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ふぅ、と肩の力を抜いて、ダラリとベッドに倒れ込む。
「ほんと、貴族ってなんなのかしらね。手のひら返しがひどすぎるでしょ」
自分の部屋で、周囲にはマリーたちしかいないし、ちょっとくらい不作法でもいいわよね?
「それにしても、私が1位……、王の最有力候補ねぇ……」
最終的には、過半数を大きく超える投票が私に入ったらしくて、今まで向けられていた蔑んだ目が、一瞬にして媚びを売る目に変わったのよ。
0票から単独トップは前代未聞、って爺も楽しそうに笑っていたわ。
「これ1回で決まるわけじゃないけど、あんまりよね……」
ほんと、貴族って生き物には嫌になるわね。
なんて思っていたんだけど、マリーたちは違うみたい。
「いえ、姫様の能力が正しく評価された結果ですね。おめでとうございます」
「「おめでとうございます」」
「んー、……そうね。ありがとう、みんな」
いつもはバラバラな口調で応えてくれる彼女たちも、今日ばかりは声をそろえてキレイな笑みを見せてくれた。
そんな彼女たちから少しだけ視線をずらすと、かつてはスライムが飛び跳ねていた床が見えてくる。
「マッシュが2体に増えてからは、本当に色々あったわね」
森へ行って、小屋を作って、冒険者ギルドでリリと出会った。
バカな貴族を返り討ちにして、Aランクの冒険者と模擬戦をして、ダンジョンを攻略した。
彼女が『気絶魔女』なんて馬鹿にされなくなったのは、その頃かしら。
「リリ。今日まで色々と助けてくれてありがとう。あなたさえ良ければ、私の筆頭魔導師として仕えてくれないかしら?」
ずっと言いたかった言葉なんだけど、今の私なら大丈夫ね。
「……えっと。私なんかでいいんですか?」
「もちろんよ。あなたは最高の魔法使いですもの。もっと胸を張りなさい」
「……はい!! よろしくお願いします!!」
ペコリと下がった髪をなでてあげる。
目尻に涙を浮かべながら、リリが笑ってくれた。
そんな彼女の隣には、ジニがいる。
一目見たときから強いと思っていたんだけど、今はみんなが彼女の強さを知っていた。
「ジニ。あなたを私の騎士に任命するわ。受けてくれるかしら?」
「無論だ。この剣に誓ってあなたを守り続けよう」
「えぇ、お願いね」
腰に下げた剣を握り直して、彼女が深く頭を下げてくれた。
「マリー。あなたにもずいぶん助けられたわ。今後もよろしく頼むわね?」
「かしこまりました。私はどこまでも姫様にお仕え致します」
「ありがとう」
優雅にほほ笑んでくれる彼女の姿に、なんだか強い勇気をもらった気がした。
「それでなんだけど、ミルヘルンってどんなところかしら?」
投票1位の褒美としてその土地をもらったはずなんだけど、詳しく知らないのよね。
図書室の本にも書いてなかった気がするのよ。
そう思ってマリーに問いかけたんだけど、彼女もあまり詳しくは知らないみたい。
「王都からは遠いのですが、戦場からも遠く、緑豊かな土地だと宰相様より聞き及んでおります。ただ、私もなじみのない土地ですので詳しくは……」
ん~、私もマリーも知らない土地、ねぇ……?
「これってあれかしら。私の力が怖いからなるべく遠くへ行け、ってこと?」
「可能性はありますね」
まぁ、そうよね。私が貴族側の立場なら王にそう進言するもの……。
でも逆に考えると、面倒な貴族たちから離れてゆっくり過ごすには最高の場所ってことよね?
「みんなでゆるゆる領主生活も悪くないかも知れないわね。それじゃぁ、準備が整い次第出発しましょうか。マリー、リリ、ジニ。一緒に来てくれるかしら?」
「かしこまりました」
「はい!!」
「承知した」
うれしそうな笑みを浮かべる彼女たちに胸を熱くさせながら、持てる魔力をすべて使って、部屋いっぱいにマッシュを呼び出す。
「これも全部、マッシュが頑張ってくれたおかげね。ありがとう」
「「「きゅ!!」」」
うれしそうに鳴いてくれるマッシュたちに囲まれて、私は大きな幸せをかみしめた。
「ほんと、貴族ってなんなのかしらね。手のひら返しがひどすぎるでしょ」
自分の部屋で、周囲にはマリーたちしかいないし、ちょっとくらい不作法でもいいわよね?
