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第四章 蛟竜雲雨
二十一
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漆山での喧騒が止んだ。勝敗は見るまでもなかった。
誰かが「抜け駆けか」と言った。そうでないことを信長は知っていた。
櫓に雨が打ちつけている。信長はしばらく漆山を眺めていたが、風に揺られた松葉からざっと降る飛沫をかぶるとようやく兵たちの方を振り向いた。
「中島砦へ行こう」
何ものに揺さぶられることのない平坦な声だった。
「信長さま、お待ちなさい。中島砦へ向かうったって、一体どうやって向かわれるつもりです?」
恒興が強い口調で訊ねた。
「知っているでしょう、中島への道は泥沼に囲われた細い一本道。軍勢は一列の縦隊で進むしかない。だが、それじゃあ、敵にこちらが寡兵だと教えるようなものだ」
信長の作戦は元より兵数を恃みとしていない。退いていく今川軍を追撃、強襲するという単純なものだが、恒興にさえそれははっきりとは伝わっていなかった。主君への忠義と信頼はあれども、そこから生み出される結論は一様ではなかった。
「では、兵を多く見せれば、良ろしいか」
それが証拠に、二人の背後から、髭の大男がやおら進み出てぶっきらぼうに口を挟む。勝家である。
背後に初夏の蛍を思わせる光の行列が浮かんでいる。五〇〇人ほど、笠を被った者たちが手に松明を掲げて並んでいるのだ。信長の常備軍ではない。
「石頭のキサマが、そのような小細工を覚えるとはな」
「猪口才とお笑いになられますかな。だが、戦争は勝たねばならぬ」
勝家の引き連れるのは熱田の町人たちだった。勝家は、信長を追いかけてきた熱田の野次馬たちを統率し、兵を水増すための策に仕立て上げたのだ。松明の明かりは霧雨のなかに乱反射し、遠く、何処までも続いているかのように山林のなかに煌めいていた。
「お供つかまつる」
「好きにしろ」
恒興はいかにも納得していないような顔で、むすっとしていた信長はそれを一瞥することもない。馬に跨ると、政綱、長秀と呼びつけ「敵軍を見失うな」と尾行の命を発してこれを先行させた。
信長本隊二五〇〇は善照寺砦を出立し中島砦へと向かった。とはいえ、そのうちの五〇〇は熱田の町人たちだから、戦闘のできる者は二〇〇〇にも満たなかった。一方で、待ち構える井伊直盛の殿軍は、義元本隊から分離した部隊と合流し、信長軍を迎え撃つべく、漆山から高根山を目指している。彼らは、高根山に着陣したとき、六〇〇〇の大軍となる。
増水を始めている川を一挙に渡り、信長軍は中州に築かれた中島砦へ雪崩れ込む。
最前線の砦に入り、信長は眼前に退いていく直盛の殿軍を姿を直に見た。まさに今、漆山からの北側の川沿いの道を東へ進んでいる。高根山に着陣する前だがすでに兵数は織田軍を凌駕している。これを目にした熱田の町人たちは、今更に恐ろしくなったのか、一人また一人と逃亡を始めてしまった。勝家が怒号を上げて引き留めるようとするが、信長は「必要ない」と取り合わなかった。それどころか、勝家に、何故か、彼らを率いて熱田に帰るように命じた。
さて、始終を黙って見ていた可成や秀貞たちも、いよいよ信長に物申した。信長の馬の前に立ちふさがり、
「敵の姿は知れました。が、それは、敵からも我らの姿が筒抜けになっているということでしょう。さて、敵は我々を返り討ちにせんと新たな陣所を構えるでしょうな。いかに進むおつもりですかな」
「殿が強いことはこの可成、重々承知しております。だが、やぶれかぶれに戦うというのなら勝算は低い。義元を前に熱くなっているようにも見えます。もし、お考えをお話くださらなければ、私も、命を懸けてあなたをお止めしなければいけない」
各々縋りつくように止めた。
信長はすこし疲れたように笑った。それから、「ほかの者も、よく聞けよ」と小さく話し始めた。
「海道一の弓取りと、その名を馳せる今川義元が、何故、あのような大軍で現れ、そして退いて行くのか、キサマらに分かるか? オレには分かっている。
