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一章 ハッタリ宮廷魔導士誕生

2話 神様との別れ

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「⋯⋯よし。できたのじゃ!」
「やっとか、結構、手間取っていたように見えるが?」

 神様が作業をしているのを、どこから出て来たのか分からないが、お茶とお茶請けが出されたので、ゆっくりしていたが、どうやら終わった様子。
 これで異世界に行く事ができるらしい。
 ⋯⋯不安な点として、道中、苦戦していたように見えたが、気のせいだろうか?

「細かいことは気にするで無い。それよりも、そなたも準備するのじゃ」
「了解」

 そう言って、異世界に行く準備をした。
 ⋯⋯と言っても、やった事と言えば、お茶を片付けただけだが、とりあえず準備は完了した。

「さて、おさらいじゃ」
 
 そう言って、最後の確認が始まった。

「まず、そなたの行く異世界は、剣と魔法の世界⋯⋯そなたの言葉を借りるなら、ファンタジーの世界じゃな。その世界で何をするのも自由じゃ。自分の思う生き方をせよ」
「わかった。それで、何か貰える物でもあるのか?」

 異世界転生は、チートとか貰えるのが常識だと、勝手に思っていたが、俺はそこら辺の事を聞いていなかった。その為、聞いてみると、

「安心せい。そなたにふさわしい を授けておるのじゃ」

 と言われた。

「スキル?」
「そう。スキルじゃ」

 スキルと言うと、RPGとかでお馴染みの奴で、どうやら、その異世界にもあるらしい。
 詳しく聞くと、その異世界では、大体の人がスキルを持っている為、自分も持っていないと、色々危ないらしい。

「ということで、余がそなたにスキルに合ったスキルを付けておいたのじゃ。⋯⋯文句は聞かぬからな」
「はいはい。貰える物はありがたく貰っとくよ」
「それで良い」

 満足そうに頷き、神様は、変なコンソール――どっかのタブレット端末みたいなのを操作しているのか、赤い魔法陣が出てきた。

「それに乗れば、異世界に行けるのじゃが⋯⋯その前に、そなたに聞きたい事がある」
「聞きたいこと?」

 今更、何を聞く必要があるのか分からないが、大切な事なんだと思い、質問を聞いた。

「その⋯⋯そ、そなたの名じゃ! 余はまだ、そなたの名を聞いておらん!」

  (⋯⋯そういえば、名乗って無かったな)

 そう思い出して、行く前に名を告げた。

珀斗はくと⋯⋯白樺しらかば珀斗はくとだ」
「ハクト⋯⋯うむ、いい名じゃ。覚えておくのじゃ」

 かなりご満悦の表情。

  (何がそんなに嬉しいんだ?)

 神様の考えることは分からないなと思いながら、魔法陣の方に歩いたが、ふと、とある事を思い出した。

「⋯⋯なぁ、神様。少しいいか?」
「なんじゃ?」
「いや、あんたの名前を聞いていなかったから、聞きたいんだが⋯⋯」

 ここまで、神様の名前を一切聞いていなかった事を思い出した。

  (流石に世話になった人⋯⋯いや、神様の名前を知らないのは、まずいだろ)

 そんな思いもあったりする。

「ふむ、確かに名乗ってなかったの。余は⋯⋯コハル。そう、コハルじゃ!」
「コハル⋯⋯覚えておくよ」
「うむ! 忘れるで無いぞ!」

 そんな会話をして、俺は魔法陣の上に乗った。
 魔法陣に乗ると、魔法陣が光り始めた。
 いよいよ異世界へ! だが、その前に、

「ありがとよ、神様コハル! 異世界での生活、楽しませてもらうよ!」

 感謝の意を込めて、コハルに礼を言うと、コハルは一瞬驚いたが、すぐに、

「あぁ、楽しんで来るのじゃ!」

 そう笑顔で送ってくれた。

 その笑顔を見ながら、俺の意識は、光の中に落ちていった。

「⋯⋯そなたの人生が、幸多からん事を」

 ⋯⋯小さく、優しい声が聞こえた気がした。
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