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建国祭
噂をしていないけど現れた二人。
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建国祭が1か月後に迫ってきた昼下がり、私は色々と準備があるため王宮を駆け回っていた。
他国の王侯貴族への招待状の準備や、宿泊場所の手配、ドレスの準備、貴族名簿をみてくる方々の名前を一致させるなど細かいことまで行い始めたらキリがない…。
「アーテリアは今まで、建国祭や夜会などどうやって乗り切っていたのかしら…」
まぁ、あの子のことだ。何もせずにのらりくらりと過ごしていたか、挨拶もせずにほっつき歩いていたかもしれない。
オスト様もアーテリアのことを婚約者として紹介したい感じはなかったし、後者の可能性が高いだろう。
「メルティ…そろそろ一度休憩にしないか?春の庭園の花が少しずつ咲き始めているんだ。よかったら一緒に見ながらお茶でもどうだろうか…。」
朝早くに登城してからいつの間にかお昼も過ぎていた。4時間以上は集中して作業していたのだろう。私はオスト様からの誘いに頷いた。
「そうですね…そろそろ一度休憩いたしましょう。春の庭園には実は一度も言ったことがないので少し楽しみです。」
この国は春に建国祭や夜会などイベントが盛りだくさんなため、春のお茶会が行われるのが夏に近い季節に行われることが多い。
タイミングもあるだろうが、建国祭や夜会の後は一度領地に帰ることが多いため、なかなか春のお茶会に参加することが難しかった。
「確かコルベール領では春から夏にかけての季節は、雨季に当たるんだったよな。」
「そうですね…他の領地は同じかわかりませんが…我が領地では雨季の間に災害が起きる可能性がすごく高いんです。土砂災害や川の氾濫なども起きたりします…こればかりは自然様の力なので私たちで調整などできないんですよね…」
少しでも雨の量を調整できれば、野菜などももっと育ちやすくいい土地になるのだろうが、こればっかりはうまくいかない…
「そのお陰でメルティの初めてをもらえたわけだ。春の庭園は秋の庭園とは違う意味で花がすごいカラフルなものが多いんだ。まだ咲き始めだから蕾が多いのだが、もう少ししたら見ごろを迎えるだろう。その時また一緒にお茶をしよう。」
2人で話しながら春の庭園に向かうと、なぜだか知らないが、見知った顔の二人組がガゼボに座っていた。
「あ、あの…あの二人は…」
「あ、あぁ…男の方は見たことがある顔だな…」
オスト様は体型の変わったアーテリアを見た事が無かっただろうか。
「女性の方は記憶が無いですか?」
「あんなにふくよかな女性の知り合いはいなかったと記憶しているが…。アポロ様の趣味は変わっているな。」
確かに秋のお茶会よりも全体的に大きくなっているが
、あれはアーテリアだろう。
アポロの趣味が変わっているのか、それともアポロ様がアーテリアに興味が無いのかは謎な所である…。
今もアーテリアはケーキを頬張っているし、アポロ様は自分を鏡で見てニヤニヤしている。
「あの女性。オスト様の元婚約者、アーテリアですよ。」
淡々とオスト様に事実のみをお伝えするとオスト様は私とアーテリアのことを交互に見る。
「え、え、えっと…ん?俺の耳がおかしくなったか…?」
「安心してください。正常です。ね…?アルマン。」
「えぇ、ヘリーオスト王太子殿下の目も耳も健康そのものですよ。」
庭園は前もって申請すれば借りることが可能だ。これは王妃様に変わってからできた制度で、花も見てもらった方が嬉しいだろうと言うこと。
使用料を取ることで、災害時や戦争時の復興支援、孤児院運営資金に充てられるようにという目的で始まったものである。
使用料の金額は1回使用で金貨1枚以上で上限は決めていない。あくまでも皆さんの善意の金額で…というスタンスだ。
なので、金貨1枚を当分に割る人もいれば、それぞれ金貨1枚ずつ支払う人など様々である。
「そ、そうか…あまりの変わりようにびっくりしてしまった。アルマン、たしか今日ここの使用申請は入っていなかったはずだが…。」
「えぇ。私が確認しましたし間違いございません。恐らくですが、申請しなくては使えないことをしらないのではないでしょうか」
アルマンの話を聞いていて確かに有り得そうだと皆が頷く。あまり二人に関わりたくない所だがこのままという訳にはいかないだろう。
他の人達にも迷惑を掛けかけかねない行為だし、皆が規則を守るからこそ気持ちよく使用出来る。
「バネッサ。何が起こるかわからないから貴方は衛兵を呼んできてちょうだい。」
「アルマン、お前は待機だ。ダルデンヌ公爵とジュアン公爵が出て来る可能性もある。何かあれば父上に連絡を…」
オスト様も同意見だったようで、2人に指示を出すと私たちは意を決して2人のところに向かった。
「アポロにアーテリア。久しぶりだね。ここは使用申請が必要なはずだが君たちは申請しているのかい?」
「お前は…だれだ?私は公爵家だぞ。そんな態度を取っていいと思っているのか。」
恐らくアポロ様に私の顔は写っていないのだろうけど、数ヶ月前に会っているはずの王太子と顔を忘れたのだろうか…。
呆れた顔で二人を見ているとアーテリアと目が合った。
「あら、メーティアじゃない!久しぶりね?貴方もこんないい男連れて…もしかして王太子に飽きちゃった?そうよね。あんなダサい男と一緒に居れないわよね。」
アーテリア…。そのダサいと言った方こそがこの国の王太子なのだけど…。
この2人本当に周りを見ていないのだろうか。
