なつかしゲームブック館」にて投稿されております)

処理中です...