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第四章 蛟竜雲雨
十三
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信長は、尾張の南東・笠寺一帯から今川勢力を駆逐し、後退させた。尾張国に今川方の拠点として残されたのは今や二つの要塞のみだった。
一つは、信長の家督継承と共に山口父子の手に落ちた鳴海城。南は黒末川という川が流れているがそれは名ばかりの入江で、満潮時には門まで海水が迫ってくる。北から東にかけては小山が続くので、いざ攻め取ろうとしたなら西より押し寄せる他なのだがそこも湿地が広がっているので、お世辞にも行軍には向いているとは言えない。今川の手に落ちてから実に七年、今でも信長が鳴海城を奪還できていないのにはそういう理由があった。今は亡き山口教吉が丹念に領民を懐柔したおかげで、兵糧の補給にも事欠いている様子がない。これを無理に攻めれば村木砦の戦いを凌いだ人死を出すことは明白だった。
もう一つは、鳴海城より南西へ一里も行かずに突き当たる大高城。しかし、ここでは同地の民衆の支持を得られずに常に兵糧に事欠く事態に陥っていた。鳴海からの兵糧を分けてもらわないと支配のままならない同城は、まるで親の手を離れられない赤子のようだった。
そこへ目を付けた信長はまずこの二城を分断しようと考えた。義元が動けない隙を狙いすまし、まずは鳴海城を付城で囲んだ。城から北へ一反も行かぬ丹下と呼ばれるところに古い屋敷跡があったのを改造しこれを砦とした。同地は、かつて戦ったかの赤塚の地よりも、さらに鳴海に接近している。さらに、城の東は、善照寺という古刹を押さえ、これをも砦に造り替える。南には中島という小さな村を拠点としてここにも要塞を築いた。極めつけは、南を流れる黒末川の川向こう、丸根・鷲津という二つの小山の山頂に砦を築き、これによって鳴海城と大高城との連絡を完全に遮断した。鳴海との連携が取れない以上、大高の落城は時間の問題だろうと誰もが考えた。
ところが、
「高橋郡などくれてやれ。進め。何としても、大高城を持ち堪えさせるのだッ」
三河の麒麟児・松平元康がそれを妨げる。次から次へ、あらゆる手練手管で、難儀な兵糧補給を一度や二度ではなく成し遂げる。これには信長も少々アテを外した様子で、
「結構な働きぶりだ。父祖の代から今川にも恨みあるものと踏んでいたが――これはダメだな。覚悟を決めてしまった者の動き方だ。調略の目は、もう、無いか」
尾張に人質として匿われていたあの時の、たった一度の邂逅に何かを信じていたわけでもなかったが、『それにつけても律儀な男だ』と信長は苦笑した。
「とにかく、竹千代の小僧に同じように何度もやられるのはつまらんだろう。敵が岡崎からくるなら簡単だ。城の南側に、そうだな、正光寺に一つ、それから、迂回することも出来ぬよう南西にも、氷上の辺りにもう一つ砦を築いてやれ」
丸根・鷲津・正光寺・氷上と、四つの砦が大高城を囲むように時計まわりにぐるりと築かれたなら、もはや鼠の入り込む隙すらもない。いかに元康といえど、これではもう働けない。見方によっては過剰とも捉えられかねないほどの念の入りようだった。
しかし、一見して揺るぎない織田軍の攻勢にも小さな亀裂が生じていた。
「正光寺、氷上の砦が出来れば、いったい大高城は労せず落ちるのだろうか」
「馬鹿言え。松平の子倅が高橋郡を焼かれても助けにきた城だぞ。それをあの義元が、いつまでもぼやっと見ている訳があるまい」
「すると、また戦か」
「せっかく尾張が平らかになってきたというのに」
「ただの戦なら有難いぐらいだ。義元は三河を抑えつつあるという。小さな城を落として終わりとはいかねえよ。虎の尾を踏むだけのことだな」
織田信長の親衛隊は強固な絆で結ばれている。信長の鶴の一声、命令一下、疾風の迅さで事に当たる優秀な若者が粒ぞろいだったが、その優秀さ故に信長が彼らを重用しすぎるためか、その埒外の家臣たちに不平不満が募りつつあった。とりわけ、かつて信長への謀叛を働いた者たちにはそれが顕著であった。汚名返上にどれだけ戦って手柄を上げれば良いのか知れない。それも勝ち戦ばかりならまだ良い。最近では、岩倉城の攻囲戦も、高橋郡の焼き討ちも、相対的には苦難の少ない戦だった。ところが、もし、義元が大軍を率いて現れたならどうだろう。一か八かの決戦で、なおかつ、出世の見込みが薄いなら、それは危険に見合わない戦争だ。命を賭すような価値がない。そういう声が、ささやかながら出始めていた。
