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建国祭
保守派筆頭。 ヘリーオスト王太子殿下視点。
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「お前には話しておかなければならないな…」
父上は今起きていることを話し始めた。
俺がメルティと婚約する前から色々と動いている人たちがいるのを父上たちは知っていたらしい。最近は王自身が革新派に近い存在ということもあり、保守派が焦りを見せていることも何となくだが気づいていたそうだ。
「保守派の一番上は誰だと思う…?」
保守派はどちらかといえば歴史の浅い貴族たちの方が多かったりする。恐らく、革新派が勢いをつければ自分たちの爵位が取り上げられる可能性が高いと思っているのだろう。
中には革新派と同じ意見の貴族もいるが、そういった人たちはこれまでも領民のために尽くしていた貴族ばかりだ。
「一番有力なのはアーテリアの父親でしょうか。」
アーテリアの父親であれば、俺とアーテリアを無理やり婚約させたことなども頷ける。
「惜しいな…だが違う。実は一番上に立っているのは…エリス・ジュアン。アーテリアの母親だ。」
エリス・ジュアン。確か、レアンドル伯爵家の出だったと記憶している。
「確か、ジュアン夫人はレアンドル伯爵家の出でしたよね。」
「そうだ。今はもうないレアンドル伯爵家の唯一の生き残りだ。」
レアンドル伯爵家は25年前から20年前にかけて保守派を率いて王族と戦ったという記録が残っている。
ちょうど今から25年前は保守派と、革新派の意見が今よりも割れていた。普通であれば革新派が攻めてくるところではないのか…と思うところだが不思議なことに革新派に属する貴族たちは温厚なものが多く、領民のためにもあまり争いをしたくないものが多かった。
領民のことを考えられるか、自分たちのことしか考えられないかで、革新派と保守派に分かれていたという感じだ。
「エリスはちょうど結婚したばかりでジュアン侯爵家に嫁いだばかりだったんだ。普通であれば反意を翻した時点で一族全員処刑のはずだったんだがな。アーテリアの父親であるネレウスがエリスは今回の件とは関係ないと言った。」
本当にエリスが何も知らなかったのかは本人が口を開かなかったこともあり、わからなかったそうだ。
「そしてタイミングよくエリスが子供を身ごもった。それが…」
「アーテリアですね。」
父上はこくりと頷く。子供に罪はないしジュアン侯爵がエリスのことを見張っているといったため、祖父がその言葉を信じて、エリスのお咎めはなしになった。
ただ、祖父がその言葉を信じても父上は信じることができなかったらしい。
「エリスとは世代が一緒だからな…ヘシオネリアについてもあまりいい噂はなかったが、エリスもエリスでいい噂がなかった。私たちの親世代は騙されていたようだが…」
俺も何度かジュアン侯爵夫人を見たことがあるが、そこまで悪い印象というのはない。寧ろいつもにこにこしているし、誰にでも優しいそんな印象だ。
「それがもう、騙されているんだ。でも、そうだね…これだけは言える。エリスは自分で手を下さないということだ。」
うまく立ち回って周りの感情を増幅させることができるそうだ。特に負の感情を動かすのがうまいらしい。嫉妬心や憎悪などを言葉巧みに操り増幅させて、色々なことを起こしてきた。中には婚約者を取られた人もいるらしい。
ただ一つ弱点があって、相手が自分のことをある程度理解していると効力がないようだ。
「現に、私やガイア、アレウス、アフロディーナにボードリエ公爵、カニャール公爵などには全く通用しなかった。」
確かにこの辺りは皆革新派筆頭の貴族たちだ…
恐らく自分たちの意思をきっちりと持っている人も取り込まれにくいんだろう。
「だからお前とアーテリアを婚約させたんだ。」
話の核心に入るまで結構時間がかかったが、要するにジュアン侯爵夫人を見張るための手札だったということだろう。
「ジュアン侯爵は今何をなさっているんですか?」
「恐らくエリスの言いなりだろうな…エリスのことが好きで好きでたまらないという感じだったからな。」
