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あの方

ドロシーという女とトーマスという男

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ルイス視点

レンに言われてドロシーという女を調べはじめた。できるならパトリシア嬢について調べるほうが楽しそうだと思ったが、こればかりはクラスが一緒だから仕方がない。
ドロシー・ワーグナー(16)ワーグナー男爵の三女だ。ワーグナー家は最近準男爵から男爵になったと聞いている。準男爵だったこともあり領地などは持っていない。ワーグナー家が男爵家になった理由はドロシーの父親が大商人の息子でお金にものを言わせたと聞いている。言ってしまえば成り上がりというやつだ。
ドロシーはクラスでは結構嫌われている。目に見えたいじめはないが、やたらと婚約者のいる人に近寄っていくのだ。見た目は赤い髪色にピンクの瞳。ぽてっとした唇。男が好きそうな体型をしている。見た目も恐らくかわいい部類には入るだろう。
ただ、あれは女性に嫌われるタイプだ。甘ったるい声で話しかけてきたり胸を押し付けてきたりするからだ。
そしてトーマス先輩が教室に来ていないときは他の男性に話しかけている。それを他の女生徒は白い目で見ているのだ。
「またやってるよ・・・」
「っていうかトーマス先輩もあの方の婚約者なのに、なんであんな女がいいんだろうね。」
意外にもこのクラスにはパトリシア嬢のファンが多かったりする。特に女性受けがいい。結構さばさばした性格だし(見た目からそう思われている)、いつも挨拶を返してくれるし、誰とでも分け隔てなく接してくれるからだ。
まぁ、話を聞いた限り分け隔てなくというよりは、「どこかで話したことあったかしら?」とか思ってそうだけど...あとは婚約者が別の女性と歩いていても焼きもちすら焼いていないからだ。これについては恐らく気づいていないか、興味がないんだと思う。

僕は、レンから調べるように言われたこともあり、ドロシー嬢を観察していた。
僕が見ていることに気付いたのか、ドロシー嬢はちらちらとこちらを見てくる。頼むから遠くから見ているだけでいいんだ。話しかけないでいただきたい。

というのも、香水のにおいがきつく近くにいるだけで吐き気がしてくるくらいだ。

「本当にどうしてトーマス先輩はこんな人が好きなんだろう。」と不思議に思った。

⟡.·*.··············································⟡.·*.

クライン視点

レンフォード様に言われた通り、トーマスという男について調べてみた。見た目は侯爵家ということもあり、まぁまぁ整った顔立ちをしている。髪は短くしており、金髪に黄色い瞳だ。背も結構高めだ。明るく話しやすい性格をしていると思う。ぱっと見は浮気をするような男には見えない。
ハマー侯爵家はとても古くからある貴族の家系だ。ただ、このハマー家結構お金に困っているらしい。最近トーマスのお兄さんに継がせて、両親は領地にいるということだったが、それもお金が無くなってきたからだと聞いている。今はトーマスのお兄さんが頑張ってお金を工面しようとしているのだ。

色々な話に耳を傾けていたところ、面白い話が入ってきた。トーマス的には顔はパトリシア嬢、性格はドロシー嬢が好きらしい。それを聞いていてとことんくずだなと思った。
そしてお金問題だ。どちらに転んでもお金が入ってくるように動いているそうだ。恐らく賠償金の話だな。
ドロシー嬢はちょっと頭が悪そうなところがあるため、理解せずに付き合っている可能性が高い。そして、パトリシア嬢に関しては気持ちが離れて行っていると気づいたからこそ早めに婚約破棄にもっていって損害賠償をもらおうとしているのだろう。この間の人前で婚約破棄について話している時点で、周りへ周知させるのが目的だったんだと思う。

「とことんくずだな」

そう思いながら、僕はレンフォード様に今日聞いた内容を伝えた。

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