やがて彼らは数十名の徒党を成した。そして、信長の異母兄・信広の元を訪れて言う。
「信長公に意見できるのは、あなたさまを置いて他にありません。今川とは有利な条件で和議を結ぶべきなのです。もし、事が決裂したときには、私どもはあなたさまと共に信長公と一戦に及ぶ覚悟があります」
とってつけたような甘い言葉を用いて泣きついてみせたが、これがまったく裏目に出る。かつて美濃と図って謀叛した信広だが、赦免された後はすでに信長の才覚を十全に認めていた。この期に及び家督簒奪の野心などは持ち合わせていない。何よりも信勝の顛末を見ているし、仮に野心なるものがあったとしても、目の前の者たちが臆病風に吹かれただけの輩であることは明々白々で、そんな者たちからの誘いなど気分が良くない。一戦に及ぶ覚悟があるなら、然るべき時に自分に味方しておくのが筋だが、そうしなかったのは覚悟がなかったからに他ならない。信広に追い返された彼らは、舌の根も乾かぬうちに、今度は信次に同じことを嘆願した。信次は、今となっては信長の唯一人の叔父であるが、しかし、これはそもそも人選からして誤っていた。その昔、信長の実弟・秀考を誤射して出奔した経緯を持つ信次は、その境遇から自らを救い出してくれた信長に恩はあれども恨みなどは毛ほどもないのだから。
進退に窮した一党は、いよいよ最期の頼みの綱としてあの男に白羽の矢を立てた。
「なるほど。話は相分かった。貴殿らの言うところはおおよそ間違ってはいない。大高に鷲津・丸根の両砦を築けば義元は必ずやこれを救援に現れるだろう。一帯は文字通りの血の海の決戦場となる。生易しい戦は、待ってはいないであろうな」
元、織田家筆頭家老・林秀貞その人である。
秀貞は、稲生の戦いでの翻意を赦免されてからというもの、家中の表舞台からはすっかりその姿を消してしまっていた。秀貞だけではない。柴田勝家も同様である。周囲の目には、信長から露骨な報復人事を行われたとしか思われぬ有様だったが、それだけに、一党から秀貞への期待は強いものがあった。
「さすがは林さまだ、お話が早い。そうです、今川との戦などは土台が馬鹿げています。信長公はまだお若いから、些か気が勇んでおられるご様子ですな。取巻きの連中についても、悪いが若輩です。信長公の言うことに唯々諾々と従うばかりで……これは果たして本当の忠義で呼べるものではございますまい。運よく連勝を続けているものだから、無理もない、ハハ、彼らはおそらく気付いておらぬのでしょうな。大高攻めがいずれ義元の大軍を呼び寄せてしまうことに。林さまほどの慧眼が彼らにはないのですよ。林さまがお立ちになるのなら、我らは信長公と一戦に及ぶ覚悟でございますよ、ええ」
経典を諳んじるかのようにつらつらと吐き出される言葉は淀みなく、舌がまわって仕方ない。秀貞が味方になればこれは百人力である。自分たちより弁舌も立つので、今度は秀貞を伴って信広らを説得に向かおうなどと、夢見心地の一党だったが、――
「ふ。めでたい者たちだ」
秀貞は誰に言うでもなく、可笑しいのか苦笑して漏らすように言った。
「は、それは、その誰が、どういった――?」
「直接、軍議に参加した者の理解度がその程度では、信長さまも頭が痛いだろう。なるほど、上に立つというのは楽ではないということか。信長さまは元より、殿に付き従う者たちも、貴殿らが思いつくことなど全て承知に決まっていよう。そのうえで、義元との決戦に挑もうとしているに相違ない。分からぬか。敵の目に最もつくところへ砦を築き、挑発し、敵の主力を同地へ誘い込む。かつて信長さまが稲生原で弟や柴田に用いた戦法と似ている。大高城はともかく、鳴海城を落とすには後詰の可能性を完全に潰しておかなければならないからだ。そのために、今川の主力をあえて呼び込み、これを叩き、二城の士気を削ぐ。大方はこういう作戦であろう」
秀貞の鋭い指摘に晒されても、彼らは一時には、その言い分を信じ切ることが出来なかった。何が秀貞と彼らを隔てるのか。それは、謀叛をやり切った者とそうでない者の違いだった。彼らは謀叛に加担しつつも、知らぬうちに負け、知らぬうちに許された者たちだった。無意識のそこには、未だに「あのうつけが」という蔑視が張り付いたままで、信長の良さも悪さも、実は大して分からぬ亡霊だった。
