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第1章.始まり

11.初依頼

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「うぉ~。いっぱい依頼がある。」
 ギルドの壁1面には、数百種類の依頼があった。

 Fランク依頼ボード
 ・犬の散歩 F 報酬50ギル
 ・スライムの討伐(5匹)F 報酬100ギル
 ・どぶさらい F 報酬5000ギル
 ・買い物の手伝い F 報酬100ギル
 ・倉庫の整理 F 報酬300ギル
 ・物探し F 200ギル     etc~

 ふむふむ。これが私の受けれる依頼か…。
 でもこれは1択しかないでしょ!!私は依頼の紙を剥ぎ取り、受付嬢の前に叩きつけた。

「これやります!」

 どぶさらい F 報酬5000ギル

 …


 ギルドが一気に静かになった。



 ん?なんだ?ははーん。もしかして皆んなも狙ってた感じか。悪いね。この依頼は私がもらった!


「こ、この依頼をなされるんですか?」
 受付嬢が焦った様な顔で聞く。

「? はい。」

「そ、そうですか…。ではこの『川』に行ってください。期限は2週間です。依頼が完了できない場合、違約金が発生します。それでもよろしいですか?」
 受付嬢は私と顔がくっつくぐらい聞いてくる。

 何でそんなに聞くんだろ?ただのどぶさらいごときに?私は戸惑いなく返事をした。
「はい。」


 受付嬢は大きな溜息を吐き、
「…わかりました。そこまで意思が堅いならお願いします。」
 受付嬢はそのあと私に向かって手を合わせると、次の人の対応をした。

 私はとても不思議に思いながらもギルドを出た。






 こ、ここは…!


(スプリングー。臭いー。)
 ベリアさんが鼻を抑えて悶えている。


 ドス黒い色。
 川の底が見えなく、生物が住める様な所には見えない。此処はギルドに指定された『川』だった。


「いやいやいや、川にも限度があるでしょ?」
 これはもう沼じゃん。流れてないよ水が。
 なるほど報酬が5000ギルな訳だ。

 ドス黒い川は150メートルほどなっており、とてつもない異臭を周りにばら撒いていた。

 はっきり言って、5000ギルでも割に合わない。
 通りで皆んなの雰囲気がおかしいかった訳だよ…。でも、この依頼を達成出来なかったら私もう借金しちゃうし。

 私は覚悟を決めて、川に飛び込んだ。川は私の腰ぐらいまであり、動こうにも動けないようなネチャネチャ感だった。


「ふ、ふふっ!!」

(ス、スプリング?)
 恐る恐るスプリングが私の顔を覗く。


「やってやろうじゃないのよ!! せっかくだから3日でピカピカにするよ!! ベリアル!!」

「う、うん~。」
 ベリアルは乗り気じゃなかったが、後で焼き鳥買ってあげると言ったら川に少し触れる程度にはなってくれた。


 私はギルドから持ってきていたスコップを使って、泥を引き上げる。そこで岸にあげた泥をベリアルが袋に入れて、依頼主さんが指定した所まで持っていくという作戦だ。



 だかその作戦は難航した。
 何故なら私の力が0だから。体感1時間ぐらい経って、20センチぐらいしか進んどらん。なんじゃこれ。やってられるか。

 私は川の岸へと腰掛けた。

 ふぅ…これ終わらなくない?どうしたら終わるんだろう。私は考えた。考えに考えた結果。




「おぉー!! めっちゃ進む! 進む!」
 私は【影魔術】を使って泥を岸へドンドンと弾くようにして、引き上げていく。

(おぉー、さっきとは違ってはやーい!)
 ベリアルも少し機嫌が良くなったのか、興奮しているようだ。

 SPがドンドン減っていくけど、私には『混迷の幻惑書』がある! まだ全然いける!



「おい、あれ見ろよ。」
「す、すげぇ。あのドブ川の泥をあんなに早く…」
「頑張れー!あと半分だー!!」

 近くの住民(NPC)からエールを貰った私は、さっきよりも気合を入れて【影魔術】を全力で泥を掻き出す。


 ワァー!! パチパチパチパチ!!
 住民からの歓声が聞こえる。

 やりきった! やりきったぞ私は!!
 私は川辺に寝っ転がった。

 最初は入るのにも抵抗があった川が、今では見違えて綺麗になっていた。ちゃんと透き通った水が通っていた。


(スプリング~、おつかれ~!)
 ベリアルが私に声をかける。


「ベリアルもおつかれ!」
 私はベリアにも労いの言葉をかける。

(うん! 臭かったけど、綺麗になって気持ちいい!!)


「そうだね、住民の人達も喜んでるしね。」
 私は周りの人たちを見る。すると


 〈住民の好感度が上がりました〉


 とそんな声が聞こえた。
 住民の好感度?私がそう思っていると

「嬢ちゃん、今回はありがとな! こんな依頼を受けてくれて。ここにいる奴全員、嬢ちゃんに感謝してるよ、ありがとう!」
 と依頼主のおじさんが声をかけてきた。

「これが報酬の5000ギルだ!あと、嬢ちゃんが頑張って早く終わらせた礼に、これをやるぜ!」
 そう言って取り出したのは、リングだった。


『評判の指輪』
 銀色の指輪。その指輪は住民に認められた証。これを付けている者は、住民や生物の好感度が上がりやすい。


 なんか良い物を貰ってしまった。

 なるほど…住民の好感度を上げると何かアイテムが貰えるかもしれないのか?これなら上げといて損はなし!!

「皆さん!何か困ってる事があったら相談してくださいね!」
 私は周りに聞こえるように言った。


「おぉ! マジか! じゃあ後で俺の家の犬の散歩頼むわ!」
「じゃあ私は買い物を…。」
「あ、俺の探し物も!」
 皆んながそれぞれお願いを言ってくる。


「分かりました! また後で伺いますね!」
 私はそう言うと、そこから離れようとした。


(ありがとうございました。)


 川の方から声が聞こえ、私は立ち止まった。
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