勘違い(仮タイトル)

mare

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「はーい!注目。これから二次会行く人!!」


 お酒も入り皆ご機嫌だ。加奈もいつもよりテンションが高い。


「次は、カラオケでーす!」


 ほとんどが二次会に参加するようでゾロゾロと動き出す。


「加奈ちゃん、私は今日はこれで……」


「えー!先輩、帰るんですか?! もうちょっと一緒に居ましょうよ!」

 その声に反応して近くにいた二次会参加をするであろうメンバーもびっくりして振り返る。

「えっ!寺澤さん帰るんですか?」

 そんなに驚かなくても……。とりあえず当たり障りのない言い訳をしておく。まぁ、朝早く出ないといけないのは嘘ではない。

「今日は、もう帰るね。明日ちょっと早めに行かない所があって……。今日は誘ってくれてありがと」


「寺澤さん!なら俺、送ります!」


 声を掛けてくれたのは、笹山ささやまだった。飲んでいる間ずっと気を使って話しかけてくれてた。確か4歳ほど下のはず。まだどこか幼さの残る爽やかな香りのする男だった。


「ありがと。でも悪いからいいよ!これから二次会行くんでしょ?気を使わなくてもちゃんと帰れるから大丈夫よ」

「じゃあ、駅迄でも……」

 捨てられた子犬の目で見つめる。この子も加奈ちゃんと何処かタイプが似ているのかもしれない。私の弱い所を突いてくる。 こんな顔されたら断れないじゃない。
 

「……お願いします」


 はい、負けました。本日2敗目です。


「やたっ! 行きましょ寺澤さん」

「先輩!また月曜日に!」

「また、来週。お疲れ様」


 手を振って皆と反対側へと歩き出す。
 横をついて歩く笹山の姿が、しっぽ振ってるようで可愛く見えた。


「笹山君、ごめんね。気を使わせて……」

「気を使うなんて。俺が寺澤さんともう少しいたいだけなんで」


 サラッと言ってのける。


「口上手いね」

 嫌味ではなく、素直に関心してしまう。自分にもこんな言葉がサラリとでれば可愛気があるのかもしれない。


「寺澤さんに対しては本心ですから」


 どこまで本気か分からない。
 ニッコリ笑みを返され、向こうの方が年下なのに手のひらで転がされている気分になる。


「明日早いとか嘘ですよね。なので、あと1杯でいいから付き合って下さい」


 息をするように自然に笹山に指を絡められ歩き出す。


「えっ?ちょ……!笹山君!!」
 

「大丈夫。呑むだけです」


 何が大丈夫なのか意味も分からずただ笹山に有無を言わさす連れていかれる。




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