「しかし、信長――公には、その、いかなる策がおありなのですか。それをお教えいただかなければ、従える者も、従えぬのではないか、と、私どもは――」
「さあな。そんなものは信長さまのみぞ知ることだ。ただ、これだけは言えよう。私が当主なら、それを丁寧に説明してもらえぬだけですぐに考えもない邪魔立てを働こうとする者らに、あえて重要な作戦の根幹を話しはせぬということよ。命の覚悟がないなら、じっとしていなさい。謀叛などという大事を口にしながら、自らの立場すら明確にできぬ者の居場所など、今にこの家からはなくなるぞ。ふふ」
秀貞は笑った。珍しいことだが、思えばすべては自嘲であったのかもしれない。
――
三年前のこと、弘治四年(一五五六年)十二月、稲生の戦いが終わり、那古野城は開城した。林秀貞は信長と談判した。
信勝を奉戴した謀叛は、その軍事の主力に柴田勝家を据えていたが、図を描いたのは林兄弟であった。信勝や勝家がそれを滞りなく実行に移すことができたのも、すべては林秀貞という、かつて信長に一番家老として付けられたこの男が関係していたためである。弟・道具が稲生原で信長自身の手によって討ち獲られた以上、その責任の最も重いのはこの男だろうと目されていた。
秀貞は、冷たい板縁に、皺の通った額を押し付けて平伏して信長を待っていた。
やがて現れた信長は誰も連れていなかった。信長は唐突に話した。二人だけだった。
「さて、林秀貞。オレにはキサマを庇う理由がない。こういう言い方はトンチのようで好きではないが、キサマの謀叛は、実は、ずいぶん早いな。今回のことは勝家たちが加わったので乱に発展したまでのことだが、キサマがオレに見切りをつけたのは、まだ、オレが当主になるよりもずっと昔のことだろう。家中にはその得意な弁舌で以てオレの無能を触れ回り、一方では、常に中立な風を装ってきた。卑劣といえば、 卑劣だな」
「返す言葉もございません。もはや、この腹一つで事が収まるとは考えておりませぬ。が、誠に勝手ながらも、何卒、息子たちに咎が及ばぬ処置を望むものです」
「オレは憐れみで何かを決めはしない。分かっているだろう」
「はい」
秀貞にはそれしか言うことがなかった。
稲生原に林道具、柴田勝家が敗北したうえでは、戦争の継続は望むべくもない。一早く那古野城を開城したのも、抵抗の無駄を悟ったからだ。これ以上、末端の兵士たちが無駄な血を流すことはない。開城で何かが許されるなどと思っていたわけではない。ただ、武士の型通りに切腹を遂げ、一族の助命嘆願を頼むほかになかったのだ。だが、信長はそれを嫌った。
「まったく頭から爪先までつまらん男だ。死に際しても型を貫くつもりか。それでキサマは本当に満足か。腹の内を、最期まで、誰にも見せず、企みも野望もあったはずなのに、敗れればそれまでだと? 立派ことだ」
秀貞は沈黙する。彼は今、自らが信長を恐れ通してきた理由に対峙させられている。目の前に迫ってくるのは、剥き出しの感情である。これに照応させられる言葉を、秀貞は持ち合わせていない。いや、言葉ではそもそもダメなのだ。弁舌とは所詮、人の表現の表層を捉えて操る芸事の一種に過ぎない。いくら達者になろうとも、論理を捨てて迫りくる感情という名の火の手には、まるで有効ではないからだ。
「どうした。黙りこくって。そんなに静かな男ではないだろうッ。格好つけも大概にしろッ。サア、オレを殺してどのように家中を治めるつもりだったのか、聞かせてみろ。そうだ、こうしてやろう。オレに言いたいことがあるだろう。それを、今ここで全て絞りつくせ。そうしたなら、一族の罪は問わない。さあ、何でも言ってみろッ」
自分の人生のすべてが無効化されたかのように秀貞は感じた。
ここまで言われ、信長に従う義理はない。一計が思い浮かんだ。
――この場を脱し、家中の者たちを集め、その眼前で腹を切ってやろう。その覚悟を以て、一族の助命嘆願を涙ながらに訴えるのだ。さすれば、信長もおいそれとは手を出せまい。降伏のうえに切腹した者の一族を処刑したとあっては、外聞が悪い。それに、未だに降伏の決意を固めていない信勝や勝家たちを大いに悩ませることにもなるだろう――
