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小鳥のさえずりを耳にしながらゆっくりと目を覚ます。
ぼんやりとした視界に見えてくるのは、真新しい木の天井。
「……そっか、南の森にお泊まりしたのね」
部屋は小さいけど、お城の中より清々しいわ。
出入り口近くにはマリーとマッシュがいて、空飛ぶフライパンでなにやら調理をしているみたい。
「おはよう、マリー。体調はどうかしら?」
「おはようございます。十分な休憩をいただいたおかげで、快調ですね」
「そう、それは良かったわ」
行儀が悪いとは思いながらも、素敵な香りに誘われてフライパンの中をのぞき込む。
見えてきたのは、焼き目の付いた燻製肉。
薄切りになったベーコンがキレイに並んで焼かれてた。
「マッシュが使っている魔力はマリーが与えた物かしら?」
「はい。目を覚ましたら、マッシュ様にせがまれまして。勝手なことをして申し訳ありません」
「それは良いのよ。昨日もリリから魔力をもらってた事だし。それよりも、無事に受け渡しが出来たのね?」
疑わしさを表に出して、彼女の瞳を見つめる。
苦笑を浮かべながらもうれしそうに口元をほころばせたマリーが、優しい瞳を向けてくれた。
「疲労や頭痛はありません。マッシュ様にも異変はないように思われます」
瞳に不自然な揺らぎはないわね。私を安心させるためのウソじゃないみたい。
私がホッと息を付いていると、マリーがベーコンをひっくり返しながら言葉を続ける。
「私の無駄な魔力も、これで姫様のお役に立てるかもしれませんね」
自虐的な言葉を使いながらも、彼女の瞳は希望に満ちているように見えた。
魔法は得意なのに体調を崩す彼女の特異体質。
使えずにため込むしかなかった彼女の魔力をマッシュが吸い出せるのなら、それ事態は歓迎すべき事だと思う。
そうは思うけど、頑張り屋の彼女には釘を刺さなきゃね。
「むちゃな事はせずに、異変を感じたらやめるのよ? 今のままでもマリーは私の大切な親友なんだから」
「……かしこまりました。ありかとうございます」
本当にわかっているのか不安なのだけど、彼女は優雅にお辞儀をしてみせた。
そうこうしている間にベーコンが焼けたみたくて、マリーが卵が投下していく。
片手で、パカッ、パカッって、見ていて気持ちがいいわ。
聞けばベーコンも卵もマッシュが森の中で入手してきたみたい。
イノシシのお肉を夜の間に薫製したそうよ。
なんて言うべきか言葉に悩むけど、さすがは私のマッシュ、でいいのかしら?
そんなマッシュお手製のベーコンがこんがり焼けて、心が躍る香りが部屋の中に回り始める。
ほんと、すっごくお腹がすくわね、この香り。
「んん……、良い香りですぅ……」
夢の中に居るリリも同じみたい。
毛布にくるまれたあどけない口元が、もにゅもにゅ動いているの。
「…………っぁっ!!」
クリクリとした大きな瞳がぼんやり開いたかな、って思っていたらリリが跳ね起きた。
「もう少し寝ていても大丈夫よ。あなたの仕事は朝ご飯を食べてからね?」
「……はい、ありかとうございます」
笑うのもかわいそうだと思うのだけど、やっぱり私のリリは可愛いわね。
寝坊した事を恥ずかしく思っているのか、顔を赤くしたリリが毛布を鼻まで持ち上げて目だけを見せてくれる。
涙目の上目遣い。反則ね。
「リリ、もう少し寝るわよ」
「え? きゃぅ……」
あまりにもかわいいから、思わず押し倒しちゃったわ。
けど、仕方ないじゃない、かわいかったんですもの。
そしてそのままリリであそんでいたら、マリーのあきれたような声が飛んできた。
どうやら朝食が出来たみたい。
私はオホンと威厳たっぷりにせき払いをして、リリの手を引いた。
「さてと、いただきましょうか」
「はひ……」
こちょがしたり、くすぐったりしていたから、息も絶え絶えな感じだけど、かわいいから大丈夫よね。うん。
ってことで、ちょっとだけ現実逃避。
微笑ましい視線を私にまで向けてくるマリーから視線をそらして、窓の外を眺めたら、昨日と同じように赤いトカゲがマッシュに倒されていた。
「……どれだけいるのかしら? 夜の間も襲われたのよね?」
「はい。マッシュ様の様子をうかがう限り、そのようです」
「そうよね……」
知らないうちに元の世界に帰った子も合わせると、すでに60体を越えてた。
マリーが焼き払った数も含めたら倒した数は100体を超えるんじゃないかしら?
