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第1章.始まり

12.物申す

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「誰?」
 私は川の方へ振り返る。

「嬢ちゃん、そっちには誰もいないぜ?」
 依頼主が答える。

 私はもう1度川に入る。

(ここです。)

 …やはり川から聞こえている。というか下から…?私は自分の視線を下に動かした。だがそこには石しか…。

(もう目とかめっちゃあってます。)
 謎の声は言う。


「んー、あ! もしかして貴方が私を呼んでた?」
 私はその子を持ち上げる。


 その子は
(はい。そうです。)
 と答えた。


「あなたは…しじみ…?」


(はい。この川を綺麗にして貰いありがとうございます。)
 しじみは殻をパクパクさせながら言う。


「あ、いえいえ。偶々依頼が来てたからやっただけだし。報酬もよかったから。」
 私は申し訳ないと思いながら、しじみに話す。


(よかったら、何かお礼をさせて頂きたいと思いまして…何かする事はないでしょうか?)


「お礼?」
 私はしじみを手に乗せながら、首を傾げる。

 ん~。しじみからお礼って…何が出来るのかな。はっきり言って要らないな。
 私は悩む。


(なんでも言ってください。水のある所でしたら、お助けできます。)
 としじみは言った。


「へぇー!すごい!  じゃあ水のある所で困ったりしたら、ここに来てあなたを連れていけば良いって事?」


(はい。お手数ですが。しかし、必ず役に立ってみせます。)
 しじみは自身満々に答える。


「わかった。じゃあ水のある所で困ったらまた来るよ。」


(分かりました。いつでも来てください。お待ちしております。)


 私はしじみを川の底に置く。


(すごーい!スプリング!しじみと話してた~!)
 ベリアルが言う。


「そうか。嬢ちゃんは炎に認めらし子だったのか。通りですごい速さで川を綺麗にしてくれる訳だぜ。」
 依頼主は大声で笑った後、真面目な顔で言った。


「我ら、あらゆる生物と心通わせ生きる者。困難に立ち向かう際、他の生物の助けが必要になる。その為には、彼の者等へ認められる他ない。」


「? どういう意味ですか?」
 私が聞くと依頼主は、困った様な顔を見せた。


「それが分かんねぇんだ。俺の爺ちゃんから聞いた話だから、何十年も前の話だ。気にしないでくれ!」
 依頼主がまた大声で笑い、答える。


「嬢ちゃん! また何かあったら嬢ちゃんにお願いするぜ! そういえばまだ嬢ちゃんの名前聞いてなかったな。なんて言うんだ?」


「私はスプリングと言います。こっちはパートナーのベリアル。」

(よろしく!)


「そうか! 俺はジョン! ここら辺一帯の代表みたいなもんをやってる! 何か困った事があったら相談してくれ!」
 ジョンさんはそう言うと私達に手を振りながら帰っていった。


 私達は手を振り終わる。

「ふぅ。」


「生物の助け…彼の者等へ認められる…。」
 私は先程の言葉が気になり、1人ボーッとしてるいると、


(またボーッとしてるとお金取られちゃうよ!)
 とベリアルが私に話しかける。


「あ、ごめん。そうだね。せっかくお金貰ったのに。」
 私はギルドに依頼達成の報告をする為、足早にギルドに向かった。





 ~冒険者ギルド~

 ギィ

 私達はギルドに入り、受付嬢の前にいる列へ並んだ。

 まだまだ順番が回ってくるのは後の様で、私は暇つぶしにベリアルのお腹をプニプにしていた。


「お、あんた珍しいパートナー連れてるな。」


 私は、前にいるオオカミを連れた大男に話しかけられた。


「そうですね。私以外にこういう子を見たことはないですね。」
 私が微笑みながらそう言う。

 すると


「は? お前、こういう子って! 此処はゲームの中だぞ? そんな子供みたいに扱う必要あるのか? 」
 大男は周りにも聞こえる様な声で言う。そのせいで私達は注目を浴びていた。


「このゲームをどうやってやるかは人それぞれだと思いますけど…?」


「おい、止めろよアレ。」
「嫌だよ、アイツの装備、もう次の街『古の王都ソシャール』のじゃねーか。」
 周りの人達が私達をチラチラ見ながら、何か喋っている。


「かー、これだからお子ちゃまは。ゲームは効率重視。パートナーとの親交も最低限でいいんだよ。そうすりゃあ、その時間をレベルを上げることに使える。先輩からのありがた~い教えだ。覚えとけ。」
 大男が私の頭を撫でるように手を近づける。私はその手を振り払う。


「てめぇ…。どう言うつもりだ?」


「効率重視?…そんなのRPGでも1人でやってろ。自分の考えを人に押し付けんな。そういう奴がいるから、仕事辞めていく奴が減らないんだ! 課長みたいな事言うな!」
 私は、そう言って啖呵を切った。


「…何を言いたいんだ?」
 大男は私に訝しげに聞く。


「人にはそれぞれの考えがある! アンタがこのゲームで効率を重視したいってのを否定するつもりはない! だけど! こんな人前でパートナーとの親交は最低限で良いとか言うな! ウチのベリアルが心配しちゃうでしょうが!!」

 ベリアルは、私の方を見て目を潤ませていた。
 それはまるで、俺と遊ぶのやめるの?と言わんばかり! 


「何言ってんだか。もういい。死ねよ。」
 大男が拳を振りかぶる。


 その拳は虚しく私の顔面に当たった。
 私は一撃でポリゴンとなり、初めてこのゲームで死を経験した。

 プレイヤーキルというまさかの死に方で。
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