今川の兵は、宵に腹ごしらえをし、夜通しの行軍で大高へ行き、丸根・鷲津両砦に手を焼いた、今にも倒れそうなフラフラの兵さ。奴らには、オレたちに正面から戦って勝つ自信などない。オレが、いつ、何処から、どれくらいの軍勢で決戦に出てくるか、義元には予測が立てられなかったことだろう。だから、大軍なのだ。
義元は大軍が無ければ、怖くて尾張まで来られなかった。大は小を兼ねるというが、戦においてはそうじゃない。山間の道を大軍で行くのには時がかかる。進むのも、退くのも、一筋縄でないかない。わざわざ立ち止まってオレたちを迎え討たんと鷹揚な撤退戦を演じているのは、そうでもしないと、背後を一方的にやられる危険に今さらながら気付いたからだろう。
だが、どうだ。そうやって戦わされるすべてが、疲弊したフラフラの兵なのだ。こちらはどうだ、全員が新手だ。
『勝敗の運は天にある』。
大高城を包囲すれば、業を煮やした義元は大軍を派遣するに違いない。オレはそう考えた。これはオレが嗾けた戦なんだ。果たして遠征してきた今川の大軍は、いよいよ慣れない土地に縮こまり、イタズラに辺りをウロウロしていやがる。鷲津・丸根の両砦の奮戦で敵は大いに疲弊している。賢しい竹千代も大高に籠り切りで、出て来る様子はない。今川義元に挑むのに、これ以上の好機が、――これ以上の天雲がどこにあるかッ。
断言しよう。オレたちが襲い掛かれば、敵は必ず退く。逃げ腰の兵隊なんだ。何も恐れることはない。退いたならこれに食らいつき、二度と離れるな。飢えた野犬のように、噛みついて、逃がすな。首も、武具も、決して分捕るなよ。首などぶら下げていてはキリがないほどに討ち尽くしてしまうからな。見せびらかす必要はない。この戦に加わった者は、それだけで、末代までの名誉を得るとこのオレが保証しよう。いいか、ただ一心に敵を討てッ。」
風が後ろからザアと吹き荒れる。信長の言を徹頭徹尾理解できた者は少なかったかもしれない。
『果たして、戦の勝ち負けとはそういうものだろうか?』
そう思った者も居たことだろう。けれども、言葉を越えて武士を戦場に駆り立てるのは大将の闘気である。
『この大将は、逃げ出さない。この大将は、きっと負けない』
そう思わせる何かが、この時の織田信長にはあった。
兵数の不利をものともしない。今まであらゆる劣勢に打ち勝ってきた事実が勇気となって、漠然とした死の不安を、もっと、大きく包み込んでいる。
中島砦の門が開く。川向こうに霧に包まれた漆山が聳えている。
川から数名の兵士がよろよろと現れ、砦へ近づいてきた。信長を見つけ、その馬に縋りついく彼らは、壊滅した千秋隊の生き残り・利家と数名の仲間たちだった。
――
正光寺砦を今川軍に明け渡した季忠たちは中島砦まで後退し、汚名返上の機会を待っていた。後・黒母衣衆として活躍する佐々成政の兄・政次も、そして、出仕停止を命じられながら勝手に合戦へ飛び込んだ利家も、中島砦に一堂に会していた。いずれも今川に一矢報いんとする血気盛んな若武者だ、死の覚悟は決まっているが、しかし、義元が漆山に陣取ると流石に腰が引けた。なすがままに押しつぶされていく丸根・鷲津の両砦を、彼らは見ているしかなかった。
――勝てない――
口に出さないまでも、誰もが考えずにいられなかったことだ。
「信長さまは、来られるだろうか」
季忠が呆けたようにぽつりと呟いた。
「何を。来るに決まっています」
反射的な利家の反駁に、季忠はすこし苦笑して答えた。
「いや、もう、来ぬ方が良いかもしれないと思ったのだ。漆山に陣を張る義元は、やはり信長さまを挑発している。砦を襲い、信長さまが自ら後詰に来たところを決戦に及ぶ腹に違いない。信長さまは強い。そんなことは知っているが、しかし、これでは――」
利家は、漆山を二度、三度見て、口をあんぐり開けた。季忠の言うことは的を射ているように思えた。利家だって信長を信じている。『何か、きっと策があるに違いにない』と、そう思ってはいるが、それでも、圧倒的な大軍を前にして主君の援軍を気楽に待ち望むほど、呑気ではあり得なかった。
鷲津・丸根の両砦が陥落した。信長は現れなかった。もし、今川勢が次に攻めかかってくるなら、利家たちの休む中島砦しかない。皆、自然と手に槍を握り固唾を飲んでいた。
ところが、今川勢は突如撤退を始める。殿軍だけをその中腹に残し、義元の本隊と思われる大部分は、山向こうへと瞬く間に姿を消した。
