97 / 99
96:調査開始と花街出身伯爵
しおりを挟む
翌日以降、クレアは味方と共に事件を解決するための作戦会議に参加していた。
クレアたち以外には、犯人捕縛を命じられた兵士が集まっている。
一応、ミハルトン家当主のクレオも来ていた。
「……というわけで、よほどの馬鹿じゃない限り。同じ場所で誘拐事件は起こさない。狩り場は変えるはずだ。全部の事件が起こった場所の共通点を探し、似た条件の場所に兵士を配置する。動きが見えたら俺たちが戦闘に加勢すればいい」
クレアの意見に残りのメンバーも賛成のようで、新しい意見が上がることはない。
こういった事件が起きやすい場所をクレアは知っている。
過去に自分自身が起こしていた側なので。
クレアのいた組織は密偵、誘拐、暗殺、なんでもありの集団だった。
「アデリオ、ハク。お前らも分散して、兵士の面倒を見てやりな。ユージーンとマルリエッタは……」
「大丈夫だよ、クレア。二人とも、戦闘には参加できる」
サイファスの言葉にクレアは素直に頷く。付き合いの長い彼が大丈夫と言うなら信頼できた。
「わかった、なら二人一組で行動するように。無理はするなよ」
クレアが指示した条件をもとに、兵士が地図に×印をつけていく。
「被害者は子供だ。予想した位置で、子供がうろつける場所はさらに絞られるな」
クレアの横から、アデリオがひょっこり顔を出す。
「被害に遭った子供の特徴は?」
「全員が金髪の女児で、年齢は五歳から十歳程度。全員、整った顔立ちだとか」
「なら、売り先はロリコン貴族か花街あたり、下手すると他国もありえるね。それにしてもベタな……」
アデリオの言葉にクレアは頷いたが、サイファスは不思議そうにしている。
「クレア、どういうこと?」
「サイファス、知らねえのか? この国の王都では今、金髪の女児が人気なんだ。それと、アズム国でもな」
説明するクレアに対し、額を抑えながらアデリオがツッコミを入れる。
「あのね、クレア……様、その情報は表に出てない。常識みたいに感じているのは裏の人間だけだ」
「そっか。数年前からの流行だから、てっきり皆知っていると思った」
少し考えてクレアは王都の情報屋を当たることに決める。
多少金はかかるが、人身売買系の話なら必ず把握している者たちに心当たりがあるのだ。
「クレア様、俺とハクで情報収集してみるよ。行方不明者の居場所は兵士サンたちに知らせるね」
アデリオやハクは情報収集も得意だ。
二人に任せておけば問題ないと判断し、クレアはクレオの方を向く。
「おいクレオ、お前は俺に協力しろ。花街を調査するぞ」
「は? どうして僕が……」
「お前の方が詳しいだろ」
「周りの誤解を呼びそうな言い方をしないでくれる?」
クレオが花街の常連だという意味ではない。
限られた者しか知らないが、彼は以前、花街で暮らしていた。
ほんの一年前の話なので、ミハルトン家よりも花街がクレオのホームなのだ。
ものすごく嫌そうに眉を顰めながらも、クレオは「お義兄様の助けになるなら」とゴニョゴニョ言って承諾した。
クレアには反抗的なクレオだが、どういうわけかサイファスには懐いているのだ。
翌日から、クレアたちは手分けして捜査を進めることになった。
クレアたち以外には、犯人捕縛を命じられた兵士が集まっている。
一応、ミハルトン家当主のクレオも来ていた。
「……というわけで、よほどの馬鹿じゃない限り。同じ場所で誘拐事件は起こさない。狩り場は変えるはずだ。全部の事件が起こった場所の共通点を探し、似た条件の場所に兵士を配置する。動きが見えたら俺たちが戦闘に加勢すればいい」
クレアの意見に残りのメンバーも賛成のようで、新しい意見が上がることはない。
こういった事件が起きやすい場所をクレアは知っている。
過去に自分自身が起こしていた側なので。
クレアのいた組織は密偵、誘拐、暗殺、なんでもありの集団だった。
「アデリオ、ハク。お前らも分散して、兵士の面倒を見てやりな。ユージーンとマルリエッタは……」
「大丈夫だよ、クレア。二人とも、戦闘には参加できる」
サイファスの言葉にクレアは素直に頷く。付き合いの長い彼が大丈夫と言うなら信頼できた。
「わかった、なら二人一組で行動するように。無理はするなよ」
クレアが指示した条件をもとに、兵士が地図に×印をつけていく。