これは、いわば弾正忠家の未来を人質に取った脅迫だった。林秀貞という男の生涯を貫く最期の計略の出来としては、きっと、及第点だった。
しかしながら、どういうことだろうか、秀貞は思いついたこの一計を呑み込んで、声を荒げてしまう。
「何をッ。先刻から黙って聞いておれば、好き勝手を言いおるわ。もうよいッ。それほど、聞きたいと仰るならば、お耳に入れて差し上げよう。
物心ついてから始まった奇行に次ぐ奇行、信秀公はあなたを大器だなどと何かと庇っておられたが、当のあなたはそれすら知らなかったのでしょうな。我らはあなたが村で呆けて遊んでいる間も、ずっと先を見据えてきたのですッ。武士にとっては家が第一。だから、信秀公のような傑物が続いて当主となることはあり得ないと、我らは常々考えていたのです。我らに出来ることとは、信秀公の遺したものを受け継ぎ、それが出来る限り失われぬよう努めること。そのために、隣国の斎藤や今川とは事を荒立てぬようにと考えてきましたッ。
だから、謀叛をしたのだ。信勝さまも、柴田勝家も、知ったことではない。さしたる身分でもない私を取り上げてくださった信秀公の恩に報いるために、私はその跡取りに背いてでも、この家を存続させなければならぬッ。そのことだけに、この頭を使ってきた。私は戦えぬ。槍働きは何一つできぬのです。だが、この頭がある、口先がある。この謀叛は、一から十まで全て私が煽動したものです。あなたの力を見誤っていた、イヤ、見くびっていたのは確かですがね。倒せるだろうと考えましたよ。ハッハッハ。だが、これがものの見事に間違っていた。だが、それもこれも、やってみなければわからなかったことです。悔いならあります。馬鹿をしました。けれども、私は、私の失敗と死に納得しております。
苦し紛れにもう一つ。戦争に先だって、あなたが秀俊さまと那古野城を訪れた際、その命を助けたのは、何を隠そうこの私でしょうが。あの狭い城内で、「一息に殺してしまおう」と私に持ち掛けた弟を退けて、私はあなたの命を救ったのです。思えば、あそこであなたさまを殺してしまっていたなら、すべては我らの勝ちであったかもしれませぬな。
弟も死にました。私には何も残らなかった。だが、きっと、あなたにとっては、これは始まりなのでしょう。美濃に三河に大敵を抱え、なおも戦争に邁進する。まるで正気の沙汰とは思われぬ。果たして、どこまでそれが継続できるか、どこまであの小僧たちがあなたに付き従うか、この林佐渡守秀貞も、地獄で見届けさせてもらいましょうッ」
もう若くはない身体であまり一息に話したものだから、肩で息をしなければならなかった。気付けば汗をかいていた。秀貞はすでに死んだ気でいた。一族のことも、何故だか、半ば諦めてしまった。信長に打ち据えられることで、何か戦場を駆け回ることの出来なかった自分の情けなさをどうにか払おうとしたのかもしれなかった。
けれども、信長の裁定はそれを許さないものだった。
「地獄からじゃ少し遠いだろう。生きたまま、このオレの弾正忠家を見届けるといい」
信長はそう言ってあっさりと秀貞を赦免してしまったのだ。
胸にぽっかりと穴が開いたように、秀貞は脱力した。これから何をすればいいのか、皆目分からなかった。けれども、日々を無為に老人のように暮らす中で、秀貞の心には信長と談判する前には無かった、か細いながら、しかし、確かに熱い、灯のようなものが感じられるのだった。それは、秀貞自身が決して口にすることがないと思われる、希望と呼ばれるものだったかもしれない。前途は血に染まっている。楽な道は潰えている。だが、しかし、
――この信長という男に、自分の才覚を加えたなら一体どんなことができるだろう――
そんな楽しみが、秀貞がぼんやりと見据えた新たな未来に絡みついて離れないのだった。
――
「そうして、キサマはその者たちを帰したというのか」
秀貞からの報告を受けて、信長はどこか楽しそうだった。
「ハ。勝手ながら私の裁量で処置をいたしました。かの者たちの名前と顔はすべて覚えておりますので、もし、捕えて差し出せと申しますなら、今すぐにでも」
「いや、いいよ」
秀貞は彼に談判してきた人間にこう語りかけて帰したのだ。
『今日の話は聞かなかったことにしよう。アレは遠くから見ていると分からぬ男だ。もう少し、近くでしっかりと見なさい。ゆっくりでいい。我らの殿は、見ていると退屈しない男だぞ』