「それにしても、私が1位……、王の最有力候補ねぇ……」
最終的には、過半数を大きく超える投票が私に入ったらしくて、今まで向けられていた蔑んだ目が、一瞬にして媚びを売る目に変わったのよ。
0票から単独トップは前代未聞、って爺も楽しそうに笑っていたわ。
「これ1回で決まるわけじゃないけど、あんまりよね……」
ほんと、貴族って生き物には嫌になるわね。
なんて思っていたんだけど、マリーたちは違うみたい。
「いえ、姫様の能力が正しく評価された結果ですね。おめでとうございます」
「「おめでとうございます」」
「んー、……そうね。ありがとう、みんな」
いつもはバラバラな口調で応えてくれる彼女たちも、今日ばかりは声をそろえてキレイな笑みを見せてくれた。
そんな彼女たちから少しだけ視線をずらすと、かつてはスライムが飛び跳ねていた床が見えてくる。
「マッシュが2体に増えてからは、本当に色々あったわね」
森へ行って、小屋を作って、冒険者ギルドでリリと出会った。
バカな貴族を返り討ちにして、Aランクの冒険者と模擬戦をして、ダンジョンを攻略した。
彼女が『気絶魔女』なんて馬鹿にされなくなったのは、その頃かしら。
「リリ。今日まで色々と助けてくれてありがとう。あなたさえ良ければ、私の筆頭魔導師として仕えてくれないかしら?」
ずっと言いたかった言葉なんだけど、今の私なら大丈夫ね。
「……えっと。私なんかでいいんですか?」
「もちろんよ。あなたは最高の魔法使いですもの。もっと胸を張りなさい」
「……はい!! よろしくお願いします!!」
ペコリと下がった髪をなでてあげる。
目尻に涙を浮かべながら、リリが笑ってくれた。
そんな彼女の隣には、ジニがいる。
一目見たときから強いと思っていたんだけど、今はみんなが彼女の強さを知っていた。
「ジニ。あなたを私の騎士に任命するわ。受けてくれるかしら?」
「無論だ。この剣に誓ってあなたを守り続けよう」
「えぇ、お願いね」
腰に下げた剣を握り直して、彼女が深く頭を下げてくれた。
「マリー。あなたにもずいぶん助けられたわ。今後もよろしく頼むわね?」
「かしこまりました。私はどこまでも姫様にお仕え致します」
「ありがとう」
優雅にほほ笑んでくれる彼女の姿に、なんだか強い勇気をもらった気がした。
「それでなんだけど、ミルヘルンってどんなところかしら?」
投票1位の褒美としてその土地をもらったはずなんだけど、詳しく知らないのよね。
図書室の本にも書いてなかった気がするのよ。
そう思ってマリーに問いかけたんだけど、彼女もあまり詳しくは知らないみたい。
「王都からは遠いのですが、戦場からも遠く、緑豊かな土地だと宰相様より聞き及んでおります。ただ、私もなじみのない土地ですので詳しくは……」
ん~、私もマリーも知らない土地、ねぇ……?
「これってあれかしら。私の力が怖いからなるべく遠くへ行け、ってこと?」
「可能性はありますね」
まぁ、そうよね。私が貴族側の立場なら王にそう進言するもの……。
でも逆に考えると、面倒な貴族たちから離れてゆっくり過ごすには最高の場所ってことよね?
「みんなでゆるゆる領主生活も悪くないかも知れないわね。それじゃぁ、準備が整い次第出発しましょうか。マリー、リリ、ジニ。一緒に来てくれるかしら?」
「かしこまりました」
「はい!!」
「承知した」
うれしそうな笑みを浮かべる彼女たちに胸を熱くさせながら、持てる魔力をすべて使って、部屋いっぱいにマッシュを呼び出す。
「これも全部、マッシュが頑張ってくれたおかげね。ありがとう」
「「「きゅ!!」」」
うれしそうに鳴いてくれるマッシュたちに囲まれて、私は大きな幸せをかみしめた。
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