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婚約破棄に向けて

トーマスの受難 トーマス視点

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今日も朝からドロシーと2人で学院に行く。ドロシーはいつも俺に甘えてくれるし、優しいし、顔も整っていてかわいい。理想の幼馴染だ。少しわがままがすぎると感じるところもあるが、そこもまた可愛い。

「トーマス様、おはようございます。」
「ドロシー、おはよう。」
小走りで駆け寄り抱きついて来たので俺もドロシーを受け止める。
道ゆく人たちは俺たち幼馴染をみて仲のいい幼馴染だと思っているに違いない。きっと可愛いドロシーのことを羨んでいるだろう。周りの皆が俺たちを羨ましそうな目で見ていることを想像するだけで優越感に浸れる。

腕を組みながら学院の中まで歩くと、いつもドロシーを教室まで送っていく。
みんな俺たちがくると、サッと道を開けてくれるのですごく気分がいい。

「トーマス様、今日はこちらを通っていきませんか?」
ドロシーともう少し一緒にいたいと思っていたから、少し遠回りして教室に向かえるのは嬉しかった。

「いいよ。もう少しドロシーと一緒に歩きたかったからこっちから行こうか。」
2人でゆっくり廊下を歩く。
歩いている時は他愛のない雑談が多い。あとはパトリシアのことだ。
「パトリシア様にまた教科書隠されたんです。」
「パトリシア様、ひどいんですよ。階段を歩いてたら後ろからつきおとそうとしてきたんです。絶対私とトーマス様の関係を妬んでるんですよ!」少し怒ったドロシーも可愛い。
「大丈夫だったかい?ドロシーに怪我がなくて良かったよ。」
パトリシアはいつもドロシーに嫌がらせばかりして困った婚約者だ。たしかに最近幼馴染であるドロシーに時間をかけてはいるが…。そんなに俺のことが好きなら少しは甘えてくればいいものを、全く甘えてもこないからな。親に言われたから仕方なく婚約しているが、これ以上ひどくなるなら婚約破棄を、父上に進言しよう。

そう思ったいた矢先、ドロシーが制服を切り刻まれたと言ってきたのだ。
俺はここまでパトリシアが酷いことをするとは思ってもいなかっが、これだけのことをしてくるということは婚約破棄するのも簡単だと思う。パトリシアは綺麗だが愛想もなければ、甘えてもこないし一緒にいても窮屈に感じていた。婚約破棄したら三男だし家を継ぐことはできないが、まだ婿を探しているところとかあるだろう。ドロシーとこれからも一緒にいるのもありかもしれない。

俺は早速、パトリシアにドロシーの件と婚約破棄について伝えた。父親に相談してからということになったのでその場は引き下がる。

その後も何度かドロシーへ色々いじめなどをしていたので注意するが全く気にしていない様子で腹が立った。

そしてついに昨日、ドロシーと一緒にパトリシアの教室の前に来ていた。挨拶をすると普通に挨拶を返してくれたがドロシーへの挨拶がなく少しイラッとしてしまった。きっとドロシーへの当てつけだったんだろう。それだけ俺のことを好きだと思うと気分がよかった。2人が俺のことを好きということだからな。周りにもたくさん人が集まってきた。2人が俺を取り合う姿をみれて羨んでいることだろう。

「パトリシア俺のことが好きだからってドロシーに嫌がらせするのはやめろ。」
俺の計算ではこの言葉をいうとパトリシアは「ドロシーにばかり構って私に構ってくれないじゃないですか…。」と泣きながら言ってくれると思っていた。


しかし返ってきた言葉は「あなたのことはお慕いしておりません。」だった…。

そしてさらに「幼馴染の意味を知っていているのか?知らないなら辞書で調べてください。」とまで言われた。
幼馴染の意味くらい知っている。

友達以上、恋人未満のことだろう。そう思っていると…。

「周りから見れば仲のいい幼馴染ではなくただの横取り女と浮気男ですよ!」

それだけ言ってパトリシアは教室に入っていく。さらに追い打ちをかける様に先生からも「横取り女さんと浮気男さん」なんて言われた。

教室の中から笑いが沸き起こっていて、すごく腹立たしい気持ちになった。俺はドロシーをその場に置いたままそそくさと自分の教室に向かった。

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