かくして家中に再び蠢動していた火種は、秀貞の一言で未然に少しずつ消滅していった。
彼が信長の元でその官吏としての才覚を再び奮うのも、そう遠い話ではないだろう。
一つは、信長の家督継承と共に山口父子の手に落ちた鳴海城。南は黒末川という川が流れているがそれは名ばかりの入江で、満潮時には門まで海水が迫ってくる。北から東にかけては小山が続くので、いざ攻め取ろうとしたなら西より押し寄せる他なのだがそこも湿地が広がっているので、お世辞にも行軍には向いているとは言えない。今川の手に落ちてから実に七年、今でも信長が鳴海城を奪還できていないのにはそういう理由があった。今は亡き山口教吉が丹念に領民を懐柔したおかげで、兵糧の補給にも事欠いている様子がない。これを無理に攻めれば村木砦の戦いを凌いだ人死を出すことは明白だった。
もう一つは、鳴海城より南西へ一里も行かずに突き当たる大高城。しかし、ここでは同地の民衆の支持を得られずに常に兵糧に事欠く事態に陥っていた。鳴海からの兵糧を分けてもらわないと支配のままならない同城は、まるで親の手を離れられない赤子のようだった。
そこへ目を付けた信長はまずこの二城を分断しようと考えた。義元が動けない隙を狙いすまし、まずは鳴海城を付城で囲んだ。城から北へ一反も行かぬ丹下と呼ばれるところに古い屋敷跡があったのを改造しこれを砦とした。同地は、かつて戦ったかの赤塚の地よりも、さらに鳴海に接近している。さらに、城の東は、善照寺という古刹を押さえ、これをも砦に造り替える。南には中島という小さな村を拠点としてここにも要塞を築いた。極めつけは、南を流れる黒末川の川向こう、丸根・鷲津という二つの小山の山頂に砦を築き、これによって鳴海城と大高城との連絡を完全に遮断した。鳴海との連携が取れない以上、大高の落城は時間の問題だろうと誰もが考えた。
ところが、
「高橋郡などくれてやれ。進め。何としても、大高城を持ち堪えさせるのだッ」
三河の麒麟児・松平元康がそれを妨げる。次から次へ、あらゆる手練手管で、難儀な兵糧補給を一度や二度ではなく成し遂げる。これには信長も少々アテを外した様子で、
「結構な働きぶりだ。父祖の代から今川にも恨みあるものと踏んでいたが――これはダメだな。覚悟を決めてしまった者の動き方だ。調略の目は、もう、無いか」
尾張に人質として匿われていたあの時の、たった一度の邂逅に何かを信じていたわけでもなかったが、『それにつけても律儀な男だ』と信長は苦笑した。
「とにかく、竹千代の小僧に同じように何度もやられるのはつまらんだろう。敵が岡崎からくるなら簡単だ。城の南側に、そうだな、正光寺に一つ、それから、迂回することも出来ぬよう南西にも、氷上の辺りにもう一つ砦を築いてやれ」
丸根・鷲津・正光寺・氷上と、四つの砦が大高城を囲むように時計まわりにぐるりと築かれたなら、もはや鼠の入り込む隙すらもない。いかに元康といえど、これではもう働けない。見方によっては過剰とも捉えられかねないほどの念の入りようだった。
しかし、一見して揺るぎない織田軍の攻勢にも小さな亀裂が生じていた。
「正光寺、氷上の砦が出来れば、いったい大高城は労せず落ちるのだろうか」
「馬鹿言え。松平の子倅が高橋郡を焼かれても助けにきた城だぞ。それをあの義元が、いつまでもぼやっと見ている訳があるまい」
「すると、また戦か」
「せっかく尾張が平らかになってきたというのに」
「ただの戦なら有難いぐらいだ。義元は三河を抑えつつあるという。小さな城を落として終わりとはいかねえよ。虎の尾を踏むだけのことだな」
織田信長の親衛隊は強固な絆で結ばれている。信長の鶴の一声、命令一下、疾風の迅さで事に当たる優秀な若者が粒ぞろいだったが、その優秀さ故に信長が彼らを重用しすぎるためか、その埒外の家臣たちに不平不満が募りつつあった。とりわけ、かつて信長への謀叛を働いた者たちにはそれが顕著であった。汚名返上にどれだけ戦って手柄を上げれば良いのか知れない。それも勝ち戦ばかりならまだ良い。最近では、岩倉城の攻囲戦も、高橋郡の焼き討ちも、相対的には苦難の少ない戦だった。ところが、もし、義元が大軍を率いて現れたならどうだろう。一か八かの決戦で、なおかつ、出世の見込みが薄いなら、それは危険に見合わない戦争だ。命を賭すような価値がない。そういう声が、ささやかながら出始めていた。
