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60:狙われた公爵令嬢
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クレアとエイミーナが路地に入ると、怪しい男たちが現れた。少し前から、背後に何者かの気配を感じていたのだ。
体格の良い彼らは、クレアとエイミーナを取り囲む。
(もっと多いと思ったが、予想より少ない……?)
正体に気づいていないものの、サイファスたちのこともカウントしているクレアだった。
路地の建物は民家や倉庫が中心だ。今は人が出払っているようで、路地にいるのはクレアたちだけのようだ。
怪しげな男は、全部で四人。彼らの目はエイミーナを見ている。
「エイミー、こいつらに見覚えはあるか?」
「ないですわっ! こんな人たち知りません!」
「……だそうだが、お前ら、何の用があってエイミーを狙っているんだ?」
壁際にエイミーナを庇ったクレアが男たちに問いかけた。
「その女が邪魔なんだよ。家名にあぐらをかいた貴族のお嬢ちゃん、あんた個人に恨みはないが依頼遂行のために消えてもらう」
「エイミーが邪魔?」
「ああ、そうだ。依頼者は、その女がいなくなることを望んでいる」
「うーん。依頼者がクレオなら、お前らが俺の顔を見て攻撃してくるわけがないし……別口かな」
「何を言っている!?」
「公爵、敵が多そうだからなあ。特定できねえわ。お前らをとっ捕まえて吐かせた方が早いな」
クレアの外見は、小柄な青年といったところだ。サイファスと同じく、一見優男の部類に見える。
だからか、男たちはクレアを嘗めて掛かっていた。いつものことだ。
「エイミー、目ぇ瞑っとけ」
「はい……!」
邪魔なクレアを排除しようと、二人が真正面から突っ込んでくる。そんな単純な相手に向かって、クレアは懐から取り出した武器を投げつけた。
小さなナイフが、男たちの手足に刺さり動きを封じる。ちなみに刃には、しびれ薬を塗ってあった。
残りの二人は、やや警戒してクレアを襲おうとし、背後から急襲してきた人物によって一瞬で地面とお友達になった。
男たちを素手で殴り倒したのは、クレアを追ってきたサイファスだ。
「クレア、大丈夫?」
「ああ、平気だ。サイファス、お前……もしかして、俺らの後をつけてた?」
「うっ……えっと、クレアが心配で」
「危ねえな。もう少しで、お前まで攻撃しちまうところだった」
そんなことをすれば、返り討ちに遭うかもしれない。いくらクレアでも、残虐鬼は相手にしたくなかった……訓練では手合わせしてみたいが。
「エイミーが狙われたんだ。相手は王都の公爵家関係だと思うけど……」
「公爵家には迎えを頼んであるよ。明日か明後日には来るんじゃないかな」
「地面で伸びているこいつらに聞きたいこともできたし、一旦屋敷へ帰るか」
馬車の中に怪しい男たちを詰め込み、クレアたちは揃って辺境伯の屋敷へ戻る。
御者台には眠そうなアデリオが乗り、二頭の馬の片方にはマルリエッタとエイミーナが、もう片方にはクレアとサイファスが二人乗りしている。
サイファスがクレアを後ろから抱えるような形で馬を操縦していた。
ちなみに、クレアは男装中。男二人の仲睦まじい乗馬姿を通行人が二度見している。
エイミーナ登場で多少薄まっていたドキドキが、この乗馬でぶり返し、クレアは困惑していた。
しかし、サイファスはそんな妻を強く抱え込んで逃さない。
「怪我がなくて良かったよ、クレア。帰ったら、二人でゆっくり過ごそうね」
「……サイファス。エイミーが、ものすごい顔でこっちを見ているんだが……」
隣を進む馬の上から、恨めしそうな視線が飛んでくる。
「……クレオ様と二人乗りしたかった」
彼女と同乗中のマルリエッタは、なんだかんだ言いつつも、しっかりサイファスの味方をしていた。
体格の良い彼らは、クレアとエイミーナを取り囲む。
(もっと多いと思ったが、予想より少ない……?)
正体に気づいていないものの、サイファスたちのこともカウントしているクレアだった。
路地の建物は民家や倉庫が中心だ。今は人が出払っているようで、路地にいるのはクレアたちだけのようだ。
怪しげな男は、全部で四人。彼らの目はエイミーナを見ている。
「エイミー、こいつらに見覚えはあるか?」
「ないですわっ! こんな人たち知りません!」
「……だそうだが、お前ら、何の用があってエイミーを狙っているんだ?」
壁際にエイミーナを庇ったクレアが男たちに問いかけた。
「その女が邪魔なんだよ。家名にあぐらをかいた貴族のお嬢ちゃん、あんた個人に恨みはないが依頼遂行のために消えてもらう」
「エイミーが邪魔?」
「ああ、そうだ。依頼者は、その女がいなくなることを望んでいる」
「うーん。依頼者がクレオなら、お前らが俺の顔を見て攻撃してくるわけがないし……別口かな」
「何を言っている!?」
「公爵、敵が多そうだからなあ。特定できねえわ。お前らをとっ捕まえて吐かせた方が早いな」
クレアの外見は、小柄な青年といったところだ。サイファスと同じく、一見優男の部類に見える。
だからか、男たちはクレアを嘗めて掛かっていた。いつものことだ。
「エイミー、目ぇ瞑っとけ」
「はい……!」
邪魔なクレアを排除しようと、二人が真正面から突っ込んでくる。そんな単純な相手に向かって、クレアは懐から取り出した武器を投げつけた。
小さなナイフが、男たちの手足に刺さり動きを封じる。ちなみに刃には、しびれ薬を塗ってあった。
残りの二人は、やや警戒してクレアを襲おうとし、背後から急襲してきた人物によって一瞬で地面とお友達になった。
男たちを素手で殴り倒したのは、クレアを追ってきたサイファスだ。
「クレア、大丈夫?」
「ああ、平気だ。サイファス、お前……もしかして、俺らの後をつけてた?」
「うっ……えっと、クレアが心配で」
「危ねえな。もう少しで、お前まで攻撃しちまうところだった」
そんなことをすれば、返り討ちに遭うかもしれない。いくらクレアでも、残虐鬼は相手にしたくなかった……訓練では手合わせしてみたいが。
「エイミーが狙われたんだ。相手は王都の公爵家関係だと思うけど……」
「公爵家には迎えを頼んであるよ。明日か明後日には来るんじゃないかな」
「地面で伸びているこいつらに聞きたいこともできたし、一旦屋敷へ帰るか」
馬車の中に怪しい男たちを詰め込み、クレアたちは揃って辺境伯の屋敷へ戻る。
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ちなみに、クレアは男装中。男二人の仲睦まじい乗馬姿を通行人が二度見している。
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しかし、サイファスはそんな妻を強く抱え込んで逃さない。
「怪我がなくて良かったよ、クレア。帰ったら、二人でゆっくり過ごそうね」
「……サイファス。エイミーが、ものすごい顔でこっちを見ているんだが……」
隣を進む馬の上から、恨めしそうな視線が飛んでくる。
「……クレオ様と二人乗りしたかった」
彼女と同乗中のマルリエッタは、なんだかんだ言いつつも、しっかりサイファスの味方をしていた。
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