二つの思いが、季忠たちの胸に去来した。
――助かった。そして、負けた――
鷲津・丸根両砦を蹂躙した義元は、さらなる戦火を欲さず、中島砦へは攻め寄せなかった。命は生きながらえたが、それによって逆撃の機会はすでに失われた。彼らは、武士のジレンマに引き裂かれ、唐突に宙に放り出されたような心地になった。信長が現れなかった。それは、目の前で散ったあの両砦の無駄死にを意味した。そして、それを眼前に見ながら何もできなかった自分たちは、一体何だったのだろうか。立ち上がりかけた膝を、無気力が折った。
「信長さまが無事なら、良かったのだろう、きっと」
今川軍が漆山山頂から消えるのを見送って、季忠は心にそう呟いた。
ところが、その時、背後に地響きが鳴る。馬の蹄の折り重なった低音は、雷鳴のように季忠の胸にどろどろ轟いた。振り向けば、今まさに善照寺砦に織田木売の旗が翻った。
信長が来た。季忠、政次、利家だけではない、末端の兵たちまでもが、それを見て、自然と揃って立ち上がった。玉砕した両砦の凄絶な最期が、引き揚げていく今川勢のほくそ笑む光景が、現実と想像の垣根を越えてさまざまな想いの丈が、迸るように彼らの脳裏を駆けた。作戦など知らない。しかし、退いていく今川、それを追いかける織田が、目の前にある。それだけで、彼らは槍を取ることができた。彼ら自身が飲み込みかねていた武士の矛盾を、ぶつける絶好の機会を得たのだから。
「これより今川本隊へ突き進むッ」
即座に鬨の声が上がる。迷いはなかった。
季忠は微笑みながら利家に訊ねる。
「お前は、手柄を立て、出仕停止を解いてもらわなければならぬのではなかったか。いいのか、これは本当に死ぬぞ、きっと」
「ここで尻尾を巻いて帰っちゃあ、それこそ、信長さまの元には一生戻れない。せいぜい、良い恰好を見せつけてやりますよ」
「そうか」
いよいよ引き上げようかという漆山の直盛隊に、季忠率いるおよそ三〇〇の織田勢が、中島砦から突然の攻撃を敢行した。無謀だったが、本能で信長の策を感じ取ったのか、季忠は戦いの最中にこう叫ぶ。
「敵を退かすな。食らいつけ。信長さまが来られるまで、敵を決して離すな。熱田大明神の加護は我にありッ」
一人また一人と討ち取られていくなか、季忠は死を悟り、背中合わせで戦う利家に後事を託す。
「利家。お前なら、分かるだろう。彼奴らは川沿いに、東へちょうど鎌研の辺りへと退いて行く。私たちとの戦闘で、敵はさらに時間を費やしたことだろう。これだけの軍勢だ、退いていくだけでも、きっと楽じゃない。信長さまのお考えは分かった。伝えてほしいのだ。まだ、追いつける。まだ、戦える。織田は、まだ、勝てる、と」
そう言い残し、季忠は同輩の佐々政次と共に鬱蒼と茂る山林へ囮となって消えた。
利家は嗚咽をかみ殺し、数人の仲間たちと徒党を組んで中島砦へ逃亡した。背後に仲間たちの断末魔が折り重なって聞こえてくるのを振り切って、敵兵の手を掻い潜りながら、山を降り、川を泳いだ。
中島砦へ到着する頃、生き残っていたのは十数名のみだった。道すがら取った敵の首をぶら下げながら、利家は信長に季忠の最期を語った。
――
感涙にむせぶ者たちを信長は叱りつける。
「うつけが。泣くときではない。あらゆる屍に報いるのは、涙なんていい加減なものではあり得ないんだ。それは、オレたちの槍だろうッ』
正午を過ぎた頃、信長は中島砦を出撃する。
「サア、敵にも乱世を見せてやるぞ」
一路、鉄砲玉のように駆け抜ければ、追い風が背中を押してくれる。風はそのまま闘気となって溢れるようだ。
鎌研へ向かう途上で、先行していた長秀が飛び出し、信長に報告する。
「お待ちしておりました。敵はこの先の高根山に布陣しているようです」
「季忠をやった奴らだな。義元本隊はすでに退いたか?」
信長の問いを受け、長秀は言いにくそうに答える。
「それが、――斥候の掴んだことには、敵が高根山の山頂から段々に配した兵は、ざっと五〇〇〇を超えているとのことです。どうも、漆山を降りた殿軍は、高根山で義元本隊に合流したものとしか考えられませぬ。高根山には、義元本隊もまた、あるものと思われます」
――殿軍が漆山に残されたとき、義元本隊は高根山に移動した。これは、間違いない。高根山からなら漆山がしかと見えるだろうからだ。問題は、彼奴らがその後にどう動いたか、だ。もし、長秀の言う通りに、義元がそこに居るなら、これは好機と考えたい。だが、違うのではないか。そうだとしたら、むしろ、手強いのではないか。なぜなら、義元自らが乱戦の覚悟を決めて布陣していることになる。それは、もう逃げ腰の兵なんかじゃない。あの義元が、そんな博打を果たしてするのか?――
信長は目を閉じる。「考える」などという生易しい領域には、既にない。
寒風吹きすさぶ街道に出てからの軍勢の立ち往生など、まるでするべきではないとも分かっていた。
――決戦の覚悟は固めてきた。この日のために、練り上げた作戦も概ね機能している。そのうえ、家臣という犠牲を重ねて払い、とうとう、ここまで来たのだ。相手にどのような備えがあろうとも、後はもう、ぶつかるより他にない!――
信長は佩刀を抜き高く振り上げ、
「聞いたかッ。義元が居れば儲けものだな。高根山に陣取る今川軍に総攻撃をかけ、二度と、尾張に踏み込む気が起きぬよう、打ち滅ぼすぞッ。いざ、――」
決意を新たに、号令を発さんとしたが、その時だった。
突風が吹いて信長の宣言を妨げた。途端、雨風が嵐となって一挙に猛り始めた。
さらに、
「申し上げますッ。これより半刻ほど前、高根山から東へ退いて行った軍勢があるとのこと、その数、およそ三〇〇〇――」
新たなに情報を得て戻った政綱が信長に向けて懸命に叫んだ。
黒雲が雷を呼び、雨を雹に変える。一面は真っ白い靄に包まれ、視界は足元のほかに何も見えなかった。政綱の報告も、その唇が切れんばかりに叫び続けてようやく信長に声を届かせたが、尚も轟音は絶え間なく、風の音か、はたまた雷の音か、その区別も出来ないほどに唸っている。
「違う」
――高根山に大軍を残し、後方へ退いた三◯◯◯の兵隊とは、義元本隊に違いない。やはり、敵のすべてが高根山に集結しているのではない! 義元は本隊から兵を割き、殿軍を主力に挿げ替え、オレたちを迎え討たんとしているのだ。一方、万一を考え、自らは決してその戦に加わらない。冷静な野郎だ。この冷静さが今川義元だ。
何処であろうと、山頂に布陣してさえいればこちらの行軍は筒抜けだ。相手に動きが見られている以上、織田としても正面からぶつかる腹を決めるより他にない。そうだ。オレもそのつもりでいたし、奴もそれを待ち受けていた。
オレは奴を、奴はオレを、正確に読んでいた――
「この、嵐を見るまでは――ナ」
信長は、突如、進軍路を一変させた。
後は一挙に高根山を登って直盛隊へ攻めかかるだけという土壇場で、それを止めた。
雨に紛れ、間道を迂回したのだ。
義元は、正面から勝負を仕掛けて来るしかない信長本隊を、兵を分け与えた直盛隊に高根山で迎え討たせるつもりでいた。信長もまた、それを承知で、自軍の底力と敵軍の疲弊を恃み、正面からの一大決戦を挑むつもりで来た。
その定められた戦いの運命を、嵐が、いや、信長が変えた。自分たちには追い風でありながら、目も、耳も、奪い去ったこの雷雨に、信長は一つの大勝負を託した。
『これだけの嵐だ。追い風でもこの有様なんだ。向かい風に布陣した彼奴らにオレたちの姿が見えるはずがない。そして、義元本隊は、高根山より東のどこかの山に、兵を減らした状態で居る』
この瞬間にのみ、信長は、義元本隊を奇襲する機会を得た。風雨に紛れ間道を進み、敵の目に一切止まることなく、高根山の殿軍を奇術のようにすり抜けた。その背後に居るはずの義元本隊を目指して。
信長はよく知っていた。数千という軍勢を構えられる山など、近辺にそれほど無いことを。信長は知っていた。高根山から東に退いていく義元が、次に着陣するに相応しいその場所を。幼い頃より尾張国の野山を日がな駆け回ってきた遠い日の想い出は、まるで、今日のこの日のこの戦のために行われていたかのように感じられた。凄絶な嵐のなかにありながら、信長軍はまるで道を見失わずに突き進む。
近辺に村は少なかった。稲作に向かない丘陵続きの土地は、およそ人の住みやすい場所ではない。沼地と繁みが好き放題に広がる野山は、南北朝時代に落ち武者が隠れ住み開いたと伝承される一つの隠れ里だった。清洲や駿府の民に聞いたら、一体、誰が知っているだろうかという寒村だが、しかし、信長は、その村に素朴に聳える小山の名までを知っていた。
