上 下
19 / 77
婚約破棄に向けて

強い味方

しおりを挟む
「いい加減にしないか。ここは人目もある。男が女性手を上げるのは良くないと思うんだが…」

トーマスの肩を叩きながら諭す。トーマスは相手の顔を見て真っ青な顔をした。
「で、、で、、」
で?トーマスはその後の言葉をなかなか言わない。
「ここは見せ物じゃないから皆帰ろー。」そう言ってその場を収めてくれたのはマーティン様だ。皆少しずつ散っていく。

「先程は助けていただきありがとうございました。マーティン様に助けていただこうとチラチラ見てはいたんですが、なかなか動いてくれず。」マーティン様を横目で見つめる。
「動こうとしたんだけどさ、なかなか動けなかったんだよ。」おどけた顔で軽くごめんごめんと謝る。まぁ、巻き込むほうが良くないなと思い、こちらこそごめんなさいと伝えた。

⟡.·*.··············································⟡.·*.

マーティン視点

生徒会室に向かって歩いてると大きな声が聞こえる。男の怒鳴り声だ。
公共の場でうるさいなと思いながら何が起きているのかも気になったので俺はその場に向かった。
どんどん近づくに連れて、「この極悪令嬢め!」など声が聞こえてくる。極悪令嬢か。もう悪役令嬢も卒業したんだなと思いながら近寄っていくと、クラスでよく隣に座るパトリシア嬢が居た。パトリシア嬢はいつもの如く興味なさそうな顔をしている。トーマスが「俺の事好きだからって」という言葉を言った時のパトリシア嬢の顔は般若のような顔をしていた。
絡まれてイライラしていのが伝わってくる。好きな読書を邪魔されているというのもあるんだろう。

パトリシア嬢はどうやってこの場を切り抜けようか考えているのか辺りを見渡す。そして、俺と目があった瞬間、目で話し始めてきた。そう言った気がした。
仕方ないなーと思いながら人の間を縫うように進んでいくと急に腕を掴まれる。
後ろを振り向くとそこにいたのは、レンだった。
ここにレンがいるのは珍しい。2年の教室からは図書館前を通らないといけないが3年の教室からは図書館を通らなくても直接生徒会室に行ける。恐らくクレイが、「面白い事が起きていますよ。」とか言ったんだろう。
レンはツカツカと前に進みながらトーマスの肩を掴んだ。

トーマスは顔を真っ青になりながら「で、で、」と言っていた。
パトリシア嬢は「で?」って何って顔をしていたので慌てて俺はこの場をおさめる。

みんながいなくなった後、パトリシア嬢が「助けてくださりありがとうございました」と綺麗にカーテシーをした。
何があったのかパトリシア嬢に聞いているレンを見ながら、以前と少しレンの雰囲気が変わっていることに気づいた。

「えっと、で?様ですか?で?様のかおを見てトーマスが真っ青になっていたんでなんだかスッキリしました!」

おいおい「で?様」ってなんだ。たしかに、トーマスは「で?」しか言ってなかったもんな。声に出さず笑っているとレンはこちらを睨む。

「で?じゃないよ。僕はレン。マーティンの幼馴染だよ。」あくまでも殿下ということは隠したいらしい。まぁ今はこのくらいでよしとしようか。
「取り敢えず話したいから生徒会室に行こうか。」
パトリシア嬢を連れて生徒会室に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】冷遇された私が皇后になれたわけ~もう貴方達には尽くしません~

なか
恋愛
「ごめん、待たせた」  ––––死んだと聞いていた彼が、私にそう告げる。  その日を境に、私の人生は変わった。  私を虐げていた人達が消えて……彼が新たな道を示してくれたから。    ◇◇◇  イベルトス伯爵家令嬢であるラシェルは、六歳の頃に光の魔力を持つ事が発覚した。  帝国の皇帝はいずれ彼女に皇族の子供を産ませるために、婚約者を決める。  相手は九つも歳の離れた皇子––クロヴィス。  彼はラシェルが家族に虐げられている事実を知り、匿うために傍に置く事を受け入れた。  だが彼自身も皇帝の御子でありながら、冷遇に近い扱いを受けていたのだ。    孤独同士の二人は、互いに支え合って月日を過ごす。  しかし、ラシェルが十歳の頃にクロヴィスは隣国との戦争を止めるため、皇子の立場でありながら戦へ向かう。    「必ず帰ってくる」と言っていたが。  それから五年……彼は帰ってこなかった。  クロヴィスが居ない五年の月日、ラシェルは虐げられていた。  待ち続け、耐えていた彼女の元に……死んだはずの彼が現れるまで––   ◇◇◇◇  4話からお話が好転していきます!  設定ゆるめです。  読んでくださると、嬉しいです。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化進行中!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、ガソリン補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…

愛する人が姉を妊娠させました

杉本凪咲
恋愛
婚約破棄してほしい、そう告げたのは私の最愛の人。 彼は私の姉を妊娠させたようで……

婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?

歩芽川ゆい
恋愛
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」  コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。  プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。  思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。  声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

結婚式の夜、突然豹変した夫に白い結婚を言い渡されました

鳴宮野々花
恋愛
 オールディス侯爵家の娘ティファナは、王太子の婚約者となるべく厳しい教育を耐え抜いてきたが、残念ながら王太子は別の令嬢との婚約が決まってしまった。  その後ティファナは、ヘイワード公爵家のラウルと婚約する。  しかし幼い頃からの顔見知りであるにも関わらず、馬が合わずになかなか親しくなれない二人。いつまでもよそよそしいラウルではあったが、それでもティファナは努力し、どうにかラウルとの距離を縮めていった。  ようやく婚約者らしくなれたと思ったものの、結婚式当日のラウルの様子がおかしい。ティファナに対して突然冷たい態度をとるそっけない彼に疑問を抱きつつも、式は滞りなく終了。しかしその夜、初夜を迎えるはずの寝室で、ラウルはティファナを冷たい目で睨みつけ、こう言った。「この結婚は白い結婚だ。私が君と寝室を共にすることはない。互いの両親が他界するまでの辛抱だと思って、この表面上の結婚生活を乗り切るつもりでいる。時が来れば、離縁しよう」  一体なぜラウルが豹変してしまったのか分からず、悩み続けるティファナ。そんなティファナを心配するそぶりを見せる義妹のサリア。やがてティファナはサリアから衝撃的な事実を知らされることになる────── ※※腹立つ登場人物だらけになっております。溺愛ハッピーエンドを迎えますが、それまでがドロドロ愛憎劇風です。心に優しい物語では決してありませんので、苦手な方はご遠慮ください。 ※※不貞行為の描写があります※※ ※この作品はカクヨム、小説家になろうにも投稿しています。

最愛の人は別の女性を愛しています

杉本凪咲
恋愛
王子の正妃に選ばれた私。 しかし王子は別の女性に惚れたようで……

処理中です...