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98:初めてのパーティー用ドレス

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 翌日の朝一番に、ミスティが私の部屋へ突撃してきた。

「おはよう、アメリー! ハイネの部屋に行くよ!!」

 シュエにご飯をあげた私は、ハリールが送ってくれた荷物を抱え、彼女に引きずられて移動する。
 養父から届いた荷物の箱は、ヨーカー魔法学園の指定鞄のように、中に入れたものを小さくする魔法がかかっていた。
 
 ハイネの部屋もまた、魔法都市で購入した「部屋の種」で内装が変更されている。「実験部屋、器具完備で頑丈さも売り」という謳い文句のとおり、室内には実験用のテーブルや棚が並んでいた。
 天井には薬草の束が種類ごとにぶら下がっており、床にはカラフルな魔法玉の入った瓶が揃っている。どちらかといえば、散らかった部屋だ。
 私は女子会などで、何度かこの場所を訪れたことがある。

「危険な薬品は片付けてあるけれど、棚の瓶には勝手に触らないでね。手がただれたり、耳が巨大化したり、皮膚がヒョウ柄になったりするものもあるから」
「面白そう!」

 怖いもの知らずのミスティは、ずんずんと部屋の奥へ進んでいく。
 ハイネの部屋は二部屋構造にリフォームする魔法アイテムが使われており、手前の部屋が実験用、奥の部屋が住居用として区別されている。
 黒と白で統一された部屋に入ると、ハイネが交流会で着るドレスがハンガーにかけられていた。繊細な薔薇のレースをあしらった、大人っぽい雰囲気の黒いドレスだ。揃いの手袋やアクセサリも用意されている。

「ハイネのドレス、綺麗だね」

 まじまじと彼女のドレスを観察していると、「それはいいから……アメリーのドレス、出して……」と言われてしまった。
 とりあえず、箱を広げて中身を二人に見せる。

「うわぁ、さすが砂漠大国!」

 ミスティが面白そうに中をのぞき込んでいる。ハイネも興味津々の様子だ。

「なるほど……ミスティ、カマルの衣装を……確認してきて」
「お安いご用だよ!」

 ミスティは元気に部屋を出て行き、僅か数分後に戻ってきた。

「青と白だよ! 形はエメランディアに寄せてる」
「だとすれば、これかこれ。他校交流会に相応しい装いは、こっちかしら。異国風も捨てがたいわね」

 魔法薬を作るときのように、ハイネがハキハキ喋る状態になっている。

「ほら、アメリー。脱いで脱いで、着替えるよ!」

 ミスティまで一緒に、私を着せ替えにかかる。
 ハイネが選んだ、袖なしの青いドレスを纏うと、ミスティがリボンを結んでくれた。
 貴族のお嬢様みたいな、ドレープの効いた可愛らしいドレスだ。エメランディアらしい装いだけれど、さりげなく砂漠大国風の模様が入れられている。

「アメリー、可愛いよ。化粧と髪のセットはあとでね。次、ハイネ!」

 ミスティの指示のもと、ハイネの着替えを手伝う。その後はミスティで、彼女の黄色いドレスは、スッキリしたタイトなデザインだった。
 全員着替え終わると、互いに髪のセットやメイクを施していく。
 私はくるくると髪を巻かれ、頭の上で二つのお団子に結ってもらった。ミスティは髪を後ろで一つにまとめ、ハイネはサイドを軽く編み込んでいる。
 年頃にもかかわらず、お洒落に疎い私は、ミスティやハイネに化粧の方法などを教えてもらいながら二人を飾り付けた。

「今の格好なら、カマルもイチコロだね」
「ミスティ……彼は、制服姿のアメリーを見ても、一撃で仕留められているから……」

 準備を済ませた私たちは、一階の談話室へ下りていく。
 下には、すでに準備を終えた一年生の男子が揃っていた。男子全員が前髪を上げていて、いつもより大人っぽい。
 特に、いかにも王子様という出で立ちのカマルは、いつにも増して素敵だ。
 ガロはノアの服を借りたようで、慣れない衣装に戸惑っている。
 男子たちは下りてきた女子三人組を見て、口々に感想を言い合った。

「……に、似合っている」
「可愛いね。アメリー、すごく可愛いよ。うん、可愛い……」
「おお、大変身だ。ミスティは馬子にも衣装だな」

 ハイネは冷静で、私は真っ赤になり、ミスティは憤慨している。

「まともな感想が、ガロだけじゃない。ノア、あんたこそ、馬子にも衣装だよ。そして、カマルは、ほんとアメリーしか見ていないよね」

 全員揃ったところで、私たちは一緒に会場へ出発した。
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