「桶狭間山だな、義元」
誰かが「抜け駆けか」と言った。そうでないことを信長は知っていた。
櫓に雨が打ちつけている。信長はしばらく漆山を眺めていたが、風に揺られた松葉からざっと降る飛沫をかぶるとようやく兵たちの方を振り向いた。
「中島砦へ行こう」
何ものに揺さぶられることのない平坦な声だった。
「信長さま、お待ちなさい。中島砦へ向かうったって、一体どうやって向かわれるつもりです?」
恒興が強い口調で訊ねた。
「知っているでしょう、中島への道は泥沼に囲われた細い一本道。軍勢は一列の縦隊で進むしかない。だが、それじゃあ、敵にこちらが寡兵だと教えるようなものだ」
信長の作戦は元より兵数を恃みとしていない。退いていく今川軍を追撃、強襲するという単純なものだが、恒興にさえそれははっきりとは伝わっていなかった。主君への忠義と信頼はあれども、そこから生み出される結論は一様ではなかった。
「では、兵を多く見せれば、良ろしいか」
それが証拠に、二人の背後から、髭の大男がやおら進み出てぶっきらぼうに口を挟む。勝家である。
背後に初夏の蛍を思わせる光の行列が浮かんでいる。五〇〇人ほど、笠を被った者たちが手に松明を掲げて並んでいるのだ。信長の常備軍ではない。
「石頭のキサマが、そのような小細工を覚えるとはな」
「猪口才とお笑いになられますかな。だが、戦争は勝たねばならぬ」
勝家の引き連れるのは熱田の町人たちだった。勝家は、信長を追いかけてきた熱田の野次馬たちを統率し、兵を水増すための策に仕立て上げたのだ。松明の明かりは霧雨のなかに乱反射し、遠く、何処までも続いているかのように山林のなかに煌めいていた。
「お供つかまつる」
「好きにしろ」
恒興はいかにも納得していないような顔で、むすっとしていた信長はそれを一瞥することもない。馬に跨ると、政綱、長秀と呼びつけ「敵軍を見失うな」と尾行の命を発してこれを先行させた。
信長本隊二五〇〇は善照寺砦を出立し中島砦へと向かった。とはいえ、そのうちの五〇〇は熱田の町人たちだから、戦闘のできる者は二〇〇〇にも満たなかった。一方で、待ち構える井伊直盛の殿軍は、義元本隊から分離した部隊と合流し、信長軍を迎え撃つべく、漆山から高根山を目指している。彼らは、高根山に着陣したとき、六〇〇〇の大軍となる。
増水を始めている川を一挙に渡り、信長軍は中州に築かれた中島砦へ雪崩れ込む。
最前線の砦に入り、信長は眼前に退いていく直盛の殿軍を姿を直に見た。まさに今、漆山からの北側の川沿いの道を東へ進んでいる。高根山に着陣する前だがすでに兵数は織田軍を凌駕している。これを目にした熱田の町人たちは、今更に恐ろしくなったのか、一人また一人と逃亡を始めてしまった。勝家が怒号を上げて引き留めるようとするが、信長は「必要ない」と取り合わなかった。それどころか、勝家に、何故か、彼らを率いて熱田に帰るように命じた。
さて、始終を黙って見ていた可成や秀貞たちも、いよいよ信長に物申した。信長の馬の前に立ちふさがり、
「敵の姿は知れました。が、それは、敵からも我らの姿が筒抜けになっているということでしょう。さて、敵は我々を返り討ちにせんと新たな陣所を構えるでしょうな。いかに進むおつもりですかな」
「殿が強いことはこの可成、重々承知しております。だが、やぶれかぶれに戦うというのなら勝算は低い。義元を前に熱くなっているようにも見えます。もし、お考えをお話くださらなければ、私も、命を懸けてあなたをお止めしなければいけない」
各々縋りつくように止めた。
信長はすこし疲れたように笑った。それから、「ほかの者も、よく聞けよ」と小さく話し始めた。
「海道一の弓取りと、その名を馳せる今川義元が、何故、あのような大軍で現れ、そして退いて行くのか、キサマらに分かるか? オレには分かっている。
今川の兵は、宵に腹ごしらえをし、夜通しの行軍で大高へ行き、丸根・鷲津両砦に手を焼いた、今にも倒れそうなフラフラの兵さ。奴らには、オレたちに正面から戦って勝つ自信などない。オレが、いつ、何処から、どれくらいの軍勢で決戦に出てくるか、義元には予測が立てられなかったことだろう。だから、大軍なのだ。
