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婚約破棄に向けて

初めての感情に気づくには少し時間かかるようだ。レンフォード視点

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王都からハマー領までそこまで遠くないので馬なら1時間くらいで着くはずだ。
俺はハマー領に向けて馬を走らせる。
すると、前に人がたくさん歩いているのが見えた。

近寄りすぎず様子を見ながら進んでいくと、皆ハマー領に向かっているようだった。
「それにしても、心ここに在らずという感じだな…」
歩いてはいるものの、ハマー領を目指して歩いているというよりはただ歩いているだけという感じだ。目も虚で手はだらりと垂れ下がりただ足だけ動いているような…

「もしかして何かの薬か。」

ハマー領は侯爵家でもあるから領地だけはやたらと大きい。隠れて何か行っていてもおかしくないことは確かだ。
「今回の騒動が終わったら一度調べてみた方がいいな。余罪が色々出てきそうだ。」

今目の前の団体の中に入るのは危険だと思い、街道傍にある森のような茂みの中を進むことにした。

森の中ということもあり、小道などができているわけではないため日が出ている方あてにしながら進んでいく。
だんだん陽も沈んできたため、一度ハマー領の町に入ってから考えた方がいいかもしれないと考え、近くにある町を目指した。

ハマー領の中でも1番王都近い町ということもあり、町は思ったよりも大きくきれいに整っている…表向きだけかもしれないが…
敵地で自分からシアのことを聞くと怪しまれる可能性もあるため、俺は酒場などに入り周りが最近起きた話などしていないか、少し情報収集をすることにした。

⟡.·*.··············································⟡.·*.

酒場に入ると色々な情報が飛び交っている。

ーーー「宿屋の経営が結構やばいらしいぞ」

ーーー「新しくできたリーム亭の奥さんが美人なんだよ。」

ーーー「ここの領主は本当になにもしてくれねぇな。最近はゴロつきばかり増えて嫌になるぜ。」


ごろつきが増えているのは気になるな。確かにこの町を少し見たが、ガラの悪い奴が結構いた。傭兵という感じではなかったし…盗賊のような感じだった。

ーーー「あそこの1番下の息子が絡んでるんじゃねぇか?上2人の息子は色々動いてくれていたが最近全然見かけねぇしなぁ。」

ーーー「1番下の息子はダメだ。ありゃ今の領主ににすぎてる。」

やっぱり領主に対しては全体的にいい話はないみたいだ。後トーマスもやりたい放題なんだろう。
色々耳を傾けてると一つの情報が耳に入ってきた。

ーーー「そういえばいま、下の息子が帰ってきてるってよ。なんでも女を抱えて歩いていたらしい。相当な美女だったようだぜ。」
トーマスを学院で見かけないとは思っていたが領地に帰ってきていたのか。
美女を連れていた…と言うことはシアの可能性もあるかもしれないな。俺は話している人たちのところへ行き声を掛ける。

「楽しんでいるところ申し訳ない。急いでいるんだ。息子が連れていた女性の見た目覚えている奴はいないか。」

始めはなんで俺なんかに話さなきゃいけないんだと言うような顔をしていたが銀貨をテーブルの上に出すと話し始めた。

「俺が見たのは意識失っていたから顔までは見えていないが、髪は銀髪みたいな感じだったよ。」

「俺も、見た時は意識なかったな。一瞬髪の間から顔が見えたんだが人形のように整っていた。」

結局聞けたのは銀髪だということだけだ。まぁ、あいつが連れているくらいだ。おそらく銀髪で顔が整っていることを考えるとシアと考えるのが妥当だろう。

「ありがとう。助かったよ。因みにどこに行ったかわかるか?」

「恐らく森の中にある小屋だと思う。あいつ何かあるとそこにいくって噂があるんだ。」小屋の方向を指差して教えてくれる。


俺はみんなにお礼を言って離れた。
離れる時、「彼女助かるといいな。幸せになれよ!」と声が聞こえた。
そもそもまだ彼女でも恋人でもない。
ただシアを思う気持ちに俺も気づいてきている。





「俺はシアが好きなんだな…」


そう思うと気持ちがスッキリした気がした。いつ好きになったかはわからない。始めはただの噂のあの方が気になっただけだった。図書館で会った時はお互い話すことなく黙々と本を読んだ。
お互いが深く相手の中に入り込まないからそう言ったところも心地よかったんだろう。ただ、今はいつから好きだったかよりもシアの無事を確認する方が先だ。
俺は急いで森に戻り小屋をさがした。

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