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建国祭
ヘルメントお兄様からの手紙。
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アーテリアとアポロ様と会ってから早くも1ヶ月が過ぎようとしていた。
アーテリアとアポロ様は王宮に何度も通ってはいるものの、私たちの前に顔を出すということはなかった。
話に出てくることは度々あったが…あの時もそうだったが、申請せずに庭を使用していたり、他のご婦人たちのお茶会にアーテリアは勝手に参加するなど好き勝手やっているらしい…
いくら他のご婦人たちが怒っても「私は王妃になるのよ!そんな態度とってもいいわけ!?」といって、お菓子や紅茶を飲むだけ飲んで帰っていくのだそうだ…
それを聞くと、あのふくよかな身体になったことも頷ける。
建国祭の準備はほとんど終わり、あとはドレスができるのを待つくらいだ。
今回の建国祭では、ヘリーオスト王太子殿下の婚約者を国民たちにお披露目することにもなっている。皆の前で話すことは無いけれど、王太子の婚約者として毅然とした態度で佇まなくてはならない。
夜会のダンスの練習や、礼儀作法の練習は練習した分だけうまくなるし、情報も集めた分だけ知識になる。準備ができたからといってそれで終わらせないように時間が許す限りは色々なことを行っている。
ドレスについては流行の最先端をいかなくてはならないということで色々相談しながら着々と準備が進められていった。因みに今回のドレスの色は、鮮やかな赤い色である。少し派手すぎるのではないかとも思ったが、赤いドレスにダイヤが散りばめられている。それがキラキラと光っており、とてもきれいなドレスに仕上がりそうだ。
因みにオスト王太子は白いスーツに赤いマントを付けることになっているらしい。タイは私と同じ赤色でタイピンにダイヤがあしらわれているらしい。
二つで対になる装いということで今からとても楽しみだ。
ドレスのデザイン決めなどを終えて、オスト王太子と二人執務室でゆっくり紅茶をいただいていると、少し急いでいる様子の足音が外から聞こえてきた。
「ヘリーオスト王太子殿下。いらっしゃいますか!?」
「あぁ、そんなに慌ててどうしたんだ?」
一人の従者が扉を開けて入ってくる。
その従者はヘルメントお兄様の従者、アーロンだった。
「あら、アーロンじゃない。そんなに急いでどうしたの?」
「こちらヘルメント様からの手紙です。急ぎヘリーオスト王太子殿下に渡すように言付かっております。それとこちらはメーティア様お嬢様にと…」
アーロンは私にもお兄様からの手紙を渡した。
アーロンの顔を見るにヘルお兄様に何か異変があったのは何となくわかったので急いで手紙を開ける。
ーーーーーーーーーー
メルティへ
元気かい?最近なかなか手紙が出せなくてすまなかった。
この手紙が届いているということは、年始に皆と会って以来一か月以上は経っているということになる。
仕事以外であまり手紙を書くことがないからか、少し恥ずかしく感じるな…
僕が今、ダルデンヌ公爵領に潜伏しているのは知っているだろう?
年末少し前くらいからだろうか…父上には伝えていたが、ダルデンヌ公爵領の状態があまりよくない状態になっていたんだ。
そのあたりの話は、きっと父上やオストが知っているだろう。
後で話を聞いてみるといい…。
取りあえずこれだけは最愛の妹に伝えておきたいと思った。
いいかい。春を明けるまでは一人で行動してはいけないよ。
建国祭でのメルティの晴れ姿を楽しみにしていたんだが…恐らく見に行くことは難しいだろう。
ニケ兄上の結婚式も行けそうにない…
どうか僕が、二人のことを祝っていたと伝えてくれ。
春先といってもまだまだ肌寒い季節だ。無理して体調は崩さないようにな。
メルティにとってこれからの人生が幸せなものになることを祈っている。
ヘルメント・コルベール
ーーーーーーーーーーーー
「オスト様…この手紙は…」
最後の別れのような手紙で目に涙が浮かんでくる。
「あぁ…ヘルメントは自分に何かあったときに手紙を届けるようアーロンに言っていたのだろう…アーロン。ヘルメントの状況を話せ。」
オスト様も手紙を読み終えたようだ。似たようなことが書いてあったのか、それとももっと詳しい内容が書かれていたのかはわからないが、手紙を持つ手が震えている…
「はい、ヘルメント様ですが…実は年末年始に一度コルベール領に帰還された後から連絡が取れない状態になっています。元々こちらの手紙は1ヶ月帰らなかったら二人に渡してほしいと言われていたものです。ヘルメント様のことですから、のらりくらりとしていそうな気もしますが…」
確かにヘルお兄様があまりヘマをするようには見えない。
口は達者だし、周りに溶け込むのもうまい人だ。ただ隠れているだけなのか…それともヘルお兄様の身に何か危険があったのか…
「なるほどな…ヘルはこの手紙を渡すときに何か言っていなかったか…?」
「そうですね…特に何か言っている感じはなかったのですが…できれば自分はいないものとして扱ってほしいとかは言っていた気がします。」
「いないものとして…。」
普通だったらいないものとしてなんて言葉は言わないはずだ。と、いうことはこの言葉を伝えるようにアーロンへは伝えていたはず…
「オスト様…」
「あぁ、ヘルは恐らく何かしようとしてあえて連絡を取らずにいなくなったんだろうな。この件は、まだここにいるものだけの秘密にしておこう。どこに保守派が隠れているかわからない。」
ヘルお兄様の身にもし危険があったのだとしたら…と少しドキドキしたけれど…
よくよく考えればコルベール家の人間がそうそう簡単にやられるはずがないだろう。
何しろ軍神アレウスの息子なのだ。
私はこの手紙を胸に抱いて、ヘルメントお兄様の無事を祈った。
