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新学期3
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「そうは云ってもこの大学では、今はお前以外に誰も知らないんだ。そこへ可愛い女の子が寄って来れば理由の如何《いかん》に関わらず先ずは話に乗ってやるだろう」
坂部の場合はあれほどの猛勉強の反動から入学して肩の荷が降りれば、学業以外に関心して入ったのだろうと想像が付いた。それでも入ったサークルの女に、福を招く猫ならず幸運が現れるという変な壺を売りに来たが、金が無いと云うと置いて行った。そのヘンテコな壺はあの古いアパートには良く馴染んでいるらしい。しかし梅雨に入ると狭い入り口の半畳にも満たない三和土《たたき》が雨の強い日は水浸しになる。それで見かねてあの壺を丈は短いが、傘立て代わりにしてからは、案外役に立つと気にならなくなった。そこで高村は最近見掛けたあの壺には、そんな経緯《いきさつ》が有ったのかと笑われてしまった。
「お前があんな壺をまして傘立ての代用でも買うわけないが、置いて行った相手はどんな女だ」
「人聞きの悪いことを言うな」
と坂部は言動とは裏腹に、頬が一瞬うっすらと染まったのを、高村は見逃さなかった。
「入学式が終わってあれほど盛んに新入生の勧誘をやっていたと云うのに、なんだお前はまだ色んな部活に出会ったことがないのか」
どうやら高村には講義にしか興味はなく、授業時間以外は校内をたむろしない。ましてそんなサークル活動の勧誘にまで物見遊山で行ったりはしないそうだ。それで大学生活が始まったと言うのに教室以外では余り見かけなかった。それを言うと逆に何しに大学に来たんだと一喝される。勿論そこには学費を無駄にするなという高村の親心から来ているから胸に応えた。
坂部の場合はあれほどの猛勉強の反動から入学して肩の荷が降りれば、学業以外に関心して入ったのだろうと想像が付いた。それでも入ったサークルの女に、福を招く猫ならず幸運が現れるという変な壺を売りに来たが、金が無いと云うと置いて行った。そのヘンテコな壺はあの古いアパートには良く馴染んでいるらしい。しかし梅雨に入ると狭い入り口の半畳にも満たない三和土《たたき》が雨の強い日は水浸しになる。それで見かねてあの壺を丈は短いが、傘立て代わりにしてからは、案外役に立つと気にならなくなった。そこで高村は最近見掛けたあの壺には、そんな経緯《いきさつ》が有ったのかと笑われてしまった。
「お前があんな壺をまして傘立ての代用でも買うわけないが、置いて行った相手はどんな女だ」
「人聞きの悪いことを言うな」
と坂部は言動とは裏腹に、頬が一瞬うっすらと染まったのを、高村は見逃さなかった。
「入学式が終わってあれほど盛んに新入生の勧誘をやっていたと云うのに、なんだお前はまだ色んな部活に出会ったことがないのか」
どうやら高村には講義にしか興味はなく、授業時間以外は校内をたむろしない。ましてそんなサークル活動の勧誘にまで物見遊山で行ったりはしないそうだ。それで大学生活が始まったと言うのに教室以外では余り見かけなかった。それを言うと逆に何しに大学に来たんだと一喝される。勿論そこには学費を無駄にするなという高村の親心から来ているから胸に応えた。
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