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7:カブとトマトと茶色の毛玉

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「この水、飲めるの?」
「おそらく大丈夫。以前ダンジョンにいた人間が飲んでも平気だったから……」

 透き通った湖の水に手を浸してみると、恐ろしく冷たい。

「ここは地底湖の一つ。岩から染み出るまで濾過されているから、水が綺麗だよ」
「なるほど。前のヌシは、ここにはいないの?」
「あいつは死んだ」

 カルロは私から僅かに視線をそらせて呟いた。あまり触れて欲しくない話だったようだ。
 そこまで親しい間柄ではない今、内容を深掘りするのは良くないだろう。
 彼を連れて部屋の前まで戻った私は、昨日植えられなかった作物を植えるため畑作を実行する。

「さて、今日はカブとトマトを使った料理だね!」

 季節を無視しているこの野菜の組み合わせ。
 異世界仕様なので、きっと大丈夫なのだろう。
 昨日マメを植えた近くに、カブとトマトを植えてみる。
 畑作をしていると、私自身のレベルが3に上がった。

 割とサクサクレベルが上がっている気がする。
 創世神の加護のおかげか、イージーモードで暮らせているようだ。
 けれど、地形を変えたりするスキルは出てこない。まだレベルが足りないのだろう。

(とりあえず、洞窟の外に出たいけれど……外に出るまで距離があるのかな?)

 早く太陽の光を浴びたい。
 近くを確認してみると、洞窟の壁の一部に穴が開いているのを見つけた。
 洞窟の整備を行ったので、デコボコ道が平らになりだいぶ歩きやすくなっている。
 松明などはデフォルトで元から設置されているようだ。ダンジョンの謎である……
 カルロに訊いても「そういうものだ」で押し通されてしまった。

 細い洞窟の道を整備しながら進んでいくと、すぐに行き止まりになる。
 いつになったら青空が見られるのだろうかと頭を悩ませていると、岩陰から何か黒い塊が私をめがけて飛び出してきた。

「ひゃあっ!?」

 慌ててそれを避けた私は、地面に尻餅をついてしまう。

「痛たた……」

 顔を上げると、カルロが片手で何かを掴んでいた。黒い犬のような生き物だ。

「若いウルフだ。僕と同じで百歳以下」
「そうなんだ……って、気になったんだけど、魔王の平均寿命って何歳くらいなの?」
「寿命は二千。五百歳で中堅、高位の魔王は千歳程度かな」
「長生きなんだね……」
「ヌシの寿命も人間の時とは変わっているよ? 魔王並に……下手をすればそれ以上、生きる」
「え、そうなの?」

 真顔で尋ねると、呆れたような目を向けられる。

「モエギは、本当に何も知らないんだね」
「別の世界の人間から、いきなりダンジョンのヌシになっちゃったから」

 詳しいことは、追い追いチリに訊けばいいかと思っていた。
 私を見つめたカルロは、目元を和らげて口を開く。

「それなら、僕に分かる範囲で教えようか」
「本当? ありがとね、カルロ」

 礼を言うと、ウルフを掴んだままのカルロはソワソワしつつ目をそらした。
 照れているようだ。
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