「被害者は子供だ。予想した位置で、子供がうろつける場所はさらに絞られるな」
クレアの横から、アデリオがひょっこり顔を出す。
「被害に遭った子供の特徴は?」
「全員が金髪の女児で、年齢は五歳から十歳程度。全員、整った顔立ちだとか」
「なら、売り先はロリコン貴族か花街あたり、下手すると他国もありえるね。それにしてもベタな……」
アデリオの言葉にクレアは頷いたが、サイファスは不思議そうにしている。
「クレア、どういうこと?」
「サイファス、知らねえのか? この国の王都では今、金髪の女児が人気なんだ。それと、アズム国でもな」
説明するクレアに対し、額を抑えながらアデリオがツッコミを入れる。
「あのね、クレア……様、その情報は表に出てない。常識みたいに感じているのは裏の人間だけだ」
「そっか。数年前からの流行だから、てっきり皆知っていると思った」
少し考えてクレアは王都の情報屋を当たることに決める。
多少金はかかるが、人身売買系の話なら必ず把握している者たちに心当たりがあるのだ。
「クレア様、俺とハクで情報収集してみるよ。行方不明者の居場所は兵士サンたちに知らせるね」
アデリオやハクは情報収集も得意だ。
二人に任せておけば問題ないと判断し、クレアはクレオの方を向く。
「おいクレオ、お前は俺に協力しろ。花街を調査するぞ」
「は? どうして僕が……」
「お前の方が詳しいだろ」
「周りの誤解を呼びそうな言い方をしないでくれる?」
クレオが花街の常連だという意味ではない。
限られた者しか知らないが、彼は以前、花街で暮らしていた。
ほんの一年前の話なので、ミハルトン家よりも花街がクレオのホームなのだ。
ものすごく嫌そうに眉を顰めながらも、クレオは「お義兄様の助けになるなら」とゴニョゴニョ言って承諾した。
クレアには反抗的なクレオだが、どういうわけかサイファスには懐いているのだ。
翌日から、クレアたちは手分けして捜査を進めることになった。
1
お気に入りに追加
1,786
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
新しい人生を貴方と
緑谷めい
恋愛
私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。
突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。
2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。
* 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
私との婚約は、選択ミスだったらしい
柚木ゆず
恋愛
※5月23日、ケヴィン編が完結いたしました。明日よりリナス編(第2のざまぁ)が始まり、そちらが完結後、エマとルシアンのお話を投稿させていただきます。
幼馴染のリナスが誰よりも愛しくなった――。リナスと結婚したいから別れてくれ――。
ランドル侯爵家のケヴィン様と婚約をしてから、僅か1週間後の事。彼が突然やってきてそう言い出し、私は呆れ果てて即婚約を解消した。
この人は私との婚約は『選択ミス』だと言っていたし、真の愛を見つけたと言っているから黙っていたけど――。
貴方の幼馴染のリナスは、ものすごく猫を被ってるの。
だから結婚後にとても苦労することになると思うけど、頑張って。
【完結】愛され令嬢は、死に戻りに気付かない
かまり
恋愛
公爵令嬢エレナは、婚約者の王子と聖女に嵌められて処刑され、死に戻るが、
それを夢だと思い込んだエレナは考えなしに2度目を始めてしまう。
しかし、なぜかループ前とは違うことが起きるため、エレナはやはり夢だったと確信していたが、
結局2度目も王子と聖女に嵌められる最後を迎えてしまった。
3度目の死に戻りでエレナは聖女に勝てるのか?
聖女と婚約しようとした王子の目に、涙が見えた気がしたのはなぜなのか?
そもそも、なぜ死に戻ることになったのか?
そして、エレナを助けたいと思っているのは誰なのか…
色んな謎に包まれながらも、王子と幸せになるために諦めない、
そんなエレナの逆転勝利物語。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる