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薬草の売却はまた今度、ってことで今日はこのまま帰るんだけど、
「キュッ!」
「ん? どうしたの??」
突然ナイフを持ったマッシュが、パタパタ走り出しちゃって、そのまま茂みの中に入って行ったの。
そうして待つこと数分。
すっごく大きな葉っぱを持ったマッシュが帰ってきて、首をかしげる私たちの前に広げてくれた。
5体で葉っぱを持ち上げて、キュッ、キュッ、って促してくれる。
「……乗っていいの?」
「「「キュ!」」」
お言葉に甘えて恐る恐る乗ってみたんだけど、葉っぱの上って意外に快適ね。
マリーと並んで座っても、安定感バツグン。
乗り心地はゆりかごに近いのかしら?
良い感じのたるみが体を包み込んでくれてホッとするし、マッシュたちも何だか楽しそう。
そのまま城に向かって走り出しちゃったんだけど、来たときよりもずっと早いみたい。
「ねぇ、マリー。これからは城での移動もマッシュたちに頑張ってもらいましょうか!」
「……えーっと、……。さすがにそれは、目立ちすぎるかと……」
「……そうよね」
わかってたけど、わがままを言いたくなるくらい良い感じなのよ。
馬車より揺れないし、人力車より小回りがきくって最高の移動手段じゃないかしら?
さすがは私のマッシュよね!!
なんて思いながらぼんやりと座っているだけで、いつの間にか真っ暗な地下道を抜けて、私の部屋にたどり着いていた。
「ん? なに? 手伝ってくれるの?」
「「キュ!」」
せっかくだから着替えもマッシュに手伝ってもらったんだけど、彼らじゃ身長が足りなかったみたい。
途中で諦めちゃって部屋の掃除をしてくれてた。
こればっかりは、適材適所よね。
そうしてみんなに手伝って貰いながら、王族が出来るギリギリラインの動きやすい服に着替えて、鍛錬場に向かう。
お城の中には、王族用、貴族用、兵士用の3つがあるんだけど、私が行けるのは兵士用だけね。
ほかの2つはどう考えても面倒なことになるもの。
「……あら、良い熱気」
読書以外に興味なんてなかったから来るのは初めてなんだけど、案外大勢の人がいるのね。
全部で60人くらいかしら?
土が敷き詰められた広い部屋の中で、男たちが模擬戦をしているみたい。
「お邪魔するわね」
「…………」
彼らは私たちの方をチラリと流し見た後で、興味なさげに鼻を鳴らした。
女が何しに来たんだよ、って目で訴えながら、模擬戦に戻っていく。
(感じ悪いわね。……でもまぁ、陰口を言うだけの貴族たちよりはましかしら)
そう思い直して、出来るだけ刺激しないように彼らの横を通り過ぎた。
向かった先は専用の機材が並ぶ小さな部屋。
外と違ってこっちはあまり人気がない見たい。中に居たのは兵士だと思う女性が1人だけ。
ランニングマシーンでポニーテールを揺らす彼女に軽く会釈をして、私たちは最奥にある魔力増加用の機具に近付いた。
魔力を吸い取るスライムの皮に手を伸ばして、感触を確かめる。
「んー、いい感じのプニプニだけど、私のマッシュには及ばないわね」
これはあれね。手触りが弱いわ。
「姫様。私もご一緒してよろしいですか?」
「え? ……えぇ、もちろんよ。マリーと一緒なら心強いわ」
少しだけ震えていたマリーの手を優しく握って、スライムの皮に足を伸ばした。
触れている素肌から、魔力がゆっくり吸い取られていく。
「ミリ様、大丈夫そうですか?」
「え、えぇ……。ゆっくり慣れていくわ」
流れる魔力の量を減らして、周囲からの収集量を高める。
それがこのトレーニングの仕組みなのだけど、魔力操作ってあまり得意じゃないのよね。
「……ぅぅ」
必死に抵抗するんだけど、ドンドン取られちゃうのよ。
全身から汗が出てくるし、これ、意外と辛いわね……。
「ミリ様、あまり無理をされては……」
「ぃ、ぃぇ、……大丈夫よ」
ねぇ、マリー? あなたはなぜそんなに涼しい顔をしていられるのかしら?
これはダメね。主として失格だわ。
頑張って優雅なところを見せないと!!
ーーなんて思っていた時、
不意にマリーが抱えていた鞄から、マッシュが勢い良く飛び出した。
「わっ、ちょっと、どうしたの?」
マッシュがポテンポテンと体を揺らしながら、私の膝に乗ってくる。
そして何事もなかったかのように、キュ、と小さく鳴いて首をかしげてくれた。
(一緒にトレーニングをしてくれるのかしら?)
膝の上で動かなくなったマッシュの行動を見る限り、そんな感じだと思う。
ふわふわのモチモチで、抱きしめていると集中出来るから、このトレーニングにはうってつけなんだけど、ちょっとだけ場所が悪いのよね。
(気付かれた……?)
そんな思いでランニングマシンの方に視線を向けたんだけど、そこには目を大きく開いて動きを止めた女性の姿があった。
(あ、うん。バレてる……)
王族が使うスキルは大々的に公表されるから、私のマッシュは悪い意味で有名だったりするのよ。
だとすれば、当然、私の正体もわかる訳で……。
(さてと、どうしましょう……)
このままここにいると何を言われるかわからない。
(騒ぎになる前に逃げようかしら)
そんな思いでいると、呆然としていた彼女が飛び跳ねるようにランニングマシーンを降りて、深くお辞儀をしてくれた。
(…………あれ?)
疑問を覚えながらも小さく手を振ると、彼女がもう1度頭を下げてくれる。
そして何も言わずにランニングマシーンへと戻って行った。
(バカにされなかったどころか、頭を下げられた??)
あまりの出来事に放心状態で彼女をぼうぜんと眺めたのだけど、彼女は出来るだけこっちを見ないようにしているみたい。
たまにチラリとこっちを見ても、すぐに視線をそらすのよ。
貴族たちから向けられている視線とは違ってて、なんだか不思議な感じね……。
(とりあえずはここに居ても大丈夫なのかしら? 初日から追い出されなくてラッキー??)
そう心の中で首をかしげながら、騒ぎの原因であるマッシュを抱きかかえる。
周囲にあるのは、マリーの小さな呼吸音と女性の足音。
はじめて訪れたはずのこの場所がどこか懐かしくて、なんだか幸せだった。
「キュッ!」
「ん? どうしたの??」
突然ナイフを持ったマッシュが、パタパタ走り出しちゃって、そのまま茂みの中に入って行ったの。
そうして待つこと数分。
すっごく大きな葉っぱを持ったマッシュが帰ってきて、首をかしげる私たちの前に広げてくれた。
5体で葉っぱを持ち上げて、キュッ、キュッ、って促してくれる。
「……乗っていいの?」
「「「キュ!」」」
お言葉に甘えて恐る恐る乗ってみたんだけど、葉っぱの上って意外に快適ね。
マリーと並んで座っても、安定感バツグン。
乗り心地はゆりかごに近いのかしら?
良い感じのたるみが体を包み込んでくれてホッとするし、マッシュたちも何だか楽しそう。
そのまま城に向かって走り出しちゃったんだけど、来たときよりもずっと早いみたい。
「ねぇ、マリー。これからは城での移動もマッシュたちに頑張ってもらいましょうか!」
「……えーっと、……。さすがにそれは、目立ちすぎるかと……」
「……そうよね」
わかってたけど、わがままを言いたくなるくらい良い感じなのよ。
馬車より揺れないし、人力車より小回りがきくって最高の移動手段じゃないかしら?
さすがは私のマッシュよね!!
なんて思いながらぼんやりと座っているだけで、いつの間にか真っ暗な地下道を抜けて、私の部屋にたどり着いていた。
「ん? なに? 手伝ってくれるの?」
「「キュ!」」
せっかくだから着替えもマッシュに手伝ってもらったんだけど、彼らじゃ身長が足りなかったみたい。
途中で諦めちゃって部屋の掃除をしてくれてた。
こればっかりは、適材適所よね。
そうしてみんなに手伝って貰いながら、王族が出来るギリギリラインの動きやすい服に着替えて、鍛錬場に向かう。
お城の中には、王族用、貴族用、兵士用の3つがあるんだけど、私が行けるのは兵士用だけね。
ほかの2つはどう考えても面倒なことになるもの。
「……あら、良い熱気」
読書以外に興味なんてなかったから来るのは初めてなんだけど、案外大勢の人がいるのね。
全部で60人くらいかしら?