少しばかり話を聞いて見えてきたことがある。
これからやることも何となくわかってきた。取りあえず保守派を止めてなくてはならないだろう。
決して25年前のようなことを引き起こしてはならない。
確かアーテリアは春ごろと言っていたし、少しだけ時間に余裕があるだろう。
「父上。色々話してくださってありがとうございます。取りあえず春ごろことをなそうとしているのはアーテリアたちの話を聞いていてわかりました。あと3か月ほどしか猶予がないですが…」
「あぁ、それだけあればあの二人が何とかするだろうから大丈夫だ。」
「もしかして…ヘルメントとオルフェウス殿ですか…?」
国王はにやりと笑ってから頷いた。
「あの二人は変装の達人といってもいいだろう。それにアレウスの父親と息子だ。強さも申し分ない。あいつらに勝てるのなんて…恐らくアレウスとニケオスくらいだろうな。だからそれまでは知らないフリをして過ごすように…」
それだけ言うと父上はまた書類に顔を向けた。
俺はその姿を横目に執務室を退室した。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
ウラヌス視点。
「よかったのか?あんなに話してしまって。」
アレウスが応接室から出てくる。
「どうせ、いつか知られることだったのだ。それにエリスについてはまだ尻尾を出さないだろう。」
「確かにそうだが…。」
エリスは良くも悪くも昔から頭が回る。頭が回るから周りがうまく口車に乗せられるのだろうが…
25年前の件が悪化したのはきっとエリスが絡んでいたからなのだろう
嫉妬心をみると煽ってしまうし、笑顔を浮かべながら罵倒するような奴だ。
精神的に追い詰められる奴も何人も見てきた。
「あと3か月か。これで少しは楽になればいいが…」
「そうだな。アレウスは引き続きアーテリアたちの動向を陰から見ていてくれ…」
皆には伝えていないが、アレウスはアーテリアとアポロをいつも陰から追っている。理由はエリスのことで何か手掛かりになるのではないかと思っているからだ。
「わかっているさ。取りあえず次こそエリスを捕まえられるようにしよう。出ないと、またたくさんの犠牲者が出ることになる…」
アレウスと軽く二人でこぶしをぶつけあった。
父上は今起きていることを話し始めた。
俺がメルティと婚約する前から色々と動いている人たちがいるのを父上たちは知っていたらしい。最近は王自身が革新派に近い存在ということもあり、保守派が焦りを見せていることも何となくだが気づいていたそうだ。
「保守派の一番上は誰だと思う…?」
保守派はどちらかといえば歴史の浅い貴族たちの方が多かったりする。恐らく、革新派が勢いをつければ自分たちの爵位が取り上げられる可能性が高いと思っているのだろう。
中には革新派と同じ意見の貴族もいるが、そういった人たちはこれまでも領民のために尽くしていた貴族ばかりだ。
「一番有力なのはアーテリアの父親でしょうか。」
アーテリアの父親であれば、俺とアーテリアを無理やり婚約させたことなども頷ける。
「惜しいな…だが違う。実は一番上に立っているのは…エリス・ジュアン。アーテリアの母親だ。」
エリス・ジュアン。確か、レアンドル伯爵家の出だったと記憶している。
「確か、ジュアン夫人はレアンドル伯爵家の出でしたよね。」
「そうだ。今はもうないレアンドル伯爵家の唯一の生き残りだ。」
レアンドル伯爵家は25年前から20年前にかけて保守派を率いて王族と戦ったという記録が残っている。
ちょうど今から25年前は保守派と、革新派の意見が今よりも割れていた。普通であれば革新派が攻めてくるところではないのか…と思うところだが不思議なことに革新派に属する貴族たちは温厚なものが多く、領民のためにもあまり争いをしたくないものが多かった。
領民のことを考えられるか、自分たちのことしか考えられないかで、革新派と保守派に分かれていたという感じだ。
「エリスはちょうど結婚したばかりでジュアン侯爵家に嫁いだばかりだったんだ。普通であれば反意を翻した時点で一族全員処刑のはずだったんだがな。アーテリアの父親であるネレウスがエリスは今回の件とは関係ないと言った。」