やがて彼らは数十名の徒党を成した。そして、信長の異母兄・信広の元を訪れて言う。
「信長公に意見できるのは、あなたさまを置いて他にありません。今川とは有利な条件で和議を結ぶべきなのです。もし、事が決裂したときには、私どもはあなたさまと共に信長公と一戦に及ぶ覚悟があります」
とってつけたような甘い言葉を用いて泣きついてみせたが、これがまったく裏目に出る。かつて美濃と図って謀叛した信広だが、赦免された後はすでに信長の才覚を十全に認めていた。この期に及び家督簒奪の野心などは持ち合わせていない。何よりも信勝の顛末を見ているし、仮に野心なるものがあったとしても、目の前の者たちが臆病風に吹かれただけの輩であることは明々白々で、そんな者たちからの誘いなど気分が良くない。一戦に及ぶ覚悟があるなら、然るべき時に自分に味方しておくのが筋だが、そうしなかったのは覚悟がなかったからに他ならない。信広に追い返された彼らは、舌の根も乾かぬうちに、今度は信次に同じことを嘆願した。信次は、今となっては信長の唯一人の叔父であるが、しかし、これはそもそも人選からして誤っていた。その昔、信長の実弟・秀考を誤射して出奔した経緯を持つ信次は、その境遇から自らを救い出してくれた信長に恩はあれども恨みなどは毛ほどもないのだから。
進退に窮した一党は、いよいよ最期の頼みの綱としてあの男に白羽の矢を立てた。
「なるほど。話は相分かった。貴殿らの言うところはおおよそ間違ってはいない。大高に鷲津・丸根の両砦を築けば義元は必ずやこれを救援に現れるだろう。一帯は文字通りの血の海の決戦場となる。生易しい戦は、待ってはいないであろうな」
元、織田家筆頭家老・林秀貞その人である。
秀貞は、稲生の戦いでの翻意を赦免されてからというもの、家中の表舞台からはすっかりその姿を消してしまっていた。秀貞だけではない。柴田勝家も同様である。周囲の目には、信長から露骨な報復人事を行われたとしか思われぬ有様だったが、それだけに、一党から秀貞への期待は強いものがあった。
「さすがは林さまだ、お話が早い。そうです、今川との戦などは土台が馬鹿げています。信長公はまだお若いから、些か気が勇んでおられるご様子ですな。取巻きの連中についても、悪いが若輩です。信長公の言うことに唯々諾々と従うばかりで……これは果たして本当の忠義で呼べるものではございますまい。運よく連勝を続けているものだから、無理もない、ハハ、彼らはおそらく気付いておらぬのでしょうな。大高攻めがいずれ義元の大軍を呼び寄せてしまうことに。林さまほどの慧眼が彼らにはないのですよ。林さまがお立ちになるのなら、我らは信長公と一戦に及ぶ覚悟でございますよ、ええ」
経典を諳んじるかのようにつらつらと吐き出される言葉は淀みなく、舌がまわって仕方ない。秀貞が味方になればこれは百人力である。自分たちより弁舌も立つので、今度は秀貞を伴って信広らを説得に向かおうなどと、夢見心地の一党だったが、――
「ふ。めでたい者たちだ」
秀貞は誰に言うでもなく、可笑しいのか苦笑して漏らすように言った。
「は、それは、その誰が、どういった――?」
「直接、軍議に参加した者の理解度がその程度では、信長さまも頭が痛いだろう。なるほど、上に立つというのは楽ではないということか。信長さまは元より、殿に付き従う者たちも、貴殿らが思いつくことなど全て承知に決まっていよう。そのうえで、義元との決戦に挑もうとしているに相違ない。分からぬか。敵の目に最もつくところへ砦を築き、挑発し、敵の主力を同地へ誘い込む。かつて信長さまが稲生原で弟や柴田に用いた戦法と似ている。大高城はともかく、鳴海城を落とすには後詰の可能性を完全に潰しておかなければならないからだ。そのために、今川の主力をあえて呼び込み、これを叩き、二城の士気を削ぐ。大方はこういう作戦であろう」
秀貞の鋭い指摘に晒されても、彼らは一時には、その言い分を信じ切ることが出来なかった。何が秀貞と彼らを隔てるのか。それは、謀叛をやり切った者とそうでない者の違いだった。彼らは謀叛に加担しつつも、知らぬうちに負け、知らぬうちに許された者たちだった。無意識のそこには、未だに「あのうつけが」という蔑視が張り付いたままで、信長の良さも悪さも、実は大して分からぬ亡霊だった。
「しかし、信長――公には、その、いかなる策がおありなのですか。それをお教えいただかなければ、従える者も、従えぬのではないか、と、私どもは――」
