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棚ぼた勇者
侵入者7
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狙いをこめて引き金を引くも、ほんの少しのブレで攻撃がそれた。
慌てて次の玉を装填していると、リーダーの声が聞こえてくる。
「防御を固めろ、無理に反撃をするな!!」
魔物たちが一斉に距離を取り始め、気が付けば背を向け合って固まっていた。
互いが互いの死角を補って、防御の構えを見せている。
「……お兄ちゃん、ちょっときびしいかも」
そんな魔物たちの様子に、前衛の2人が攻めあぐねていた。
魔物たちの中には、防御力を上げるものがいたらしく、銃での攻撃さえ通らなくなった。
「はぁっ!!」
「えぃ!!」
前衛2人が無理をして突っ込んでも、突破口さえ見えない。
石や弓、銃弾も、見えない盾に阻まれるように勢いをなくしていった。
だが、敵もうかつには反撃出来ないようで、互いが攻め手に欠いていた。
嬉しい誤算、と言うには気が引けるが、どうやら俺たちの容姿を見て殺すのを躊躇っているようにも見えた。
「フッ、シュ……ハァーー!!」
「おじさんの血の色を見てみたいです。よろしくお願いします」
「ははは、それは勘弁してくれないかな」
当初の予定では不意打ちで次々と倒していく予定だったので、現状は俺たちにとって不利とさえ言える。
(何かいい手はないか? 予定を早めるか?)
そんな思いを脳内に巡らせていると、不意に魔物側から声が飛んできた。
「君達は勇者のもとに集った者だと聞いている。私は勇者を名乗っているやつと話がしたい」
どうやら、こちらと交渉がしたようだ。
どうしようかな、とも思ったが、打開策は思うかばない。
1歩だけ歩みを進めて、リーダーの魔物をまっすぐに見据えた。
「……俺がそうだ」
そんな俺の言葉に、リーダーが目を大きく見開く。
怪訝さを隠す素振りも見せずに、眉をひそめた。
「キミがか? ……申し訳ないが、証拠を見せてもらえるか?」
サラに召喚された時に、年齢が極端に下がっている。
外見だけを見れば、ただの子供にしか見えないだろう。
「申し訳ないが、目に見える形での証拠はない。召喚される前の世界の話などであれば出来るが、そのくらいだ」
「そうか……」
あからさまに疑いの目を向けられたが、証拠がないのだから仕方がない。
姫の2人に証言させようかとも思ったが、向こうが2人の顔を知らなければ意味はないだろう。
さて、どうするべきか。
そんなことを思っていると、なぜか、リーダーが納得した表情を浮かべて見せた。
「……いや、疑って悪かった。俺達が会話を始めた瞬間、そちらの攻撃が止まったことは確認出来た。
どうやら、本当にキミがリーダーなようだな」
あれ? そうなの? と思い、周囲を目を向けると、彼の言う通り、すべての場所で戦闘行為が中断されていた。
前線の2人は、少しだけ距離を開けてにらみ合っているし、後衛の3人はいつでも撃てる状況を保ってはいるものの、撃つ素振りは見せていない。
どうやら、俺達の会話の行方を確認するつもりのようだ。
仲間たちのことは意識から外して、リーダーの魔物だけに注意を注ぎ込む。
「このタイミングでトップ会談がしたいと言う事は、停戦協定かそれに準じるような内容か?」
「その通りだ。話が早くて助かるよ。しかし、その前に、すこしだけ確認したいことがあるだ。いいかい?」
「確認したいこと? ……まぁ、いいか。聞くだけ聞こう。答えるかはわからないがな」
「それで十分だよ。何故、子供だけで戦闘を? しかも、君以外は、全員女性じゃないか」
最初の質問が、俺達の軍の構成について。
ただし、これは別に調査をしているとかではなく、心の底から思った疑問なのだろう。
なにせ、戦闘中も戸惑っていたくらいだしな。
まぁ、このくらいは答えてもいいか。
「俺達は肩身の狭い思いをしていてな。女、子供でも戦わないと生き延びれなかった。その結果だな」
サラとアリスは王族の嗜みで覚えたらしいから、全員が全員ってわけじゃないんだけど、まぁ、みなまで言わなくてもいいだろう。
「そうか。あそこに居られるのは、サラ様とアリス様にそっくりなのだが、本人だろうか?」
「……王族が前線に居られると思うか?」
「しかし、あの魔法……。いや、いい。気にしないでくれ」
一応納得したような返答を返してきたが、恐らくはバレたのだろう。
姫2人の所在が知られたからと言って、なにがが起きるって訳でもないのだが、敵に渡る情報は少ないほうが良かったんだがな。
このことが、俺達の不利にならなきゃいいが……。
そう思っていると、不意にリーダーが顔色を変えた。
「さて、本題に入ろう。単刀直入に言うが、俺達をこのまま帰してもらうことは出来ないか?
