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第2章.幻想

39.逆襲

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 うーん、サキさんまだかなー。

 フヨフヨフヨ

 私がベリアル達と空を飛んでいると、それは突然起こった。





『神の尖兵が古の王都 ソシャールへ向かっています』
『「黒霧の逆襲」が始まりました』
『王都ソシャールにいる全プレイヤーは強制参加させられます』





 そう頭の中で響くと、この辺りは暗闇に包まれた。


「え?」


 カーン、カーン、カーン


「外から"魔物"が攻めてきたぞ!!」
 城壁の上の見張りの男(NPC)が叫ぶ。


 魔物? 生き物じゃなくて? てかいきなり過ぎない!?


「冒険者はすぐに討伐に出てくれ!」
 見張りの男が叫ぶ。
 周りにいる冒険者(プレイヤー)も城壁の外へ出る。


「ベリアル! ソーマ! 私達も出るよ!!」
 私達も外に出る。そこには


「キュー!」
「ワン!」
「チュー!」
「チュン!」
「ガァオー!!」
「ブブブブブッ!!」


 色々な生物がいた。どこに居てもおかしくない。だが普通の生物とは決定的に違う所があった。


「黒いモヤ…。」
 身体の周りに黒いモヤが存在しており、目が全て黒ずんでいた。


(スプリングさん、これ…。)

 ソーマも同じ様に気付いた様だ。

「うん。もしかしてあの黒いモヤに操られてるのかも…。」
 そう。ソーマもあの黒いモヤで操られていた。周りを見るとあの時よりは大分弱いみたいだけど…。


「クソッ!!」
「ワンワンワンッ!」
「おい! そっち行ったぞ!!」
「ピチピチピチピチッ!」
「無理だ!! お前らがなんとかしろ!!」
「ニャー!」


 数はそれだけでも力だ。相手の数は少なくても300はいる。対して私達は50人くらい…単純計さ
「何やってんだよ!そっち通すな!」
「開け過ぎだよ!もっと閉めて!」


 単純計算6ば
「だからもっと魔物を引きつけろよ!」
「そっちこそ敵もっと倒せよ!」





 …………。





「うっさい!! 落ち着け!!!」
 私がそう大声で叫ぶと辺りは静かになる。魔物も驚いたのか動きを止める。


「こんぐらいの数、相手出来なきゃ世の中やってらんないでしょーが!! もっと気合い入れて上手く連携する!! こっちはベリアルとソーマとの生活がかかってんの!! 出来なきゃ要らない!!」
 私は言いたい事を言ったら、行動を開始する。


「ソーマは【誘引】!! ベリアルは【闇魔術】で攻撃!!」
 今、ソシャールは黒いモヤで囲まれている。ベリアルの【闇魔術】は発動できるはず。


(任せてください!)
(おっけー!)
 そう言うとソーマは敵が密集している真上に行く。


(【誘引】!!)
 ソーマが発動させた瞬間、約50匹の魔物がソーマに狙いを定める。多くの魔物がプレイヤーを襲っていたが、ソーマのお陰で魔物達の攻撃が一瞬止む。


「た、助かった…。」
「す、すげー。」
「嘘だろ…。」
 周りの冒険者は驚きが隠せない様だ。
 うちのソーマ凄いんからしょうがないね!!


(遅いです!!)
 魔物達の攻撃はかすることをない。ソーマの速さについていけないみたいだ。


(むむむっ…!)
 ベリアルは私の近くで力を溜めている。目を瞑り、空中で胡座をかいている。


「お、おい…あの胡座かいてるやつ…何しようとしてんだ…。」
「てか、悪魔のパートナーって…噂の奴か? 見た事ねーぞ。」


 プレイヤーはベリアルに興味を抱いてるみたいだね…ベリアル仏様みたいで可愛い…。

 いや、こんな事考えてる暇ないよ!
 私がそんな事を考えている間に、私は魔物に囲まれていた。


 しかし魔物の攻撃は私から避ける様に行われる。


『月影の衣』の効果だね…さすがユニークアイテム。
 私は一言、魔物達に言う。


「遊んでるの?」


 私は小首をかかげ、問いかける。
 すると魔物達は怒り狂った様に、襲いかかってくる。

 その攻撃は当たる事はない。



「だけど…やられっぱなしは嫌だよね。」
 私は【浮遊】を発動させ、空へ飛び上がる。そして【光魔術】を背後に発動させる。


「…な、何だ!?」
「新たな敵か!?」
「い、いやあれは…天使…」


「さぁ、行くよ。」
 私は【影魔術】を発動させる。地面には小さな影しかない。そこから半径2メートルぐらいにいる魔物を串刺しにする。


「ギュー!」
「ワ、ワン!!」


 これなら地面で【光魔術】を発動させ、大きな影を作った方が良かった。普通ならそう思うだろう。

 しかし私にはこれがある。


「【影操】発動。」


【影操】を発動させた瞬間、世界が変わる。


 普通の【影魔術】は自分の地面に映る影を操り、相手を倒す。

 しかし【影操】は自分の地面に映る影だけではなく、自分と地面までにある影の通り道からも影の操作ができる様になった。


「おい…なんだよあれ…」
「あれじゃあどっちが魔物か…」
「あ、悪魔…」


 私から地面に続くまでの影が、柱の様に真っ黒な色をしてそびえ立つ。
 そこから無数に触手の様な物が現れ、魔物の首を刈っていく。


「ギッ…」
「ガッ…」
「…」
「ニ…」
「アゥ…」


【影操】はただ影を操るのが上手くなるだけだと思ってた…だけどこんな刺激的な攻撃方法ができるなんて思ってもなかったよ!!
 私は空中で笑いながら、敵を葬って行く。


 実はこの【影操】、サキさんを待っている間に発見したのだ。どんなものなのかなぁ。と発動させたら、なんと空中から触手の様な物が出てくるじゃありませんか。

 しかも私が飛べば飛ぶほど、影が操れる。つまり私が飛べば飛ぶほど攻撃範囲は広がると言う事だ。


 いやー…ちょっと強いんじゃない? これ?
 私は、空中で魔物の逃げ回る様子を見ながら思った。
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