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婚約破棄に向けて
出来ることから始めようとしたら、目の前にトーマスが現れました。
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お母様に話を聞いてわかったのは、ワーグナー夫人にはすぐ会えないということだった。
「出来ればワーグナー夫人に直接話を聞いて詰めていきたかったけど無理そうね。時間もないしできることから始めましょう。」
ワーグナー当主の件はファルディにこのままお願いするとして、私は証人を集めるところから始めることにした。
学院で私がドロシーに嫌がらせをしていないという証人と、2人の関係について話してくれる証人は見つけたので、あとはトーマスの暴言について目撃していた人。あとは今まで2人の嫌がらせを受けて来た人が他にもいたら集めたいと考えている。
おそらく私以外にも嫌がらせを受けて来た人はいるだろう。
「取り敢えず、トーマスからね。」
次に動きそうなトーマスに目をつける。トーマスは侯爵家のご子息ではあるけど三男ということもあるからか甘やかされて育っている。兄2人は常識人で、奥さんを大事にするとても優しい方々だ。
ハマー夫人も決して悪い方ではない。確かに少し気が弱いところがあるけれど、とても穏やかな方で、叱らないといけないときはきちんと叱ってくれる。逆にハマー家当主は苦手だ。お父様とは違うタイプで貴族であることを振りかざしているような、貴族だから何をやっても許されるくらいに思っていそうな雰囲気があった。
そう考えるとトーマスだけが当主の性格に似たのだろう。そう考えると少し納得できた。
「明日あたりトーマスが私のところに来る気がするのよね。」
少し気が重いと思いながら今日は休むことにした。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
貴族院につき、教室に続いた廊下を歩いていると思った通りトーマスがいた。朝はいつもドロシーの教室の前で劇が繰り広げられていると聞いてるから、この時間に来るのは珍しい。
朝から、一番会いたく無かった人に会うのは正直やめてほしい。取り敢えずまだ婚約破棄したわけではないので、目の前にいる婚約者に挨拶をする。
「おはようございます。トーマス様。何か御用ですか?」
すると、「なんでトーマス様にしか挨拶しないんですか!?やきもちですか!?酷いです。」
トーマスの後ろから1人の女の子の声が聞こえた。声が大きかったこともあり、クラスにいた方々は皆「なんだ、なんだ」と廊下に出て来る。
トーマスの後ろから聞こえた声は勿論、ドロシーである。
私は本当に見えていなかったので、
「おはようございます、ドロシー様。大変失礼いたしました。ちょうどトーマス様に隠れられていたので見えていなかったのです。」
きちんと謝罪した。
にも関わらず始まるのが劇場である。
「パトリシア。君はなんでいつもドロシーにばかりそう言った態度を取るんだ?そんなに僕のことが好きなら堂々と言ったらどうだ?」
「では、言わせていただきます。あなたのことは一ミリ足りともお慕いしたことはございません。婚約については親同士が決めたこと。貴族社会では当たり前のことです。お互い歩み寄れればと思っておりましたが…そもそもトーマス様こそ、ドロシー様といつも一緒にいて周りがどう思っているか見えたことがないのですか?」
「周りは俺たちを仲のいい幼馴染だと思っているだけだろう。俺は何度もそう伝えたじゃないか。」
「トーマス様。幼馴染とはどう言ったものかご存知ないのですか?一度辞書で調べてみてください。あなたとドロシー様は幼馴染ではございませんよ。そして周りをよくみてみてくださいませ。」
私は最後の言葉を突きつける。
「ただの横取り女と浮気男にしか見えません。」
トーマスは激昂した様子で、
「やっぱり君は俺のことが好きなんだろう。だからそうやって貶めることを言うんだな。ドロシーが泣いているじゃないか。」
そう言ってドロシーを抱きしめる。ここまで話してもなおこの調子だ。もう授業が始まる時間だし、私は気にせず教室に入った。
廊下から先生の声が聞こえる。
「君たちは別のクラスの生徒だね。今回の件は全て見ていたからね。クラスの先生方に伝えておくよ。さっさと戻りなさい。横取り女さんと浮気男さん。」
先生はピシャリと教室の扉を閉めた。
皆が笑っているのをみて少しスッキリした。
「出来ればワーグナー夫人に直接話を聞いて詰めていきたかったけど無理そうね。時間もないしできることから始めましょう。」
ワーグナー当主の件はファルディにこのままお願いするとして、私は証人を集めるところから始めることにした。
学院で私がドロシーに嫌がらせをしていないという証人と、2人の関係について話してくれる証人は見つけたので、あとはトーマスの暴言について目撃していた人。あとは今まで2人の嫌がらせを受けて来た人が他にもいたら集めたいと考えている。
おそらく私以外にも嫌がらせを受けて来た人はいるだろう。
「取り敢えず、トーマスからね。」
次に動きそうなトーマスに目をつける。トーマスは侯爵家のご子息ではあるけど三男ということもあるからか甘やかされて育っている。兄2人は常識人で、奥さんを大事にするとても優しい方々だ。
ハマー夫人も決して悪い方ではない。確かに少し気が弱いところがあるけれど、とても穏やかな方で、叱らないといけないときはきちんと叱ってくれる。逆にハマー家当主は苦手だ。お父様とは違うタイプで貴族であることを振りかざしているような、貴族だから何をやっても許されるくらいに思っていそうな雰囲気があった。
そう考えるとトーマスだけが当主の性格に似たのだろう。そう考えると少し納得できた。
「明日あたりトーマスが私のところに来る気がするのよね。」
少し気が重いと思いながら今日は休むことにした。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
貴族院につき、教室に続いた廊下を歩いていると思った通りトーマスがいた。朝はいつもドロシーの教室の前で劇が繰り広げられていると聞いてるから、この時間に来るのは珍しい。
朝から、一番会いたく無かった人に会うのは正直やめてほしい。取り敢えずまだ婚約破棄したわけではないので、目の前にいる婚約者に挨拶をする。
「おはようございます。トーマス様。何か御用ですか?」
すると、「なんでトーマス様にしか挨拶しないんですか!?やきもちですか!?酷いです。」
トーマスの後ろから1人の女の子の声が聞こえた。声が大きかったこともあり、クラスにいた方々は皆「なんだ、なんだ」と廊下に出て来る。
トーマスの後ろから聞こえた声は勿論、ドロシーである。
私は本当に見えていなかったので、
「おはようございます、ドロシー様。大変失礼いたしました。ちょうどトーマス様に隠れられていたので見えていなかったのです。」
きちんと謝罪した。
にも関わらず始まるのが劇場である。
「パトリシア。君はなんでいつもドロシーにばかりそう言った態度を取るんだ?そんなに僕のことが好きなら堂々と言ったらどうだ?」
「では、言わせていただきます。あなたのことは一ミリ足りともお慕いしたことはございません。婚約については親同士が決めたこと。貴族社会では当たり前のことです。お互い歩み寄れればと思っておりましたが…そもそもトーマス様こそ、ドロシー様といつも一緒にいて周りがどう思っているか見えたことがないのですか?」
「周りは俺たちを仲のいい幼馴染だと思っているだけだろう。俺は何度もそう伝えたじゃないか。」
「トーマス様。幼馴染とはどう言ったものかご存知ないのですか?一度辞書で調べてみてください。あなたとドロシー様は幼馴染ではございませんよ。そして周りをよくみてみてくださいませ。」
私は最後の言葉を突きつける。
「ただの横取り女と浮気男にしか見えません。」
トーマスは激昂した様子で、
「やっぱり君は俺のことが好きなんだろう。だからそうやって貶めることを言うんだな。ドロシーが泣いているじゃないか。」
そう言ってドロシーを抱きしめる。ここまで話してもなおこの調子だ。もう授業が始まる時間だし、私は気にせず教室に入った。
廊下から先生の声が聞こえる。
「君たちは別のクラスの生徒だね。今回の件は全て見ていたからね。クラスの先生方に伝えておくよ。さっさと戻りなさい。横取り女さんと浮気男さん。」
先生はピシャリと教室の扉を閉めた。
皆が笑っているのをみて少しスッキリした。
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