「さあな。そんなものは信長さまのみぞ知ることだ。ただ、これだけは言えよう。私が当主なら、それを丁寧に説明してもらえぬだけですぐに考えもない邪魔立てを働こうとする者らに、あえて重要な作戦の根幹を話しはせぬということよ。命の覚悟がないなら、じっとしていなさい。謀叛などという大事を口にしながら、自らの立場すら明確にできぬ者の居場所など、今にこの家からはなくなるぞ。ふふ」
秀貞は笑った。珍しいことだが、思えばすべては自嘲であったのかもしれない。
――
三年前のこと、弘治四年(一五五六年)十二月、稲生の戦いが終わり、那古野城は開城した。林秀貞は信長と談判した。
信勝を奉戴した謀叛は、その軍事の主力に柴田勝家を据えていたが、図を描いたのは林兄弟であった。信勝や勝家がそれを滞りなく実行に移すことができたのも、すべては林秀貞という、かつて信長に一番家老として付けられたこの男が関係していたためである。弟・道具が稲生原で信長自身の手によって討ち獲られた以上、その責任の最も重いのはこの男だろうと目されていた。
秀貞は、冷たい板縁に、皺の通った額を押し付けて平伏して信長を待っていた。
やがて現れた信長は誰も連れていなかった。信長は唐突に話した。二人だけだった。
「さて、林秀貞。オレにはキサマを庇う理由がない。こういう言い方はトンチのようで好きではないが、キサマの謀叛は、実は、ずいぶん早いな。今回のことは勝家たちが加わったので乱に発展したまでのことだが、キサマがオレに見切りをつけたのは、まだ、オレが当主になるよりもずっと昔のことだろう。家中にはその得意な弁舌で以てオレの無能を触れ回り、一方では、常に中立な風を装ってきた。卑劣といえば、 卑劣だな」
「返す言葉もございません。もはや、この腹一つで事が収まるとは考えておりませぬ。が、誠に勝手ながらも、何卒、息子たちに咎が及ばぬ処置を望むものです」
「オレは憐れみで何かを決めはしない。分かっているだろう」
「はい」
秀貞にはそれしか言うことがなかった。
稲生原に林道具、柴田勝家が敗北したうえでは、戦争の継続は望むべくもない。一早く那古野城を開城したのも、抵抗の無駄を悟ったからだ。これ以上、末端の兵士たちが無駄な血を流すことはない。開城で何かが許されるなどと思っていたわけではない。ただ、武士の型通りに切腹を遂げ、一族の助命嘆願を頼むほかになかったのだ。だが、信長はそれを嫌った。
「まったく頭から爪先までつまらん男だ。死に際しても型を貫くつもりか。それでキサマは本当に満足か。腹の内を、最期まで、誰にも見せず、企みも野望もあったはずなのに、敗れればそれまでだと? 立派ことだ」
秀貞は沈黙する。彼は今、自らが信長を恐れ通してきた理由に対峙させられている。目の前に迫ってくるのは、剥き出しの感情である。これに照応させられる言葉を、秀貞は持ち合わせていない。いや、言葉ではそもそもダメなのだ。弁舌とは所詮、人の表現の表層を捉えて操る芸事の一種に過ぎない。いくら達者になろうとも、論理を捨てて迫りくる感情という名の火の手には、まるで有効ではないからだ。
「どうした。黙りこくって。そんなに静かな男ではないだろうッ。格好つけも大概にしろッ。サア、オレを殺してどのように家中を治めるつもりだったのか、聞かせてみろ。そうだ、こうしてやろう。オレに言いたいことがあるだろう。それを、今ここで全て絞りつくせ。そうしたなら、一族の罪は問わない。さあ、何でも言ってみろッ」
自分の人生のすべてが無効化されたかのように秀貞は感じた。
ここまで言われ、信長に従う義理はない。一計が思い浮かんだ。
――この場を脱し、家中の者たちを集め、その眼前で腹を切ってやろう。その覚悟を以て、一族の助命嘆願を涙ながらに訴えるのだ。さすれば、信長もおいそれとは手を出せまい。降伏のうえに切腹した者の一族を処刑したとあっては、外聞が悪い。それに、未だに降伏の決意を固めていない信勝や勝家たちを大いに悩ませることにもなるだろう――
これは、いわば弾正忠家の未来を人質に取った脅迫だった。林秀貞という男の生涯を貫く最期の計略の出来としては、きっと、及第点だった。
しかしながら、どういうことだろうか、秀貞は思いついたこの一計を呑み込んで、声を荒げてしまう。