戦況は五分五分、このまま続ければお互いに損失を出し合うだろう。
こちらから攻めているうえに、そちらの忠告を無視しての突撃だ。むしのいい話だとは思うが、君も仲間を失いたくはないのだろう? もちろん、2度と君達には手を出さない。どうだろうか?」
たしかに、戦況を考えると、このまま帰って貰うのが1番良い。
互いが激しくぶつかりあっている現状では、クロエ、ノアの2人を筆頭に、誰かが死に至ってもおかしくない状況だった。
最初の不意打ちが失敗した時点で、俺達の有利はかなり減ってしまっている。
「……そうだな。俺も悪くない提案だと思う」
「よし、だったら決まり――」
「いや、悪いが断らせて貰う」
確かに魅力的な提案ではあったのだが、俺が出した答えは、拒否。
「停戦はなしだ」
和解という甘く美味しそうな道を振り切り、俺は強い口調で言い放った。
慌てて次の玉を装填していると、リーダーの声が聞こえてくる。
「防御を固めろ、無理に反撃をするな!!」
魔物たちが一斉に距離を取り始め、気が付けば背を向け合って固まっていた。
互いが互いの死角を補って、防御の構えを見せている。
「……お兄ちゃん、ちょっときびしいかも」
そんな魔物たちの様子に、前衛の2人が攻めあぐねていた。
魔物たちの中には、防御力を上げるものがいたらしく、銃での攻撃さえ通らなくなった。
「はぁっ!!」
「えぃ!!」
前衛2人が無理をして突っ込んでも、突破口さえ見えない。
石や弓、銃弾も、見えない盾に阻まれるように勢いをなくしていった。
だが、敵もうかつには反撃出来ないようで、互いが攻め手に欠いていた。
嬉しい誤算、と言うには気が引けるが、どうやら俺たちの容姿を見て殺すのを躊躇っているようにも見えた。
「フッ、シュ……ハァーー!!」
「おじさんの血の色を見てみたいです。よろしくお願いします」
「ははは、それは勘弁してくれないかな」
当初の予定では不意打ちで次々と倒していく予定だったので、現状は俺たちにとって不利とさえ言える。
(何かいい手はないか? 予定を早めるか?)
そんな思いを脳内に巡らせていると、不意に魔物側から声が飛んできた。
「君達は勇者のもとに集った者だと聞いている。私は勇者を名乗っているやつと話がしたい」
どうやら、こちらと交渉がしたようだ。
どうしようかな、とも思ったが、打開策は思うかばない。
1歩だけ歩みを進めて、リーダーの魔物をまっすぐに見据えた。
「……俺がそうだ」
そんな俺の言葉に、リーダーが目を大きく見開く。
怪訝さを隠す素振りも見せずに、眉をひそめた。
「キミがか? ……申し訳ないが、証拠を見せてもらえるか?」
サラに召喚された時に、年齢が極端に下がっている。
外見だけを見れば、ただの子供にしか見えないだろう。
「申し訳ないが、目に見える形での証拠はない。召喚される前の世界の話などであれば出来るが、そのくらいだ」
「そうか……」
あからさまに疑いの目を向けられたが、証拠がないのだから仕方がない。
姫の2人に証言させようかとも思ったが、向こうが2人の顔を知らなければ意味はないだろう。
さて、どうするべきか。
そんなことを思っていると、なぜか、リーダーが納得した表情を浮かべて見せた。
「……いや、疑って悪かった。俺達が会話を始めた瞬間、そちらの攻撃が止まったことは確認出来た。
どうやら、本当にキミがリーダーなようだな」
あれ? そうなの? と思い、周囲を目を向けると、彼の言う通り、すべての場所で戦闘行為が中断されていた。
前線の2人は、少しだけ距離を開けてにらみ合っているし、後衛の3人はいつでも撃てる状況を保ってはいるものの、撃つ素振りは見せていない。
どうやら、俺達の会話の行方を確認するつもりのようだ。
仲間たちのことは意識から外して、リーダーの魔物だけに注意を注ぎ込む。
「このタイミングでトップ会談がしたいと言う事は、停戦協定かそれに準じるような内容か?」
「その通りだ。話が早くて助かるよ。しかし、その前に、すこしだけ確認したいことがあるだ。いいかい?」
「確認したいこと? ……まぁ、いいか。聞くだけ聞こう。答えるかはわからないがな」
「それで十分だよ。何故、子供だけで戦闘を? しかも、君以外は、全員女性じゃないか」
最初の質問が、俺達の軍の構成について。
ただし、これは別に調査をしているとかではなく、心の底から思った疑問なのだろう。
なにせ、戦闘中も戸惑っていたくらいだしな。
まぁ、このくらいは答えてもいいか。
「俺達は肩身の狭い思いをしていてな。女、子供でも戦わないと生き延びれなかった。その結果だな」
サラとアリスは王族の嗜みで覚えたらしいから、全員が全員ってわけじゃないんだけど、まぁ、みなまで言わなくてもいいだろう。
「そうか。あそこに居られるのは、サラ様とアリス様にそっくりなのだが、本人だろうか?」
「……王族が前線に居られると思うか?」
「しかし、あの魔法……。いや、いい。気にしないでくれ」
一応納得したような返答を返してきたが、恐らくはバレたのだろう。
姫2人の所在が知られたからと言って、なにがが起きるって訳でもないのだが、敵に渡る情報は少ないほうが良かったんだがな。
このことが、俺達の不利にならなきゃいいが……。
そう思っていると、不意にリーダーが顔色を変えた。
「さて、本題に入ろう。単刀直入に言うが、俺達をこのまま帰してもらうことは出来ないか?
戦況は五分五分、このまま続ければお互いに損失を出し合うだろう。
こちらから攻めているうえに、そちらの忠告を無視しての突撃だ。むしのいい話だとは思うが、君も仲間を失いたくはないのだろう? もちろん、2度と君達には手を出さない。どうだろうか?」
たしかに、戦況を考えると、このまま帰って貰うのが1番良い。
互いが激しくぶつかりあっている現状では、クロエ、ノアの2人を筆頭に、誰かが死に至ってもおかしくない状況だった。
最初の不意打ちが失敗した時点で、俺達の有利はかなり減ってしまっている。
「……そうだな。俺も悪くない提案だと思う」
「よし、だったら決まり――」
「いや、悪いが断らせて貰う」
確かに魅力的な提案ではあったのだが、俺が出した答えは、拒否。
「停戦はなしだ」
和解という甘く美味しそうな道を振り切り、俺は強い口調で言い放った。
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