義元は大軍が無ければ、怖くて尾張まで来られなかった。大は小を兼ねるというが、戦においてはそうじゃない。山間の道を大軍で行くのには時がかかる。進むのも、退くのも、一筋縄でないかない。わざわざ立ち止まってオレたちを迎え討たんと鷹揚な撤退戦を演じているのは、そうでもしないと、背後を一方的にやられる危険に今さらながら気付いたからだろう。
だが、どうだ。そうやって戦わされるすべてが、疲弊したフラフラの兵なのだ。こちらはどうだ、全員が新手だ。
『勝敗の運は天にある』。
大高城を包囲すれば、業を煮やした義元は大軍を派遣するに違いない。オレはそう考えた。これはオレが嗾けた戦なんだ。果たして遠征してきた今川の大軍は、いよいよ慣れない土地に縮こまり、イタズラに辺りをウロウロしていやがる。鷲津・丸根の両砦の奮戦で敵は大いに疲弊している。賢しい竹千代も大高に籠り切りで、出て来る様子はない。今川義元に挑むのに、これ以上の好機が、――これ以上の天雲がどこにあるかッ。
断言しよう。オレたちが襲い掛かれば、敵は必ず退く。逃げ腰の兵隊なんだ。何も恐れることはない。退いたならこれに食らいつき、二度と離れるな。飢えた野犬のように、噛みついて、逃がすな。首も、武具も、決して分捕るなよ。首などぶら下げていてはキリがないほどに討ち尽くしてしまうからな。見せびらかす必要はない。この戦に加わった者は、それだけで、末代までの名誉を得るとこのオレが保証しよう。いいか、ただ一心に敵を討てッ。」
風が後ろからザアと吹き荒れる。信長の言を徹頭徹尾理解できた者は少なかったかもしれない。
『果たして、戦の勝ち負けとはそういうものだろうか?』
そう思った者も居たことだろう。けれども、言葉を越えて武士を戦場に駆り立てるのは大将の闘気である。
『この大将は、逃げ出さない。この大将は、きっと負けない』
そう思わせる何かが、この時の織田信長にはあった。
兵数の不利をものともしない。今まであらゆる劣勢に打ち勝ってきた事実が勇気となって、漠然とした死の不安を、もっと、大きく包み込んでいる。
中島砦の門が開く。川向こうに霧に包まれた漆山が聳えている。
川から数名の兵士がよろよろと現れ、砦へ近づいてきた。信長を見つけ、その馬に縋りついく彼らは、壊滅した千秋隊の生き残り・利家と数名の仲間たちだった。
――
正光寺砦を今川軍に明け渡した季忠たちは中島砦まで後退し、汚名返上の機会を待っていた。後・黒母衣衆として活躍する佐々成政の兄・政次も、そして、出仕停止を命じられながら勝手に合戦へ飛び込んだ利家も、中島砦に一堂に会していた。いずれも今川に一矢報いんとする血気盛んな若武者だ、死の覚悟は決まっているが、しかし、義元が漆山に陣取ると流石に腰が引けた。なすがままに押しつぶされていく丸根・鷲津の両砦を、彼らは見ているしかなかった。
――勝てない――
口に出さないまでも、誰もが考えずにいられなかったことだ。
「信長さまは、来られるだろうか」
季忠が呆けたようにぽつりと呟いた。
「何を。来るに決まっています」
反射的な利家の反駁に、季忠はすこし苦笑して答えた。
「いや、もう、来ぬ方が良いかもしれないと思ったのだ。漆山に陣を張る義元は、やはり信長さまを挑発している。砦を襲い、信長さまが自ら後詰に来たところを決戦に及ぶ腹に違いない。信長さまは強い。そんなことは知っているが、しかし、これでは――」
利家は、漆山を二度、三度見て、口をあんぐり開けた。季忠の言うことは的を射ているように思えた。利家だって信長を信じている。『何か、きっと策があるに違いにない』と、そう思ってはいるが、それでも、圧倒的な大軍を前にして主君の援軍を気楽に待ち望むほど、呑気ではあり得なかった。
鷲津・丸根の両砦が陥落した。信長は現れなかった。もし、今川勢が次に攻めかかってくるなら、利家たちの休む中島砦しかない。皆、自然と手に槍を握り固唾を飲んでいた。
ところが、今川勢は突如撤退を始める。殿軍だけをその中腹に残し、義元の本隊と思われる大部分は、山向こうへと瞬く間に姿を消した。
二つの思いが、季忠たちの胸に去来した。
――助かった。そして、負けた――