頭が悪いにも程がある。それとも目が悪くてオスト様の顔が見えていないのか…。
一言会話するだけでこんなに不快になるのはこの2人とこの家族くらいなものである。
他国の王侯貴族への招待状の準備や、宿泊場所の手配、ドレスの準備、貴族名簿をみてくる方々の名前を一致させるなど細かいことまで行い始めたらキリがない…。
「アーテリアは今まで、建国祭や夜会などどうやって乗り切っていたのかしら…」
まぁ、あの子のことだ。何もせずにのらりくらりと過ごしていたか、挨拶もせずにほっつき歩いていたかもしれない。
オスト様もアーテリアのことを婚約者として紹介したい感じはなかったし、後者の可能性が高いだろう。
「メルティ…そろそろ一度休憩にしないか?春の庭園の花が少しずつ咲き始めているんだ。よかったら一緒に見ながらお茶でもどうだろうか…。」
朝早くに登城してからいつの間にかお昼も過ぎていた。4時間以上は集中して作業していたのだろう。私はオスト様からの誘いに頷いた。
「そうですね…そろそろ一度休憩いたしましょう。春の庭園には実は一度も言ったことがないので少し楽しみです。」
この国は春に建国祭や夜会などイベントが盛りだくさんなため、春のお茶会が行われるのが夏に近い季節に行われることが多い。
タイミングもあるだろうが、建国祭や夜会の後は一度領地に帰ることが多いため、なかなか春のお茶会に参加することが難しかった。
「確かコルベール領では春から夏にかけての季節は、雨季に当たるんだったよな。」
「そうですね…他の領地は同じかわかりませんが…我が領地では雨季の間に災害が起きる可能性がすごく高いんです。土砂災害や川の氾濫なども起きたりします…こればかりは自然様の力なので私たちで調整などできないんですよね…」
少しでも雨の量を調整できれば、野菜などももっと育ちやすくいい土地になるのだろうが、こればっかりはうまくいかない…
「そのお陰でメルティの初めてをもらえたわけだ。春の庭園は秋の庭園とは違う意味で花がすごいカラフルなものが多いんだ。まだ咲き始めだから蕾が多いのだが、もう少ししたら見ごろを迎えるだろう。その時また一緒にお茶をしよう。」
2人で話しながら春の庭園に向かうと、なぜだか知らないが、見知った顔の二人組がガゼボに座っていた。
「あ、あの…あの二人は…」
「あ、あぁ…男の方は見たことがある顔だな…」
オスト様は体型の変わったアーテリアを見た事が無かっただろうか。
「女性の方は記憶が無いですか?」
「あんなにふくよかな女性の知り合いはいなかったと記憶しているが…。アポロ様の趣味は変わっているな。」
確かに秋のお茶会よりも全体的に大きくなっているが
、あれはアーテリアだろう。
アポロの趣味が変わっているのか、それともアポロ様がアーテリアに興味が無いのかは謎な所である…。
今もアーテリアはケーキを頬張っているし、アポロ様は自分を鏡で見てニヤニヤしている。
「あの女性。オスト様の元婚約者、アーテリアですよ。」
淡々とオスト様に事実のみをお伝えするとオスト様は私とアーテリアのことを交互に見る。
「え、え、えっと…ん?俺の耳がおかしくなったか…?」
「安心してください。正常です。ね…?アルマン。」
「えぇ、ヘリーオスト王太子殿下の目も耳も健康そのものですよ。」
庭園は前もって申請すれば借りることが可能だ。これは王妃様に変わってからできた制度で、花も見てもらった方が嬉しいだろうと言うこと。
使用料を取ることで、災害時や戦争時の復興支援、孤児院運営資金に充てられるようにという目的で始まったものである。
使用料の金額は1回使用で金貨1枚以上で上限は決めていない。あくまでも皆さんの善意の金額で…というスタンスだ。
なので、金貨1枚を当分に割る人もいれば、それぞれ金貨1枚ずつ支払う人など様々である。
「そ、そうか…あまりの変わりようにびっくりしてしまった。アルマン、たしか今日ここの使用申請は入っていなかったはずだが…。」
「えぇ。私が確認しましたし間違いございません。恐らくですが、申請しなくては使えないことをしらないのではないでしょうか」
アルマンの話を聞いていて確かに有り得そうだと皆が頷く。あまり二人に関わりたくない所だがこのままという訳にはいかないだろう。
他の人達にも迷惑を掛けかけかねない行為だし、皆が規則を守るからこそ気持ちよく使用出来る。
「バネッサ。何が起こるかわからないから貴方は衛兵を呼んできてちょうだい。」
「アルマン、お前は待機だ。ダルデンヌ公爵とジュアン公爵が出て来る可能性もある。何かあれば父上に連絡を…」
オスト様も同意見だったようで、2人に指示を出すと私たちは意を決して2人のところに向かった。
「アポロにアーテリア。久しぶりだね。ここは使用申請が必要なはずだが君たちは申請しているのかい?」
「お前は…だれだ?私は公爵家だぞ。そんな態度を取っていいと思っているのか。」
恐らくアポロ様に私の顔は写っていないのだろうけど、数ヶ月前に会っているはずの王太子と顔を忘れたのだろうか…。
呆れた顔で二人を見ているとアーテリアと目が合った。
「あら、メーティアじゃない!久しぶりね?貴方もこんないい男連れて…もしかして王太子に飽きちゃった?そうよね。あんなダサい男と一緒に居れないわよね。」
アーテリア…。そのダサいと言った方こそがこの国の王太子なのだけど…。
この2人本当に周りを見ていないのだろうか。
頭が悪いにも程がある。それとも目が悪くてオスト様の顔が見えていないのか…。
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