「何をッ。先刻から黙って聞いておれば、好き勝手を言いおるわ。もうよいッ。それほど、聞きたいと仰るならば、お耳に入れて差し上げよう。
物心ついてから始まった奇行に次ぐ奇行、信秀公はあなたを大器だなどと何かと庇っておられたが、当のあなたはそれすら知らなかったのでしょうな。我らはあなたが村で呆けて遊んでいる間も、ずっと先を見据えてきたのですッ。武士にとっては家が第一。だから、信秀公のような傑物が続いて当主となることはあり得ないと、我らは常々考えていたのです。我らに出来ることとは、信秀公の遺したものを受け継ぎ、それが出来る限り失われぬよう努めること。そのために、隣国の斎藤や今川とは事を荒立てぬようにと考えてきましたッ。
だから、謀叛をしたのだ。信勝さまも、柴田勝家も、知ったことではない。さしたる身分でもない私を取り上げてくださった信秀公の恩に報いるために、私はその跡取りに背いてでも、この家を存続させなければならぬッ。そのことだけに、この頭を使ってきた。私は戦えぬ。槍働きは何一つできぬのです。だが、この頭がある、口先がある。この謀叛は、一から十まで全て私が煽動したものです。あなたの力を見誤っていた、イヤ、見くびっていたのは確かですがね。倒せるだろうと考えましたよ。ハッハッハ。だが、これがものの見事に間違っていた。だが、それもこれも、やってみなければわからなかったことです。悔いならあります。馬鹿をしました。けれども、私は、私の失敗と死に納得しております。
苦し紛れにもう一つ。戦争に先だって、あなたが秀俊さまと那古野城を訪れた際、その命を助けたのは、何を隠そうこの私でしょうが。あの狭い城内で、「一息に殺してしまおう」と私に持ち掛けた弟を退けて、私はあなたの命を救ったのです。思えば、あそこであなたさまを殺してしまっていたなら、すべては我らの勝ちであったかもしれませぬな。
弟も死にました。私には何も残らなかった。だが、きっと、あなたにとっては、これは始まりなのでしょう。美濃に三河に大敵を抱え、なおも戦争に邁進する。まるで正気の沙汰とは思われぬ。果たして、どこまでそれが継続できるか、どこまであの小僧たちがあなたに付き従うか、この林佐渡守秀貞も、地獄で見届けさせてもらいましょうッ」
もう若くはない身体であまり一息に話したものだから、肩で息をしなければならなかった。気付けば汗をかいていた。秀貞はすでに死んだ気でいた。一族のことも、何故だか、半ば諦めてしまった。信長に打ち据えられることで、何か戦場を駆け回ることの出来なかった自分の情けなさをどうにか払おうとしたのかもしれなかった。
けれども、信長の裁定はそれを許さないものだった。
「地獄からじゃ少し遠いだろう。生きたまま、このオレの弾正忠家を見届けるといい」
信長はそう言ってあっさりと秀貞を赦免してしまったのだ。
胸にぽっかりと穴が開いたように、秀貞は脱力した。これから何をすればいいのか、皆目分からなかった。けれども、日々を無為に老人のように暮らす中で、秀貞の心には信長と談判する前には無かった、か細いながら、しかし、確かに熱い、灯のようなものが感じられるのだった。それは、秀貞自身が決して口にすることがないと思われる、希望と呼ばれるものだったかもしれない。前途は血に染まっている。楽な道は潰えている。だが、しかし、
――この信長という男に、自分の才覚を加えたなら一体どんなことができるだろう――
そんな楽しみが、秀貞がぼんやりと見据えた新たな未来に絡みついて離れないのだった。
――
「そうして、キサマはその者たちを帰したというのか」
秀貞からの報告を受けて、信長はどこか楽しそうだった。
「ハ。勝手ながら私の裁量で処置をいたしました。かの者たちの名前と顔はすべて覚えておりますので、もし、捕えて差し出せと申しますなら、今すぐにでも」
「いや、いいよ」
秀貞は彼に談判してきた人間にこう語りかけて帰したのだ。
『今日の話は聞かなかったことにしよう。アレは遠くから見ていると分からぬ男だ。もう少し、近くでしっかりと見なさい。ゆっくりでいい。我らの殿は、見ていると退屈しない男だぞ』
かくして家中に再び蠢動していた火種は、秀貞の一言で未然に少しずつ消滅していった。
彼が信長の元でその官吏としての才覚を再び奮うのも、そう遠い話ではないだろう。
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