辿り着けない世界

和之

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祖父の思惑2

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 福井市の中心は矢張り福井城だが、現在は城内には福井県庁のビルが建ち、当時の面影は本丸の石垣と堀が残り、それがかろうじてそこに城があった名残を留めていた。
 ご覧の通りですと大場さんは堀の周囲を回ってから、千里さんの勤めていたデパートに向かった。地下の駐車場に車を駐めてエレベーターで、五階の洋服売り場に上がった。売り場に行くとアクセサリーや服飾品のショーウインドーが並び、洋服を着飾ったマネキンも所狭しと並び、その洋服の前に千里の友人は立っていた。彼女は大場さんを見付けると、お久し振りとペコッと頭を下げてくれて後ろの二人を覗き込んだ。それに合わせて大場さんは千里の友達の佐知さんを二人に紹介した。
「まあ、千里さんの義弟さんですか」
 と佐知は周囲を気にせずに声を掛けて来ると、これは千里さんに似て気さくな人だと思った。
「どうですか千里さんは元気ですか」
「元気過ぎて困ってる」
 と高村は少し冗談交じりに誇張して云うと、向こうもアラッ、もうー、一人だけ先に幸せになってーと言いながらも笑っていた。なるほど類は友を呼ぶかと坂部は納得させられた。 
 千里の実家は婚姻届を出した戸籍から解った。祖父はここに来て最初は佐知さんに目が留まった。それから似たような友を見て方針を変えた。なぜ佐知さんでなくどうして祖父が千里を選んだのか知りたくなったからだ。だがその違いは矢張り細かい所に長短があって一目見ても決めにくいが祖父は短期間で決めた。それをこうしてじっくり観察したが、千里さんとは昨日会ったばかりの坂部と、数年前から会っている高村とはイメージに少し違いがある。
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