アーテリアとアポロ様は王宮に何度も通ってはいるものの、私たちの前に顔を出すということはなかった。
話に出てくることは度々あったが…あの時もそうだったが、申請せずに庭を使用していたり、他のご婦人たちのお茶会にアーテリアは勝手に参加するなど好き勝手やっているらしい…
いくら他のご婦人たちが怒っても「私は王妃になるのよ!そんな態度とってもいいわけ!?」といって、お菓子や紅茶を飲むだけ飲んで帰っていくのだそうだ…
それを聞くと、あのふくよかな身体になったことも頷ける。
建国祭の準備はほとんど終わり、あとはドレスができるのを待つくらいだ。
今回の建国祭では、ヘリーオスト王太子殿下の婚約者を国民たちにお披露目することにもなっている。皆の前で話すことは無いけれど、王太子の婚約者として毅然とした態度で佇まなくてはならない。
夜会のダンスの練習や、礼儀作法の練習は練習した分だけうまくなるし、情報も集めた分だけ知識になる。準備ができたからといってそれで終わらせないように時間が許す限りは色々なことを行っている。
ドレスについては流行の最先端をいかなくてはならないということで色々相談しながら着々と準備が進められていった。因みに今回のドレスの色は、鮮やかな赤い色である。少し派手すぎるのではないかとも思ったが、赤いドレスにダイヤが散りばめられている。それがキラキラと光っており、とてもきれいなドレスに仕上がりそうだ。
因みにオスト王太子は白いスーツに赤いマントを付けることになっているらしい。タイは私と同じ赤色でタイピンにダイヤがあしらわれているらしい。
二つで対になる装いということで今からとても楽しみだ。
ドレスのデザイン決めなどを終えて、オスト王太子と二人執務室でゆっくり紅茶をいただいていると、少し急いでいる様子の足音が外から聞こえてきた。
「ヘリーオスト王太子殿下。いらっしゃいますか!?」
「あぁ、そんなに慌ててどうしたんだ?」
一人の従者が扉を開けて入ってくる。
その従者はヘルメントお兄様の従者、アーロンだった。
「あら、アーロンじゃない。そんなに急いでどうしたの?」
「こちらヘルメント様からの手紙です。急ぎヘリーオスト王太子殿下に渡すように言付かっております。それとこちらはメーティア様お嬢様にと…」
アーロンは私にもお兄様からの手紙を渡した。
アーロンの顔を見るにヘルお兄様に何か異変があったのは何となくわかったので急いで手紙を開ける。
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メルティへ
元気かい?最近なかなか手紙が出せなくてすまなかった。
この手紙が届いているということは、年始に皆と会って以来一か月以上は経っているということになる。
仕事以外であまり手紙を書くことがないからか、少し恥ずかしく感じるな…
僕が今、ダルデンヌ公爵領に潜伏しているのは知っているだろう?
年末少し前くらいからだろうか…父上には伝えていたが、ダルデンヌ公爵領の状態があまりよくない状態になっていたんだ。
そのあたりの話は、きっと父上やオストが知っているだろう。
後で話を聞いてみるといい…。
取りあえずこれだけは最愛の妹に伝えておきたいと思った。
いいかい。春を明けるまでは一人で行動してはいけないよ。
建国祭でのメルティの晴れ姿を楽しみにしていたんだが…恐らく見に行くことは難しいだろう。
ニケ兄上の結婚式も行けそうにない…
どうか僕が、二人のことを祝っていたと伝えてくれ。
春先といってもまだまだ肌寒い季節だ。無理して体調は崩さないようにな。
メルティにとってこれからの人生が幸せなものになることを祈っている。
ヘルメント・コルベール
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「オスト様…この手紙は…」
最後の別れのような手紙で目に涙が浮かんでくる。
「あぁ…ヘルメントは自分に何かあったときに手紙を届けるようアーロンに言っていたのだろう…アーロン。ヘルメントの状況を話せ。」
オスト様も手紙を読み終えたようだ。似たようなことが書いてあったのか、それとももっと詳しい内容が書かれていたのかはわからないが、手紙を持つ手が震えている…
「はい、ヘルメント様ですが…実は年末年始に一度コルベール領に帰還された後から連絡が取れない状態になっています。元々こちらの手紙は1ヶ月帰らなかったら二人に渡してほしいと言われていたものです。ヘルメント様のことですから、のらりくらりとしていそうな気もしますが…」
確かにヘルお兄様があまりヘマをするようには見えない。
口は達者だし、周りに溶け込むのもうまい人だ。ただ隠れているだけなのか…それともヘルお兄様の身に何か危険があったのか…
「なるほどな…ヘルはこの手紙を渡すときに何か言っていなかったか…?」
「そうですね…特に何か言っている感じはなかったのですが…できれば自分はいないものとして扱ってほしいとかは言っていた気がします。」
「いないものとして…。」
普通だったらいないものとしてなんて言葉は言わないはずだ。と、いうことはこの言葉を伝えるようにアーロンへは伝えていたはず…
「オスト様…」
「あぁ、ヘルは恐らく何かしようとしてあえて連絡を取らずにいなくなったんだろうな。この件は、まだここにいるものだけの秘密にしておこう。どこに保守派が隠れているかわからない。」
ヘルお兄様の身にもし危険があったのだとしたら…と少しドキドキしたけれど…
よくよく考えればコルベール家の人間がそうそう簡単にやられるはずがないだろう。
何しろ軍神アレウスの息子なのだ。
私はこの手紙を胸に抱いて、ヘルメントお兄様の無事を祈った。
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