本当にエリスが何も知らなかったのかは本人が口を開かなかったこともあり、わからなかったそうだ。
「そしてタイミングよくエリスが子供を身ごもった。それが…」
「アーテリアですね。」
父上はこくりと頷く。子供に罪はないしジュアン侯爵がエリスのことを見張っているといったため、祖父がその言葉を信じて、エリスのお咎めはなしになった。
ただ、祖父がその言葉を信じても父上は信じることができなかったらしい。
「エリスとは世代が一緒だからな…ヘシオネリアについてもあまりいい噂はなかったが、エリスもエリスでいい噂がなかった。私たちの親世代は騙されていたようだが…」
俺も何度かジュアン侯爵夫人を見たことがあるが、そこまで悪い印象というのはない。寧ろいつもにこにこしているし、誰にでも優しいそんな印象だ。
「それがもう、騙されているんだ。でも、そうだね…これだけは言える。エリスは自分で手を下さないということだ。」
うまく立ち回って周りの感情を増幅させることができるそうだ。特に負の感情を動かすのがうまいらしい。嫉妬心や憎悪などを言葉巧みに操り増幅させて、色々なことを起こしてきた。中には婚約者を取られた人もいるらしい。
ただ一つ弱点があって、相手が自分のことをある程度理解していると効力がないようだ。
「現に、私やガイア、アレウス、アフロディーナにボードリエ公爵、カニャール公爵などには全く通用しなかった。」
確かにこの辺りは皆革新派筆頭の貴族たちだ…
恐らく自分たちの意思をきっちりと持っている人も取り込まれにくいんだろう。
「だからお前とアーテリアを婚約させたんだ。」
話の核心に入るまで結構時間がかかったが、要するにジュアン侯爵夫人を見張るための手札だったということだろう。
「ジュアン侯爵は今何をなさっているんですか?」
「恐らくエリスの言いなりだろうな…エリスのことが好きで好きでたまらないという感じだったからな。」
少しばかり話を聞いて見えてきたことがある。
これからやることも何となくわかってきた。取りあえず保守派を止めてなくてはならないだろう。
決して25年前のようなことを引き起こしてはならない。
確かアーテリアは春ごろと言っていたし、少しだけ時間に余裕があるだろう。
「父上。色々話してくださってありがとうございます。取りあえず春ごろことをなそうとしているのはアーテリアたちの話を聞いていてわかりました。あと3か月ほどしか猶予がないですが…」
「あぁ、それだけあればあの二人が何とかするだろうから大丈夫だ。」
「もしかして…ヘルメントとオルフェウス殿ですか…?」
国王はにやりと笑ってから頷いた。
「あの二人は変装の達人といってもいいだろう。それにアレウスの父親と息子だ。強さも申し分ない。あいつらに勝てるのなんて…恐らくアレウスとニケオスくらいだろうな。だからそれまでは知らないフリをして過ごすように…」
それだけ言うと父上はまた書類に顔を向けた。
俺はその姿を横目に執務室を退室した。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
ウラヌス視点。
「よかったのか?あんなに話してしまって。」
アレウスが応接室から出てくる。
「どうせ、いつか知られることだったのだ。それにエリスについてはまだ尻尾を出さないだろう。」
「確かにそうだが…。」
エリスは良くも悪くも昔から頭が回る。頭が回るから周りがうまく口車に乗せられるのだろうが…
25年前の件が悪化したのはきっとエリスが絡んでいたからなのだろう
嫉妬心をみると煽ってしまうし、笑顔を浮かべながら罵倒するような奴だ。
精神的に追い詰められる奴も何人も見てきた。
「あと3か月か。これで少しは楽になればいいが…」
「そうだな。アレウスは引き続きアーテリアたちの動向を陰から見ていてくれ…」
皆には伝えていないが、アレウスはアーテリアとアポロをいつも陰から追っている。理由はエリスのことで何か手掛かりになるのではないかと思っているからだ。
「わかっているさ。取りあえず次こそエリスを捕まえられるようにしよう。出ないと、またたくさんの犠牲者が出ることになる…」
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