鷲津・丸根両砦を蹂躙した義元は、さらなる戦火を欲さず、中島砦へは攻め寄せなかった。命は生きながらえたが、それによって逆撃の機会はすでに失われた。彼らは、武士のジレンマに引き裂かれ、唐突に宙に放り出されたような心地になった。信長が現れなかった。それは、目の前で散ったあの両砦の無駄死にを意味した。そして、それを眼前に見ながら何もできなかった自分たちは、一体何だったのだろうか。立ち上がりかけた膝を、無気力が折った。
「信長さまが無事なら、良かったのだろう、きっと」
今川軍が漆山山頂から消えるのを見送って、季忠は心にそう呟いた。
ところが、その時、背後に地響きが鳴る。馬の蹄の折り重なった低音は、雷鳴のように季忠の胸にどろどろ轟いた。振り向けば、今まさに善照寺砦に織田木売の旗が翻った。
信長が来た。季忠、政次、利家だけではない、末端の兵たちまでもが、それを見て、自然と揃って立ち上がった。玉砕した両砦の凄絶な最期が、引き揚げていく今川勢のほくそ笑む光景が、現実と想像の垣根を越えてさまざまな想いの丈が、迸るように彼らの脳裏を駆けた。作戦など知らない。しかし、退いていく今川、それを追いかける織田が、目の前にある。それだけで、彼らは槍を取ることができた。彼ら自身が飲み込みかねていた武士の矛盾を、ぶつける絶好の機会を得たのだから。
「これより今川本隊へ突き進むッ」
即座に鬨の声が上がる。迷いはなかった。
季忠は微笑みながら利家に訊ねる。
「お前は、手柄を立て、出仕停止を解いてもらわなければならぬのではなかったか。いいのか、これは本当に死ぬぞ、きっと」
「ここで尻尾を巻いて帰っちゃあ、それこそ、信長さまの元には一生戻れない。せいぜい、良い恰好を見せつけてやりますよ」
「そうか」
いよいよ引き上げようかという漆山の直盛隊に、季忠率いるおよそ三〇〇の織田勢が、中島砦から突然の攻撃を敢行した。無謀だったが、本能で信長の策を感じ取ったのか、季忠は戦いの最中にこう叫ぶ。
「敵を退かすな。食らいつけ。信長さまが来られるまで、敵を決して離すな。熱田大明神の加護は我にありッ」
一人また一人と討ち取られていくなか、季忠は死を悟り、背中合わせで戦う利家に後事を託す。
「利家。お前なら、分かるだろう。彼奴らは川沿いに、東へちょうど鎌研の辺りへと退いて行く。私たちとの戦闘で、敵はさらに時間を費やしたことだろう。これだけの軍勢だ、退いていくだけでも、きっと楽じゃない。信長さまのお考えは分かった。伝えてほしいのだ。まだ、追いつける。まだ、戦える。織田は、まだ、勝てる、と」
そう言い残し、季忠は同輩の佐々政次と共に鬱蒼と茂る山林へ囮となって消えた。
利家は嗚咽をかみ殺し、数人の仲間たちと徒党を組んで中島砦へ逃亡した。背後に仲間たちの断末魔が折り重なって聞こえてくるのを振り切って、敵兵の手を掻い潜りながら、山を降り、川を泳いだ。
中島砦へ到着する頃、生き残っていたのは十数名のみだった。道すがら取った敵の首をぶら下げながら、利家は信長に季忠の最期を語った。
――
感涙にむせぶ者たちを信長は叱りつける。
「うつけが。泣くときではない。あらゆる屍に報いるのは、涙なんていい加減なものではあり得ないんだ。それは、オレたちの槍だろうッ』
正午を過ぎた頃、信長は中島砦を出撃する。
「サア、敵にも乱世を見せてやるぞ」
一路、鉄砲玉のように駆け抜ければ、追い風が背中を押してくれる。風はそのまま闘気となって溢れるようだ。
鎌研へ向かう途上で、先行していた長秀が飛び出し、信長に報告する。
「お待ちしておりました。敵はこの先の高根山に布陣しているようです」
「季忠をやった奴らだな。義元本隊はすでに退いたか?」
信長の問いを受け、長秀は言いにくそうに答える。
「それが、――斥候の掴んだことには、敵が高根山の山頂から段々に配した兵は、ざっと五〇〇〇を超えているとのことです。どうも、漆山を降りた殿軍は、高根山で義元本隊に合流したものとしか考えられませぬ。高根山には、義元本隊もまた、あるものと思われます」
――殿軍が漆山に残されたとき、義元本隊は高根山に移動した。これは、間違いない。高根山からなら漆山がしかと見えるだろうからだ。問題は、彼奴らがその後にどう動いたか、だ。もし、長秀の言う通りに、義元がそこに居るなら、これは好機と考えたい。だが、違うのではないか。そうだとしたら、むしろ、手強いのではないか。なぜなら、義元自らが乱戦の覚悟を決めて布陣していることになる。それは、もう逃げ腰の兵なんかじゃない。あの義元が、そんな博打を果たしてするのか?――
