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46:<日曜日> スパイスカツカレー
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楓が正社員になって一ヶ月が経過した。
風が心地よい季節、洋燈堂は相変わらず好調だ。
最近の変化といえば、理さんがスパイスに興味を持ち始めたことだろうか。
効能面が気になるみたいで、本を買ってきて自分で調べている。
ちなみに、今日は休日なので雛ちゃんがバイトに来ており、理さんは休みだ。
でも、休憩時間には顔を出してくれる。
「染のカレーによく入っているクミンは、食欲不振や消化不良に効くらしい」
「そうですね。私も食欲がない時期がありましたけれど、染さんのカレーは食べられましたから」
「ターメリックは肝機能障害や二日酔い、血流障害の改善にいいようだ。軟膏に混ぜて皮膚疾患の改善に使う方法もある」
「漢方薬では『鬱金』と呼ばれていますね。飲み過ぎ対策のドリンクが有名です」
「……君は俺より詳しいな」
「カレーやスパイスに関しては、少しだけ先輩ですから」
効能調査のほか、理さんは同じスパイスの食べ比べも気に入っている。
スパイスはメーカーによって、味や香りが異なるのだ。
染さんにも、お気に入りのスパイスがあるみたいだった。
「……もっと勉強して、現地でスパイスを選んでみたい」
理さんがふと呟いた言葉に、近くを通りかかった雛ちゃんが反応する。
「じゃあ、私が先生の飛行機に同乗しますね! キャビンアテンダントとして!」
雛ちゃんは嬉しそうに、理さんの周りをうろうろし始めた。
元教師と生徒だからか、彼女は理さんにとても懐いているのだ。
「楓ちゃん、今日は皆も揃っているし、まかないはカツカレーにしようと思うんだ。ちょうど人数分、豚肉が余っていて……」
キッチンの奥から、染さんが顔を出す。
「やったぁ、お手伝いします!」
楓は早足でキッチンへ向かった。トンカツもカレーも大好きだ。
染さんがカレーの用意をしている間、楓はカツを揚げる。
すでに、クミンパウダーとブラックペッパーと塩で味付けされている豚肉を取り出して、衣をまぶしていく。
それを、温度の上がった油にイン!
すると、揚げ鍋の中からジュワァッといい音が響く。
「できあがるのが楽しみ……」
染さんの方も順調だ。スパイスやタマネギに、すりつぶしたにんじんやトマト、チキンブイヨンを加えた、赤い色のカレーを作っている。おいしそうな香りがしてきた。
正直、染さんと楓以外の二人は毎日カレーという生活に飽きるのではと思っていた。
しかし、理さんも雛ちゃんもカレー生活が平気な様子。
雛ちゃんは「ただで他人のご飯を食べれるなんて嬉しい!」と喜んでいるし、理さんはスパイスに凝り始めたので、むしろ、いろいろなカレーを食べたいそうだ。
完成した染さんのカレーをお皿に盛り付け、カラッと揚がったトンカツをサクッと切って上に載せる。
「できましたよ~」
二人でカウンターへ皿を運び、皆で並んで椅子に腰掛けた。
「いただきます」
楓は早速、熱々のカツにかぶり付く。
サクサクの衣に歯を立てると、ジュワッと口の中に油と肉の旨みが広がった。
カレーとも、よく合っている。
「んっ! おいひい……」
はふはふと、楓は次々に勝つとカレーを口へ運んでいった。手が止まらない……!
四人は無言でカツカレーを食べ続けた。
風が心地よい季節、洋燈堂は相変わらず好調だ。
最近の変化といえば、理さんがスパイスに興味を持ち始めたことだろうか。
効能面が気になるみたいで、本を買ってきて自分で調べている。
ちなみに、今日は休日なので雛ちゃんがバイトに来ており、理さんは休みだ。
でも、休憩時間には顔を出してくれる。
「染のカレーによく入っているクミンは、食欲不振や消化不良に効くらしい」
「そうですね。私も食欲がない時期がありましたけれど、染さんのカレーは食べられましたから」
「ターメリックは肝機能障害や二日酔い、血流障害の改善にいいようだ。軟膏に混ぜて皮膚疾患の改善に使う方法もある」
「漢方薬では『鬱金』と呼ばれていますね。飲み過ぎ対策のドリンクが有名です」
「……君は俺より詳しいな」
「カレーやスパイスに関しては、少しだけ先輩ですから」
効能調査のほか、理さんは同じスパイスの食べ比べも気に入っている。
スパイスはメーカーによって、味や香りが異なるのだ。
染さんにも、お気に入りのスパイスがあるみたいだった。
「……もっと勉強して、現地でスパイスを選んでみたい」
理さんがふと呟いた言葉に、近くを通りかかった雛ちゃんが反応する。
「じゃあ、私が先生の飛行機に同乗しますね! キャビンアテンダントとして!」
雛ちゃんは嬉しそうに、理さんの周りをうろうろし始めた。
元教師と生徒だからか、彼女は理さんにとても懐いているのだ。
「楓ちゃん、今日は皆も揃っているし、まかないはカツカレーにしようと思うんだ。ちょうど人数分、豚肉が余っていて……」
キッチンの奥から、染さんが顔を出す。
「やったぁ、お手伝いします!」
楓は早足でキッチンへ向かった。トンカツもカレーも大好きだ。
染さんがカレーの用意をしている間、楓はカツを揚げる。
すでに、クミンパウダーとブラックペッパーと塩で味付けされている豚肉を取り出して、衣をまぶしていく。
それを、温度の上がった油にイン!
すると、揚げ鍋の中からジュワァッといい音が響く。
「できあがるのが楽しみ……」
染さんの方も順調だ。スパイスやタマネギに、すりつぶしたにんじんやトマト、チキンブイヨンを加えた、赤い色のカレーを作っている。おいしそうな香りがしてきた。
正直、染さんと楓以外の二人は毎日カレーという生活に飽きるのではと思っていた。
しかし、理さんも雛ちゃんもカレー生活が平気な様子。
雛ちゃんは「ただで他人のご飯を食べれるなんて嬉しい!」と喜んでいるし、理さんはスパイスに凝り始めたので、むしろ、いろいろなカレーを食べたいそうだ。
完成した染さんのカレーをお皿に盛り付け、カラッと揚がったトンカツをサクッと切って上に載せる。
「できましたよ~」
二人でカウンターへ皿を運び、皆で並んで椅子に腰掛けた。
「いただきます」
楓は早速、熱々のカツにかぶり付く。
サクサクの衣に歯を立てると、ジュワッと口の中に油と肉の旨みが広がった。
カレーとも、よく合っている。
「んっ! おいひい……」
はふはふと、楓は次々に勝つとカレーを口へ運んでいった。手が止まらない……!
四人は無言でカツカレーを食べ続けた。
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