上 下
2 / 49
第1章 最低です

第2話 第1印象

しおりを挟む
「あのアホ親父…何が新婚旅行だ。俺がどんな目に合ってると思ってやがる…」

 あの後、家には数人の警察官が訪れた。俺が殴られて気絶してるうちに、この高校生が110当番したらしい。

 そこで話し合った結果、まさかの家族だと言う事が判明した。

 親父に連絡したら、ごめん、再婚したの言うの忘れてただと?  

 はっ倒すぞ、マジで。

 しかも、今はハワイに新婚旅行中? 葵のこと宜しく? 

 ハワイで痔になれ。

 世理は頭を抱えながら唸る。

 俺が署まで連れて行かれる最悪な状況にはならなかったのがせめてもの救い…。


 問題は……

「何ですか? 気持ち悪いので見ないで貰って良いですか」

 …これだ。

 ずっと眉には皺が寄っていて、その者からレトルトのカレーを食べながら言われる。

 今俺は、妹の葵《あおい》と向かい合って食卓を挟み、椅子に座っている。

 その蔑みの目からは、俺をとてつもない嫌悪している事がヒシヒシと伝わってくる。

 因みに俺が作ったご飯は何が入ってるか分からないと言われて食べていない。しかもニンニクは嫌いだと言う。

「別に…俺だって見たくて見てる訳ないだろ」
「どうですかね? 会った時体を舐め回す様に見ていたじゃないですか。虫唾が走りました」

 葵は冷淡に言葉をつぐんでいく。

 うっ……それを言われたら何も言えねぇ。てか、一応義理の兄妹なんだぞ…虫唾が走るとか初対面で言うかね…。

 カチャ カチャ

 食器の音だけがリビングに響く。

 ガチャン!

 そして一際、リビングに金属音が鳴り響く。

 その音源は勿論…

「ご飯を食べ終わったらすぐお風呂に入って下さい。私の入った後に入られると何をするのか分からないので私は後に入ります」

 葵は皿にスプーンを雑に置き、立ち上がって、キッチンに食器を持って行く。そして水を出す。脇にあるスポンジを濡らし、洗剤を垂らすとすぐに食器を洗い出す。

「よかったら俺が食器洗っとくけど?」

 俺が少しでも驚かせた罪滅ぼしになればと、食器洗いを申し出る。

 会った事もない義理の兄に、誰も居ない筈の家から突然出て来られたんだ。殴るのも…まぁ、分からなくもない。

 そんな事を思ってると、

「いえ、私の使ったスプーンで何をするのか分からないのでいいです」

 葵はそう言った後蛇口を閉め、此方を見向きもせずにリビングから出て行った。

「………」

 最初は殴られた事も忘れて、義理の妹? こんな可愛い子が? おいおい、ラノベの世界かよ。そう、心の奥底では少し思ってた。

 しかし、開けてみれば…

『虫唾が走りました』
『私の入った後に入られると何をするのか分からないので』
『私の使ったスプーンで何をするのか分からないのでいいです』

「だとぉ~!?」

 世理はカレーライスを勢いよく頬張る。

 家族だって分かってたらそんな風に見なかった! 最初のは俺が不躾に見たのが悪い…!

 だけど…

「そんなゴミ虫でも見るような目で、義理の兄を見るか!?」

 世理はカレーライスを完食すると、地面に膝をつき四つん這いになる。

 あまりにも最初の印象が悪過ぎた。

 あっちは俺の事を泥棒だと思い、俺はパンチを繰り出す凶暴な女子高生だと思った。

 俺はちゃんと妹として接して行こうと、歩み寄った。なのにあっちは俺の事を兄扱いではなく、変態扱い。もしくは見向きもしない。

 俺は大学生だ。大人だ。それなりの許容はある。それなりに我慢出来る。

 これから此処に親父たちがいない1週間は2人きり…頑張るしかない。

 世理は立ち上がって拳を強く握りしめた後、俯き、身体を震わせる。


 …それと、1つ修正したい事がある。

 妹の第1印象だが…

 スタイルが良い美人。



 そこから逆転した。



「全然可愛くない!!! もはや怖い!!!」

 世理は嘆く様に叫んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

お兄ちゃんは今日からいもうと!

沼米 さくら
ライト文芸
 大倉京介、十八歳、高卒。女子小学生始めました。  親の再婚で新しくできた妹。けれど、彼女のせいで僕は、体はそのまま、他者から「女子小学生」と認識されるようになってしまった。  トイレに行けないからおもらししちゃったり、おむつをさせられたり、友達を作ったり。  身の回りで少しずつ不可思議な出来事が巻き起こっていくなか、僕は少女に染まっていく。  果たして男に戻る日はやってくるのだろうか。  強制女児女装万歳。  毎週木曜と日曜更新です。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...