土が敷き詰められた広い部屋の中で、男たちが模擬戦をしているみたい。
「お邪魔するわね」
「…………」
彼らは私たちの方をチラリと流し見た後で、興味なさげに鼻を鳴らした。
女が何しに来たんだよ、って目で訴えながら、模擬戦に戻っていく。
(感じ悪いわね。……でもまぁ、陰口を言うだけの貴族たちよりはましかしら)
そう思い直して、出来るだけ刺激しないように彼らの横を通り過ぎた。
向かった先は専用の機材が並ぶ小さな部屋。
外と違ってこっちはあまり人気がない見たい。中に居たのは兵士だと思う女性が1人だけ。
ランニングマシーンでポニーテールを揺らす彼女に軽く会釈をして、私たちは最奥にある魔力増加用の機具に近付いた。
魔力を吸い取るスライムの皮に手を伸ばして、感触を確かめる。
「んー、いい感じのプニプニだけど、私のマッシュには及ばないわね」
これはあれね。手触りが弱いわ。
「姫様。私もご一緒してよろしいですか?」
「え? ……えぇ、もちろんよ。マリーと一緒なら心強いわ」
少しだけ震えていたマリーの手を優しく握って、スライムの皮に足を伸ばした。
触れている素肌から、魔力がゆっくり吸い取られていく。
「ミリ様、大丈夫そうですか?」
「え、えぇ……。ゆっくり慣れていくわ」
流れる魔力の量を減らして、周囲からの収集量を高める。
それがこのトレーニングの仕組みなのだけど、魔力操作ってあまり得意じゃないのよね。
「……ぅぅ」
必死に抵抗するんだけど、ドンドン取られちゃうのよ。
全身から汗が出てくるし、これ、意外と辛いわね……。
「ミリ様、あまり無理をされては……」
「ぃ、ぃぇ、……大丈夫よ」
ねぇ、マリー? あなたはなぜそんなに涼しい顔をしていられるのかしら?
これはダメね。主として失格だわ。
頑張って優雅なところを見せないと!!
ーーなんて思っていた時、
不意にマリーが抱えていた鞄から、マッシュが勢い良く飛び出した。
「わっ、ちょっと、どうしたの?」
マッシュがポテンポテンと体を揺らしながら、私の膝に乗ってくる。
そして何事もなかったかのように、キュ、と小さく鳴いて首をかしげてくれた。
(一緒にトレーニングをしてくれるのかしら?)
膝の上で動かなくなったマッシュの行動を見る限り、そんな感じだと思う。
ふわふわのモチモチで、抱きしめていると集中出来るから、このトレーニングにはうってつけなんだけど、ちょっとだけ場所が悪いのよね。
(気付かれた……?)
そんな思いでランニングマシンの方に視線を向けたんだけど、そこには目を大きく開いて動きを止めた女性の姿があった。
(あ、うん。バレてる……)
王族が使うスキルは大々的に公表されるから、私のマッシュは悪い意味で有名だったりするのよ。
だとすれば、当然、私の正体もわかる訳で……。
(さてと、どうしましょう……)
このままここにいると何を言われるかわからない。
(騒ぎになる前に逃げようかしら)
そんな思いでいると、呆然としていた彼女が飛び跳ねるようにランニングマシーンを降りて、深くお辞儀をしてくれた。
(…………あれ?)
疑問を覚えながらも小さく手を振ると、彼女がもう1度頭を下げてくれる。
そして何も言わずにランニングマシーンへと戻って行った。
(バカにされなかったどころか、頭を下げられた??)
あまりの出来事に放心状態で彼女をぼうぜんと眺めたのだけど、彼女は出来るだけこっちを見ないようにしているみたい。
たまにチラリとこっちを見ても、すぐに視線をそらすのよ。
貴族たちから向けられている視線とは違ってて、なんだか不思議な感じね……。
(とりあえずはここに居ても大丈夫なのかしら? 初日から追い出されなくてラッキー??)
そう心の中で首をかしげながら、騒ぎの原因であるマッシュを抱きかかえる。
周囲にあるのは、マリーの小さな呼吸音と女性の足音。
はじめて訪れたはずのこの場所がどこか懐かしくて、なんだか幸せだった。
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