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第1章 記憶と兄妹

第3思 スライムエンカウント1

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「....う、あ?此処は.....」

哀檻が目覚めたのは、悪臭の漂う暗く汚い下水道だった。

「僕は確かバイト中だったはず......なのに、どうして....」

哀檻は、直前の記憶を思い出そうとする。

「そうだ...出前で高校に向かって。...それで、光が...痛っ」

思い出そうとすると酷い頭痛に襲われる。
それにまだ意識が朧気だ。

「拉致....では無いよな。縛られても無いし、外傷も....無い。」

哀檻が自分の置かれている状況を確認していると、下水道内に、
カツン.....コツン....
と何者かの足音が反響する。
相手がどんな人かも分からず助けを求めるのは、危険だと考え、哀檻は身を潜めて様子を窺う。

「す、鈴織君....よく、下水道なんて思いついた、ね。」
「運が良かったようです。王城の地図をあんなに簡単に見ることができたのは少し気掛かりですが。.....あ、そこ左です。」
「え、あ、うん。...え?何で左だって分かるの?」
「?....地図があった事、今話しませんでした?」
「う、うん。まあ、地図の事は聞いたけど、持ち出せなかったって...........まさか鈴織君、お城の中全部覚えたの.....!?」
「まさか。流石にそんな事はしませんよ。」
「だ、だよね。そうだよね。」
「はい。全部覚えるのは無駄が多すぎるので、出口までの道のりだけです。あ、そこも左です。」
「...........」
それでも異常なんだけどなぁ...という大人しそうな呟き声は水の音で掻き消える。

会話の内容はよく分からなかったが、雰囲気からして犯罪者の類では無いと判断した哀檻は、顔を出そうとする。

カッ...コツン----
顔を出そうとして、足元にあった小石に足が当たる。
音は下水道内を反響する。

「....!」

予想以上に大きな音が出てしまい反射的に首を引っ込めるが別に隠れ直す必要も無いと気付き、もう一度顔を出そうとする。
しかし...

「ま、魔物!?......鈴織、君...!!」
「分かっています。少しの間我慢して下さい。...『麻痺(パラライズ)』」

チリンと、鈴の音が下水道内に反響する。
バチっと痺れる感覚のあと、哀檻の体に力が入らなくなる。

「あ...あぁ....うぁ」

声が出ない。

「効果を確認する余裕はありません。急ぎます。」

タッタッ----と足音が遠退いていく。

「まっ、......て...」

哀檻の小さな声は水の流れる音にかき消された。
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