「1度冒険者ギルドに報告を出しますか?」
「そうね。そうしましょう。これじゃぁ、原因の調査どころじゃないもの。……幸いマッシュは楽しそうにしているし、今日はこのまま頑張ってもらって報告は夕方にしましょう。それまではトレーニングね」
「承知しました。私はマッシュ様の様子を見させてもらって、同時発動の仕組みなどを解析しようかと思います」
「わかったわ。むちゃはダメよ?」
「かしこまりました」
一応は恭しく頭を下げてくれたけど、瞳はすでにマッシュの方へと向いていた。
多分わかってないわね。
それにしても同時発動か……、私の方でもちょっとだけ考えて見ようかしら。
「リリは基礎訓練の合間に外でも訓練ね? 敵はいっぱいいるみたいだから、良い練習になると思うわ」
「トカゲさんを倒せば良いんですよね? 頑張ります!!」
「うん、お願いね」
ギュッとつえを握るリリを頼もしく思いながら、私も静かに目を閉じる。
さてと、頑張りますか。
ぼんやりとした視界に見えてくるのは、真新しい木の天井。
「……そっか、南の森にお泊まりしたのね」
部屋は小さいけど、お城の中より清々しいわ。
出入り口近くにはマリーとマッシュがいて、空飛ぶフライパンでなにやら調理をしているみたい。
「おはよう、マリー。体調はどうかしら?」
「おはようございます。十分な休憩をいただいたおかげで、快調ですね」
「そう、それは良かったわ」
行儀が悪いとは思いながらも、素敵な香りに誘われてフライパンの中をのぞき込む。
見えてきたのは、焼き目の付いた燻製肉。
薄切りになったベーコンがキレイに並んで焼かれてた。
「マッシュが使っている魔力はマリーが与えた物かしら?」
「はい。目を覚ましたら、マッシュ様にせがまれまして。勝手なことをして申し訳ありません」
「それは良いのよ。昨日もリリから魔力をもらってた事だし。それよりも、無事に受け渡しが出来たのね?」
疑わしさを表に出して、彼女の瞳を見つめる。
苦笑を浮かべながらもうれしそうに口元をほころばせたマリーが、優しい瞳を向けてくれた。
「疲労や頭痛はありません。マッシュ様にも異変はないように思われます」
瞳に不自然な揺らぎはないわね。私を安心させるためのウソじゃないみたい。
私がホッと息を付いていると、マリーがベーコンをひっくり返しながら言葉を続ける。
「私の無駄な魔力も、これで姫様のお役に立てるかもしれませんね」
自虐的な言葉を使いながらも、彼女の瞳は希望に満ちているように見えた。
魔法は得意なのに体調を崩す彼女の特異体質。
使えずにため込むしかなかった彼女の魔力をマッシュが吸い出せるのなら、それ事態は歓迎すべき事だと思う。
そうは思うけど、頑張り屋の彼女には釘を刺さなきゃね。
「むちゃな事はせずに、異変を感じたらやめるのよ? 今のままでもマリーは私の大切な親友なんだから」
「……かしこまりました。ありかとうございます」
本当にわかっているのか不安なのだけど、彼女は優雅にお辞儀をしてみせた。
そうこうしている間にベーコンが焼けたみたくて、マリーが卵が投下していく。
片手で、パカッ、パカッって、見ていて気持ちがいいわ。
聞けばベーコンも卵もマッシュが森の中で入手してきたみたい。
イノシシのお肉を夜の間に薫製したそうよ。
なんて言うべきか言葉に悩むけど、さすがは私のマッシュ、でいいのかしら?
そんなマッシュお手製のベーコンがこんがり焼けて、心が躍る香りが部屋の中に回り始める。
ほんと、すっごくお腹がすくわね、この香り。
「んん……、良い香りですぅ……」
夢の中に居るリリも同じみたい。
毛布にくるまれたあどけない口元が、もにゅもにゅ動いているの。
「…………っぁっ!!」
クリクリとした大きな瞳がぼんやり開いたかな、って思っていたらリリが跳ね起きた。
「もう少し寝ていても大丈夫よ。あなたの仕事は朝ご飯を食べてからね?」
「……はい、ありかとうございます」
笑うのもかわいそうだと思うのだけど、やっぱり私のリリは可愛いわね。
寝坊した事を恥ずかしく思っているのか、顔を赤くしたリリが毛布を鼻まで持ち上げて目だけを見せてくれる。
涙目の上目遣い。反則ね。
「リリ、もう少し寝るわよ」
「え? きゃぅ……」
あまりにもかわいいから、思わず押し倒しちゃったわ。
けど、仕方ないじゃない、かわいかったんですもの。
そしてそのままリリであそんでいたら、マリーのあきれたような声が飛んできた。
どうやら朝食が出来たみたい。
私はオホンと威厳たっぷりにせき払いをして、リリの手を引いた。
「さてと、いただきましょうか」
「はひ……」
こちょがしたり、くすぐったりしていたから、息も絶え絶えな感じだけど、かわいいから大丈夫よね。うん。
ってことで、ちょっとだけ現実逃避。
微笑ましい視線を私にまで向けてくるマリーから視線をそらして、窓の外を眺めたら、昨日と同じように赤いトカゲがマッシュに倒されていた。
「……どれだけいるのかしら? 夜の間も襲われたのよね?」
「はい。マッシュ様の様子をうかがう限り、そのようです」
「そうよね……」
知らないうちに元の世界に帰った子も合わせると、すでに60体を越えてた。
マリーが焼き払った数も含めたら倒した数は100体を超えるんじゃないかしら?
「1度冒険者ギルドに報告を出しますか?」
「そうね。そうしましょう。これじゃぁ、原因の調査どころじゃないもの。……幸いマッシュは楽しそうにしているし、今日はこのまま頑張ってもらって報告は夕方にしましょう。それまではトレーニングね」
「承知しました。私はマッシュ様の様子を見させてもらって、同時発動の仕組みなどを解析しようかと思います」
「わかったわ。むちゃはダメよ?」
「かしこまりました」
一応は恭しく頭を下げてくれたけど、瞳はすでにマッシュの方へと向いていた。
多分わかってないわね。
それにしても同時発動か……、私の方でもちょっとだけ考えて見ようかしら。
「リリは基礎訓練の合間に外でも訓練ね? 敵はいっぱいいるみたいだから、良い練習になると思うわ」
「トカゲさんを倒せば良いんですよね? 頑張ります!!」
「うん、お願いね」
ギュッとつえを握るリリを頼もしく思いながら、私も静かに目を閉じる。
さてと、頑張りますか。
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