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28:不良令嬢とまさかの不意打ち
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翌朝、クレアは完全回復したマルリエッタのもとへサイファスと向かう。
マルリエッタは、クレアの正体をサイファスに告げていなかった。サイファスの態度から、それが見て取れる。
てっきり、すぐに報告されるものとばかり思っていたが意外だった。
侍女拭きに袖を通した彼女は、腰を九十度に折曲げてひたすら頭を下げている。
「大変申し訳ありません! 私がクレア様についていながら、こんなことになってしまうなんて。どんな罰でもお受けします」
しかし、サイファスはマルリエッタを責めずに宥めた。
「危ないところだったけれど、結果的に三人とも助かったんだし頭を上げて。クレアも、君を責めたりしていない」
「ですが」
「君も御者も辺境伯家の大事な一員だよ。私には敵も多いから、苦労をかけてごめんね」
「サイファス様……」
感極まっているマルリエッタだが、クレアは傍らで冷静に考えを巡らせていた。
どう考えても、自分はこのまま辺境伯の屋敷にいるべきではないと。
マルリエッタの回復を見届けてから早足で部屋に戻り、アデリオを呼び出す。
この日もアデリオは天井裏から現れた。
「そろそろだと思ったよ。この屋敷を出て行くの?」
「……ああ。迷ったが、俺がここにい続けるのは良くないと思い知った」
「だから最初から逃げたら良かったんだよ。変な情まで湧かせて」
「そ、それは」
まったくもってアデリオの言うとおりだとクレアは思った。彼はいつも合理的だ。
「で、いつ出て行くの?」
「明日だ。でも、サイファスに不利な噂が流れないよう情報操作はする。あいつはいい奴だから、そのくらいの罪滅ぼしはしたい」
「……いい奴、ね。クレア、あいつを見くびらない方がいいよ。腐っても残虐鬼と呼ばれる男だ」
「でも、結構ヘタレだぞ? 変に鋭そうに見えたが、案外普通の奴かもしれねえ」
「……だといいけどね」
その後は、翌日に向けて二人で荷物の整理をした。
武器類、実用的な衣類、日用品。それらを纏めて袋に詰めていき、その袋はベッドの下に隠す。
ちょうど作業を終えたところで、サイファスがクレアを呼びに来た。
「クレア、君に紹介したい人がいるんだ。来てもらえないかな」
「紹介? わかった」
サイファスに連れられ客間へ来てみると、そこには大変見知った人物が立っていた。
日に焼けた大柄な体に兵士の服を着た中年男性は、砦や前線でクレアと共に過ごしたあの隊長だったのだ。
「おい……紹介したい奴って」
「この間、君に副官を置くよう勧められたでしょう? 彼がその副官だよ」
ちらりと隊長を見ると、彼は大層難しい表情でクレアを観察していた。
使用人たちと一緒に入ってきた侍従姿のアデリオを見て、その顔はさらに複雑怪奇に歪められた。
マルリエッタは、クレアの正体をサイファスに告げていなかった。サイファスの態度から、それが見て取れる。
てっきり、すぐに報告されるものとばかり思っていたが意外だった。
侍女拭きに袖を通した彼女は、腰を九十度に折曲げてひたすら頭を下げている。
「大変申し訳ありません! 私がクレア様についていながら、こんなことになってしまうなんて。どんな罰でもお受けします」
しかし、サイファスはマルリエッタを責めずに宥めた。
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どう考えても、自分はこのまま辺境伯の屋敷にいるべきではないと。
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「でも、結構ヘタレだぞ? 変に鋭そうに見えたが、案外普通の奴かもしれねえ」
「……だといいけどね」
その後は、翌日に向けて二人で荷物の整理をした。
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ちょうど作業を終えたところで、サイファスがクレアを呼びに来た。
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「この間、君に副官を置くよう勧められたでしょう? 彼がその副官だよ」
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