2 / 57
〈2〉占いの結果と希望の道
しおりを挟む
「金色の、文字……?」
なんと言うか、神秘的な雰囲気すら感じるけど。
これは、
「占い、か……?」
詳しくは知らないが、宙に浮かぶ文字なんて、ほかに思い浮かぶ物もない。
ここには俺しかいないし、占った対象は俺自信だと思う。
と言うか、
「体が動く?」
右手以外はピクリともしなかった体が、今は普通に動いてくれる。
1番不思議なのが、満腹感があること。
4日も飯を食えてないはずなのに、腹の中に何かがある。
ぼんやりしていた周囲も、なぜか、スッキリ見えるな。
「なにがどうなった……?」
そう悩んでみても、なに1つわからない。
占いだろう、ってのも憶測だ。
だけど、目の前には金色の文字があって、体が動くのは、覆しようがない事実だ。
【南門の前にある小さな宿屋。その裏道でタンポポの花と希望の道を開け(100%)】
それにもし、この金色の文字が、自分を占ったものだとしたら?
「飯が、食えるんじゃないか……??」
【タンポポ】や【希望の道】の直接的な意味は分からないけど、おそらくは、
『小さな宿の裏にある道に行けば、いいことがある』
いいこと=飯。
そんな感じだと思う。
正直な話し、状況はいまいち掴めない。
だけど、体は普段よりも軽く、動くことに支障はない。
「行ってみるか……」
ほかに行くあてもないし。
そんな思いを胸に上半身を起こして、周囲に目を向ける。
降り続いていた雨も、いつの間にか、止んでいたらしい。
雲の切れ間から差した光が、遠くに見える巨大な壁に書かれた『南』の文字を明るく照らしていた。
住民たちの目を避けて、細い道ばかりを道を進んでいく。
そうしてたどり着いたのが、南門と王宮とを繋ぐ、メイン通り。
大きな道の両脇に露店が軒をそろえて、絶え間なく荷馬車が行き交う。
そう記憶していたんだが……。
「南門、だよな?」
見上げた先にある巨大な門には、確かに『南』の文字があり、至る所に『南門』と書かれた旗が揺れている。
それなのに、行き交う荷馬車どころか、露店の姿すらないのはどういうことだ??
「近くに魔物の群でも出たのか!?」
なんて思ったけど、門を守る兵士たちに慌てた様子はない。
「……まぁ、俺には関係ない話しか」
そう思い直して、周囲に目を向ける。
どんな理由があっても、他に行く場所なんてないしな。
「えっと……、小さな宿、小さな宿……」
ここは肉屋で、隣が剣と盾。
そっちは奴隷商か。
小さな宿どころか、普通の宿すらないんだが??
「今さらだけど。門の近くに宿なんてないよな、普通……」
門の開閉音が騒がしく、敵や魔物の侵入を許せば、真っ先に狙われるような場所だからな。
そんな場所で、安心して寝られるはずがないし。
それに南門の周囲は、荒くれ者が集まると聞いたことがある。
ますます、宿には不向きだ。
--なんて思っていた矢先、
「ん?」
ふと、店と店の隙間に目が向いた。
どうやら細い道になっているらしく、その先に古ぼけた建物が見える。
どう見ても使われていない崩れた屋根。
その下に、ベッドの絵の看板が転がっている。
「あったな」
見るからに小さな宿だ。
「……あったけど。なんだって、こんな辺鄙な場所に……?」
閉店して数十年、と言ったところだと思う。
立地は悪いし、大通りからは看板が辛うじて覗ける程度。
「そりゃ、つぶれるよな」
なんて思うけど、建てた人には、何かしらの勝算か、理由があったのだろう。
「まぁ、なんだっていい。この先だな」
この先に、希望が……。
貯まっていたつばをゴクリと飲み込んで、通路の中へと入っていく。
確か、建物の裏にタンポポが咲いている、みたいな文章だったよな?
「あん……? 行き止まり?」
どうやら道の先にあるのは、つぶれた宿だけらしい。
細い道は、そのまま宿をコに囲むように進み、宿の真後ろで途切れていた。
あるのは、朽ち果てた宿の壁と、苔むしたブロック塀。
何処かから飛ばされて来た大きなゴミ箱や木の枝。
「南門の前にある、小さな宿の裏道。……ここで、あってるよな?」
確証はないが、他に該当する場所があるとも思えない。
「タンポポは? 飯は……?」
タンポポの方はどうでもいいけど、希望は?
飯は??
「何か、間違えたのか?」
考えたくはないが、占いが当たらなかった?
詳しくは知らないが、絶対に当たるものじゃないと聞いたことがある……。
「もしくは、転がってるごみ箱の中に、飯が?」
そんな思いで、ごみ箱の蓋を開く。
「--ひゅっ!!」
「……は?」
金色の髪と、白い肌。
タンポポの髪飾りが、目の前で揺れていた。
なんと言うか、神秘的な雰囲気すら感じるけど。
これは、
「占い、か……?」
詳しくは知らないが、宙に浮かぶ文字なんて、ほかに思い浮かぶ物もない。
ここには俺しかいないし、占った対象は俺自信だと思う。
と言うか、
「体が動く?」
右手以外はピクリともしなかった体が、今は普通に動いてくれる。
1番不思議なのが、満腹感があること。
4日も飯を食えてないはずなのに、腹の中に何かがある。
ぼんやりしていた周囲も、なぜか、スッキリ見えるな。
「なにがどうなった……?」
そう悩んでみても、なに1つわからない。
占いだろう、ってのも憶測だ。
だけど、目の前には金色の文字があって、体が動くのは、覆しようがない事実だ。
【南門の前にある小さな宿屋。その裏道でタンポポの花と希望の道を開け(100%)】
それにもし、この金色の文字が、自分を占ったものだとしたら?