信長は目を閉じる。「考える」などという生易しい領域には、既にない。
寒風吹きすさぶ街道に出てからの軍勢の立ち往生など、まるでするべきではないとも分かっていた。
――決戦の覚悟は固めてきた。この日のために、練り上げた作戦も概ね機能している。そのうえ、家臣という犠牲を重ねて払い、とうとう、ここまで来たのだ。相手にどのような備えがあろうとも、後はもう、ぶつかるより他にない!――
信長は佩刀を抜き高く振り上げ、
「聞いたかッ。義元が居れば儲けものだな。高根山に陣取る今川軍に総攻撃をかけ、二度と、尾張に踏み込む気が起きぬよう、打ち滅ぼすぞッ。いざ、――」
決意を新たに、号令を発さんとしたが、その時だった。
突風が吹いて信長の宣言を妨げた。途端、雨風が嵐となって一挙に猛り始めた。
さらに、
「申し上げますッ。これより半刻ほど前、高根山から東へ退いて行った軍勢があるとのこと、その数、およそ三〇〇〇――」
新たなに情報を得て戻った政綱が信長に向けて懸命に叫んだ。
黒雲が雷を呼び、雨を雹に変える。一面は真っ白い靄に包まれ、視界は足元のほかに何も見えなかった。政綱の報告も、その唇が切れんばかりに叫び続けてようやく信長に声を届かせたが、尚も轟音は絶え間なく、風の音か、はたまた雷の音か、その区別も出来ないほどに唸っている。
「違う」
――高根山に大軍を残し、後方へ退いた三◯◯◯の兵隊とは、義元本隊に違いない。やはり、敵のすべてが高根山に集結しているのではない! 義元は本隊から兵を割き、殿軍を主力に挿げ替え、オレたちを迎え討たんとしているのだ。一方、万一を考え、自らは決してその戦に加わらない。冷静な野郎だ。この冷静さが今川義元だ。
何処であろうと、山頂に布陣してさえいればこちらの行軍は筒抜けだ。相手に動きが見られている以上、織田としても正面からぶつかる腹を決めるより他にない。そうだ。オレもそのつもりでいたし、奴もそれを待ち受けていた。
オレは奴を、奴はオレを、正確に読んでいた――
「この、嵐を見るまでは――ナ」
信長は、突如、進軍路を一変させた。
後は一挙に高根山を登って直盛隊へ攻めかかるだけという土壇場で、それを止めた。
雨に紛れ、間道を迂回したのだ。
義元は、正面から勝負を仕掛けて来るしかない信長本隊を、兵を分け与えた直盛隊に高根山で迎え討たせるつもりでいた。信長もまた、それを承知で、自軍の底力と敵軍の疲弊を恃み、正面からの一大決戦を挑むつもりで来た。
その定められた戦いの運命を、嵐が、いや、信長が変えた。自分たちには追い風でありながら、目も、耳も、奪い去ったこの雷雨に、信長は一つの大勝負を託した。
『これだけの嵐だ。追い風でもこの有様なんだ。向かい風に布陣した彼奴らにオレたちの姿が見えるはずがない。そして、義元本隊は、高根山より東のどこかの山に、兵を減らした状態で居る』
この瞬間にのみ、信長は、義元本隊を奇襲する機会を得た。風雨に紛れ間道を進み、敵の目に一切止まることなく、高根山の殿軍を奇術のようにすり抜けた。その背後に居るはずの義元本隊を目指して。
信長はよく知っていた。数千という軍勢を構えられる山など、近辺にそれほど無いことを。信長は知っていた。高根山から東に退いていく義元が、次に着陣するに相応しいその場所を。幼い頃より尾張国の野山を日がな駆け回ってきた遠い日の想い出は、まるで、今日のこの日のこの戦のために行われていたかのように感じられた。凄絶な嵐のなかにありながら、信長軍はまるで道を見失わずに突き進む。
近辺に村は少なかった。稲作に向かない丘陵続きの土地は、およそ人の住みやすい場所ではない。沼地と繁みが好き放題に広がる野山は、南北朝時代に落ち武者が隠れ住み開いたと伝承される一つの隠れ里だった。清洲や駿府の民に聞いたら、一体、誰が知っているだろうかという寒村だが、しかし、信長は、その村に素朴に聳える小山の名までを知っていた。
「桶狭間山だな、義元」
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