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建国祭

つかの間の休息。

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早いもので年が明けてから一か月が過ぎた。
この一か月の間でお菓子などの商品化が進み、まずはコルベール領の屋台通りでケーキやお菓子を露店販売してみることにした。それがうまくいけば王都に進出、ゆくゆくは他領にも出店できればいいと思っている。

「この1週間売れ行きは上々のようですね。」


「そうね…コルベール領ではナッツやクルミ、ドライフルーツなど食べるのが普通だから食べやすいのかもしれないわ。」

今回はドライフルーツの専門店として出店している。ドライフルーツはそれぞれ好きな量購入できるようにしており、それとは別にお菓子類などを置いているという感じだ。
紅茶に関しては色々な茶葉をおいて、それに合わせて好きなドライフルーツを入れて飲んでもらえるようにしている。その場で飲むことも可能ではあるが、買って帰って家で食べる人が多いようだ。

以前はあまりお茶会などに参加をする事がなかったが、自分が作ったお菓子などを広めるためにも自発的に色々なお茶会に参加するようにしている。
そのお陰か、数名友人と呼べるような方たちに出会うことができた。
今までは家にこもってばかりだったから少しずつ世界が広がってきているようで面白くもある。

お母様も私とは別のお茶会に参加してくださっており、色々な方に私の作ったお菓子などを進めてくださっているようだ。

おかげで店先に行かなくても購入する方法がないのかなど手紙をもらうことが増えた。


公務と言えば、最近隣国の王太子がこちらの国に外交のために訪れていたため、オスト様の婚約者として参列した。もしかしたらダルデンヌ公爵たちにお会いするのではないかとドキドキしていたが、来ておらずホッとした記憶が新しい。

「今日は久しぶりのお休みだし、家でゆっくり本でも読もうかしら。本を読むのも久しぶりだわ…」


「いいですね。旦那様や奥様も今日はボードリエ公爵邸に行っておりますし、ニケ様はアテナ様のところに行っております。今日は少し気温も暖かいですし、お庭でお茶を飲みながら読書なんていかがでしょうか。」

家の中が静かだなと思っていたら、まさかお父様たちが出かけていないとは思っていなかった。
ボードリエ公爵ということはお母さまのご実家だし、きっと用事があっていっているのだろう。オスト様も今日はお家でゆっくりするといっていたし、庭先で読書もいいかもしれない。

家の中の書斎に向かうと買うだけ買ってそのまま積みあがっている本たちが片隅に置いてある。そういえば買うだけ買ってそのままになっていたような気がする…。それだけ他の部分で充実した生活を送っているということなのだろうけど、このままにしておくのは本に申し訳ないので、急いで書棚に片付けた。


本を片付けた後、読みたい本を一冊だけ手に持ち書斎をでて庭に向かうとバネッサがすでに準備を整えてくれていた。


「バネッサ…準備してくれてありがとう!」


「とんでもないです。さぁこちらにお座りください。」

いつもより静かな庭で小鳥のさえずりを聞きながらゆっくり紅茶を飲む。まだ陽も高い位置にあり、本を読むにはとてもいい時間帯だ。本を開いてゆっくり文字を目で追った。



⟡.·*.··············································⟡.·*.


ヘリーオスト王太子殿下視点。

「今日はメーティア様も休暇ではありませんか。なかなか2人そろっての休暇なんて珍しいので一緒に過ごすのかと思っていたのですが、よいのですか?」


確かに、一緒に城下町に行くことや、歌劇を観に行くことも考えていたが、年末年始もずっと一緒にいたし、少し一人の時間を満喫するのもいいかもしれないと思った。恐らくメルティも今頃は本でも読んでるのではないだろうか。


「確かに一緒にいたいところではあるが…たまにはお互い一人の時間を作るのも大事だろう。」


「確かに…メーティア様もここまでほとんどお休みなしで頑張っておりましたし、気持ち的にも休む時間が必要かもしれませんね。」
アルマンの言う通り、急に婚約者が変わって王族の婚約者となったのだ。王妃教育をはじめ、お茶会があったり、外交があったりと大変だっただろう。

それに、この休みが終わればまた忙しい日々が始まる。
春には建国祭、王族主催の夜会もある。それにニケオスの結婚式もあったはずだ。
それに、アーテリアとアポロ、ダルデンヌ公爵にジュアン侯爵がこのまま動かないとは思えない。きっと何かしら動いてくるだろう。

まぁその前にコルベール家と、ボードリエ家が何もしないとは言い切れないが…あそこの家二つを敵に回すのは相当頭が悪いやつらか勝てる見込みがある奴らくらいだろう。まぁ勝てる見込みがないから今までも誰一人逆らうことすらしてこなかったわけだが…

「春の健国祭まで、何事もなく終わればいいな。」


「そうですね…。」

アルマンの淹れてくれた紅茶に手を伸ばしながら久しぶりに本を読み始めた。
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