「飯が、食えるんじゃないか……??」
【タンポポ】や【希望の道】の直接的な意味は分からないけど、おそらくは、
『小さな宿の裏にある道に行けば、いいことがある』
いいこと=飯。
そんな感じだと思う。
正直な話し、状況はいまいち掴めない。
だけど、体は普段よりも軽く、動くことに支障はない。
「行ってみるか……」
ほかに行くあてもないし。
そんな思いを胸に上半身を起こして、周囲に目を向ける。
降り続いていた雨も、いつの間にか、止んでいたらしい。
雲の切れ間から差した光が、遠くに見える巨大な壁に書かれた『南』の文字を明るく照らしていた。
住民たちの目を避けて、細い道ばかりを道を進んでいく。
そうしてたどり着いたのが、南門と王宮とを繋ぐ、メイン通り。
大きな道の両脇に露店が軒をそろえて、絶え間なく荷馬車が行き交う。
そう記憶していたんだが……。
「南門、だよな?」
見上げた先にある巨大な門には、確かに『南』の文字があり、至る所に『南門』と書かれた旗が揺れている。
それなのに、行き交う荷馬車どころか、露店の姿すらないのはどういうことだ??
「近くに魔物の群でも出たのか!?」
なんて思ったけど、門を守る兵士たちに慌てた様子はない。
「……まぁ、俺には関係ない話しか」
そう思い直して、周囲に目を向ける。
どんな理由があっても、他に行く場所なんてないしな。
「えっと……、小さな宿、小さな宿……」
ここは肉屋で、隣が剣と盾。
そっちは奴隷商か。
小さな宿どころか、普通の宿すらないんだが??
「今さらだけど。門の近くに宿なんてないよな、普通……」
門の開閉音が騒がしく、敵や魔物の侵入を許せば、真っ先に狙われるような場所だからな。
そんな場所で、安心して寝られるはずがないし。
それに南門の周囲は、荒くれ者が集まると聞いたことがある。
ますます、宿には不向きだ。
--なんて思っていた矢先、
「ん?」
ふと、店と店の隙間に目が向いた。
どうやら細い道になっているらしく、その先に古ぼけた建物が見える。
どう見ても使われていない崩れた屋根。
その下に、ベッドの絵の看板が転がっている。
「あったな」
見るからに小さな宿だ。
「……あったけど。なんだって、こんな辺鄙な場所に……?」
閉店して数十年、と言ったところだと思う。
立地は悪いし、大通りからは看板が辛うじて覗ける程度。
「そりゃ、つぶれるよな」
なんて思うけど、建てた人には、何かしらの勝算か、理由があったのだろう。
「まぁ、なんだっていい。この先だな」
この先に、希望が……。
貯まっていたつばをゴクリと飲み込んで、通路の中へと入っていく。
確か、建物の裏にタンポポが咲いている、みたいな文章だったよな?
「あん……? 行き止まり?」
どうやら道の先にあるのは、つぶれた宿だけらしい。
細い道は、そのまま宿をコに囲むように進み、宿の真後ろで途切れていた。
あるのは、朽ち果てた宿の壁と、苔むしたブロック塀。
何処かから飛ばされて来た大きなゴミ箱や木の枝。
「南門の前にある、小さな宿の裏道。……ここで、あってるよな?」
確証はないが、他に該当する場所があるとも思えない。
「タンポポは? 飯は……?」
タンポポの方はどうでもいいけど、希望は?
飯は??
「何か、間違えたのか?」
考えたくはないが、占いが当たらなかった?
詳しくは知らないが、絶対に当たるものじゃないと聞いたことがある……。
「もしくは、転がってるごみ箱の中に、飯が?」
そんな思いで、ごみ箱の蓋を開く。
「--ひゅっ!!」
「……は?」
金色の髪と、白い肌。
タンポポの髪飾りが、目の前で揺れていた。
0
お気に入りに追加
533
あなたにおすすめの小説
未開惑星保護機構
工事帽
ファンタジー
中央星系から遠く離れた辺境の惑星。
そこはかつては開拓に失敗し入植者は死に絶えた、と思われていた惑星。遥か過去の入植の事実すら忘れ去り、その星の中で細々と生活する亜人達。そこは文明が衰退し、剣と魔法の世界となった未開惑星。
そこに住む人々と、未開惑星保護官達のお話。
第三王子に転生したけど、その国は滅亡直後だった
秋空碧
ファンタジー
人格の九割は、脳によって形作られているという。だが、裏を返せば、残りの一割は肉体とは別に存在することになる
この世界に輪廻転生があるとして、人が前世の記憶を持っていないのは――
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界出身の魔導士は、夢がない
皐月 遊
ファンタジー
夢と目標が無い高校1年生、赤羽虎太郎は、異世界から化け物、デストを退治しにきた魔導士、セレナと出会う。
正義感からセレナと共にデストの討伐に向かうが、普通の高校生がデストに敵うはずもなく、虎太郎を庇ったセレナは重傷を負ってしまう。
絶望的な状況で、セレナは最後の手段として虎太郎に自信の魔力を分け与えることを提案し、虎太郎は魔導士となり、デストを討伐した。
しかし、魔法という概念がない虎太郎の世界では、虎太郎という存在は異質になってしまった。
そんな虎太郎は、セレナが住む世界へと連れてこられ、様々な騒動に巻き込まれていく。
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる