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建国祭
夜会
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夜会当日。
今回は周辺諸国からの来賓は来ていないため、この国の貴族たちが集まる。
「バネッサ。今日のドレスは少しでも気持ちが上がるのがいいのだけれど…」
「そう言うと思っていました。今回はオスト様よりドレスを預かっております。」
バネッサを始めとした侍女たちがバサりとドレスを出してくる。
今回のドレスはとても大人っぽいドレスだ。
形はマーメイドラインになっていてスタイルがある程度良くなければきれないものだろう。
「私、マーメイドラインのドレスなんて似合うかしら…」
自分で言うのもなんだけれどある程度鍛えているし、それなりに引き締まっているとは思うけれど…
今回送られたドレスは気合を入れるためなのか真っ黒なドレスだ。そして所々に宝石が散りばめられている。
「大丈夫ですよ。それにお嬢様なら何を来ても似合いますので安心してください。」
「バネッサにそう言って貰えるとなんだか安心したわ!それにしても黒ってなんだか斬新ね…。」
「えぇ、今回は皆さん黒で来られるそうです。一応国王がお亡くなりになられたことになっていますので…。皆さんが知っている訳では無いですが…革新派の人たちは黒とお達しがあったようですよ。」
確かに、国王様が無くなって初めの夜会は黒を基調としたドレスなどを着ることが主流になっている。喪にふくすという意味もあるのだろう。
あくまでも基調なので、全部を黒にする必要は無いけれど。
胸元はVネックになっており、黒のレースが妖艶な雰囲気を醸し出している。
バネッサに手伝ってもらいながら着替えるといつもの雰囲気とは全く違う自分に少し驚いた。
「バネッサ。どうかしら?なんだか自分じゃないみたい。」
「とてもお似合いですよ。なんだか物語に出てくる妖艶な魔女見たいですね。最後に赤い紅をつけましょう。」
赤い紅が真っ赤なリンゴを連想させる。本当に魔女にでもなった気分だ。
準備を終えると私は控え室に向かった。控え室には黒を基調とした正装をしているたくさんの貴族たちでごった返していた。
「オスト様。」
少し端の方を見るとオスト様を始め、ニケお兄様や、アテナお義姉様、お母様や、お父様などが勢揃いしていた。
「メルティ…。とても綺麗だ…。」
「オストさまもとても素敵です。胸元にある赤い薔薇は私の紅の色とお揃いですね。」
オスト様は顔を真っ赤にさせながら後ろ向いた。なぜだか周りの人たちの目がすごく暖かく感じるのは気のせいだろうか。
「2人とも、この続きは後にして頂戴。そろそろ行く時間よ。」
そう言ってオリオンお祖父様を筆頭に夜会の会場に歩き出した。そういえば国王たちが見つからないようだけど…
それにヘルお兄様もいない。デメーテルお義姉様が一人で少し不安そうだ。私はデメーテルお義姉様に寄っていき声をかける。
「デメーテルお義姉様…大丈夫ですか?」
「メーティア…ヘルが全然いなくて…私捨てられちゃったかしら…」
まつげを揺らしてこちらを見てくるお義姉様…女の私から見てもかわいい。儚げ美少女である。こんなかわいい婚約者をヘルお兄様が捨てる?絶対あり得ないだろう。そもそもヘルお兄様はデメーテルお義姉様のことが大好きなのだ。
「大丈夫ですよ。きっとすぐ会えます。おひとりでは寂しいかもしれませんが、ヘルお兄様を信じて待ちましょう。」
デメーテルお義姉様が「そうね…大丈夫よね…信じて待っているわ。」とこちらに笑顔を向けた。
オスト様のところに戻りたいが、このままではデメーテルお義姉様が一人になってしまう…ひとりで悶々と考えていると、アテナお義姉様とニケお兄様がやってきた。
「メーティア。お前はヘリーオスト王太子殿下の近くに居なさい。私がデメーテルと一緒にいる。」
そう言って肩をポンと優しく押された。アテナお義姉様とニケお兄様が近くにいてくれるなら安心できるたえ私は急いでオスト様のところに戻った。
「大丈夫だったかい?デメーテル嬢は」
「はい…ヘルお兄様がいないことで少し不安になっていたようです。それにあんな儚げ美少女ですが…お強いですから。」
辺境伯家。この国と隣国との境に領地をもつ一族で、幾度となく争いをしてきた領地だ。そんなところのご息女であれば、剣も馬も乗りこなす。見た目の可憐さとは正反対なのがデメーテルお義姉様だ。
「ならいいが…」
扉の前につくと、国王陛下とガイア王妃がゆっくりとこちらに近づいてきた。
どうやらギリギリまで知られないように地下牢に隠れていたらしい。
アルマンが二人を連れてきてくれたようだ。
皆が一斉に片膝をついて挨拶をしようとする中、しなくていいと片手で制した。
「さて、中に入ろうか…」
オルフェウスお祖父様とオリオンお祖父さまがゆっくりと扉を開いた。
「お楽しみのところすまないね。私たちもぜひその夜会に参加させてくれないだろうか。」
国王陛下がいつもよりも低い声で話すと、皆がしりもちをついて後ろに下がっていく。
「お、お、おおおお叔父上…なぜ生きて…?」
「なんだ?生きていたらおかしいのか?」
だんまりしてしまうアポロを横目に私たちは階段が続くエントランスホールに向かった。踵を返し上から皆を見下ろす。
「さぁ、始めようじゃないか…本当の夜会を…」
国王陛下の言葉に皆が震えあがった。
今回は周辺諸国からの来賓は来ていないため、この国の貴族たちが集まる。
「バネッサ。今日のドレスは少しでも気持ちが上がるのがいいのだけれど…」
「そう言うと思っていました。今回はオスト様よりドレスを預かっております。」
バネッサを始めとした侍女たちがバサりとドレスを出してくる。
今回のドレスはとても大人っぽいドレスだ。
形はマーメイドラインになっていてスタイルがある程度良くなければきれないものだろう。
「私、マーメイドラインのドレスなんて似合うかしら…」
自分で言うのもなんだけれどある程度鍛えているし、それなりに引き締まっているとは思うけれど…
今回送られたドレスは気合を入れるためなのか真っ黒なドレスだ。そして所々に宝石が散りばめられている。
「大丈夫ですよ。それにお嬢様なら何を来ても似合いますので安心してください。」
「バネッサにそう言って貰えるとなんだか安心したわ!それにしても黒ってなんだか斬新ね…。」
「えぇ、今回は皆さん黒で来られるそうです。一応国王がお亡くなりになられたことになっていますので…。皆さんが知っている訳では無いですが…革新派の人たちは黒とお達しがあったようですよ。」
確かに、国王様が無くなって初めの夜会は黒を基調としたドレスなどを着ることが主流になっている。喪にふくすという意味もあるのだろう。
あくまでも基調なので、全部を黒にする必要は無いけれど。
胸元はVネックになっており、黒のレースが妖艶な雰囲気を醸し出している。
バネッサに手伝ってもらいながら着替えるといつもの雰囲気とは全く違う自分に少し驚いた。
「バネッサ。どうかしら?なんだか自分じゃないみたい。」
「とてもお似合いですよ。なんだか物語に出てくる妖艶な魔女見たいですね。最後に赤い紅をつけましょう。」
赤い紅が真っ赤なリンゴを連想させる。本当に魔女にでもなった気分だ。
準備を終えると私は控え室に向かった。控え室には黒を基調とした正装をしているたくさんの貴族たちでごった返していた。
「オスト様。」
少し端の方を見るとオスト様を始め、ニケお兄様や、アテナお義姉様、お母様や、お父様などが勢揃いしていた。
「メルティ…。とても綺麗だ…。」
「オストさまもとても素敵です。胸元にある赤い薔薇は私の紅の色とお揃いですね。」
オスト様は顔を真っ赤にさせながら後ろ向いた。なぜだか周りの人たちの目がすごく暖かく感じるのは気のせいだろうか。
「2人とも、この続きは後にして頂戴。そろそろ行く時間よ。」
そう言ってオリオンお祖父様を筆頭に夜会の会場に歩き出した。そういえば国王たちが見つからないようだけど…
それにヘルお兄様もいない。デメーテルお義姉様が一人で少し不安そうだ。私はデメーテルお義姉様に寄っていき声をかける。
「デメーテルお義姉様…大丈夫ですか?」
「メーティア…ヘルが全然いなくて…私捨てられちゃったかしら…」
まつげを揺らしてこちらを見てくるお義姉様…女の私から見てもかわいい。儚げ美少女である。こんなかわいい婚約者をヘルお兄様が捨てる?絶対あり得ないだろう。そもそもヘルお兄様はデメーテルお義姉様のことが大好きなのだ。
「大丈夫ですよ。きっとすぐ会えます。おひとりでは寂しいかもしれませんが、ヘルお兄様を信じて待ちましょう。」
デメーテルお義姉様が「そうね…大丈夫よね…信じて待っているわ。」とこちらに笑顔を向けた。
オスト様のところに戻りたいが、このままではデメーテルお義姉様が一人になってしまう…ひとりで悶々と考えていると、アテナお義姉様とニケお兄様がやってきた。
「メーティア。お前はヘリーオスト王太子殿下の近くに居なさい。私がデメーテルと一緒にいる。」
そう言って肩をポンと優しく押された。アテナお義姉様とニケお兄様が近くにいてくれるなら安心できるたえ私は急いでオスト様のところに戻った。
「大丈夫だったかい?デメーテル嬢は」
「はい…ヘルお兄様がいないことで少し不安になっていたようです。それにあんな儚げ美少女ですが…お強いですから。」
辺境伯家。この国と隣国との境に領地をもつ一族で、幾度となく争いをしてきた領地だ。そんなところのご息女であれば、剣も馬も乗りこなす。見た目の可憐さとは正反対なのがデメーテルお義姉様だ。
「ならいいが…」
扉の前につくと、国王陛下とガイア王妃がゆっくりとこちらに近づいてきた。
どうやらギリギリまで知られないように地下牢に隠れていたらしい。
アルマンが二人を連れてきてくれたようだ。
皆が一斉に片膝をついて挨拶をしようとする中、しなくていいと片手で制した。
「さて、中に入ろうか…」
オルフェウスお祖父様とオリオンお祖父さまがゆっくりと扉を開いた。
「お楽しみのところすまないね。私たちもぜひその夜会に参加させてくれないだろうか。」
国王陛下がいつもよりも低い声で話すと、皆がしりもちをついて後ろに下がっていく。
「お、お、おおおお叔父上…なぜ生きて…?」
「なんだ?生きていたらおかしいのか?」
だんまりしてしまうアポロを横目に私たちは階段が続くエントランスホールに向かった。踵を返し上から皆を見下ろす。
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国王陛下の言葉に皆が震えあがった。
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