婚約者を交換ですか?いいですよ。ただし返品はできませんので悪しからず…

ゆずこしょう

文字の大きさ
上 下
28 / 51
年の始まり

大人たちの話し合い② ウラヌス国王陛下視点

しおりを挟む

「父上、母上。お願いがございます。」


「なんだ…そんなに急いで。聞いてみて次第だが、どんな願いだ?」

普段はあまり急いだりしないオストが急に執務室までやってきたと思えば、頼みたいことがあるという。珍しいこともあるものだなと思って聞いてみると、年越しはコルベール領に行きたいということだった。

「なんだと!?コルベール領にか?いいな…私も行きたい!ガイアはどうだ?」


「そうですね。最近は全然王都から出ていませんし、コルベール領でしたらアフロディーナお姉様にもお会いできます。賛成ですわ!」

オストはなぜこの二人も行くことになっているんだと不思議そうな顔をしていたが、そこは親の力でねじ伏せた。
そして出発当日までコルベールの皆には隠しておくように伝えてこの日は話を終えたのである。


そして数日後、私とガイアは目深くフードを被りオストの後ろをついていく。アレウスとは親友ではあるものの、会うのは決まって王宮ばかり…。あまりコルベール領には来たことがなかったのでとても新鮮だ。

私たちがフードを外せば案の定メルティが吃驚している。この一家あまり表情が動かないだけにわかりにくいが…
何となく吃驚しているのがわかった。一応宿は用意していたが、メルティを見る感じ侍女に指示を出しているので部屋を用意してくれるということなのだろう。メルティについてダイニングルームに案内されると、コルベール一家だけでなく、ボードリエ公爵夫妻も来ていた。


そして皆で食事を始めてから2時間くらい経った頃だろうか。アレウスに執務室へ呼ばれた。


「それで…なんでお前がいるんだ…?仕事は…?」

机をカツカツと叩きながらにらんでくるアレウス。自分の顔面偏差値を考えてほしい。なぜかアレウスの周りだけ吹雪いているように見えるが気のせいだろうか…

「も、も、もちろん終わらせてきた。オストがコルベール領に行くというし、この際一緒に行きたいなとおもってガイアとついてきたのだ。内緒にしていたのは悪かったが…そ、そ、その驚かせたくてだな…」

私が一気に話すと納得はしていなさそうだが、大きなため息をついて「わかった。」と一言だけ返ってきた。
怒られずに済むと安堵していたところ、ぎろりとこちらを睨んでくるアレウス…。とても怖いです。

「次からはきちんと連絡しろ。こちらだってオストだけだと聞いていたんだ。色々準備もある。わかったな?」


「だ、だ、だって…もうすぐ私たちも家族になるじゃないか…仲間外れなんて寂しいこと言わないでくれ…」


「仲間外れにするなんて言っていないだろ?ただ連絡をくれといっているんだ。」

アレウスの言葉に、確かに仲間外れなんて単語はなかったし、オストを家に招待してくれているということは家族として認めてくれているということだったんだろう。申し訳ないことをしたなと思った私は素直にアレウスへ謝罪した。



「気を取り直して、これからのことを少し話しておきたい。久しぶりに父上も帰ってきたので、ね?父上…」

オルフェウスをすごい目で見ているアレウス…あれは戦神のような目だ…恐らく今まで連絡は絵葉書のみということもあり相当怒っているのだろう。そんな二人をみて笑っているのがオリオンだ。
私もいつかこの中で国王としてではなく父親として素直に笑える日がきたらいいなと思ったのは秘密にしておこう。


「す、す、すまない…アレウス。ただ絵葉書は送っていたじゃろう。」


「えぇ…絵葉書だけですが…文章の一つくらい書くことができたと思うんですがね。その手は飾りですか?それとも字を忘れてしまったとかですか?それなら重大ですね。」


「す、す、すすみませんでした…」

アレウスがオルフェウスを詰めている間。オリオンが私の近くの寄ってきて一言、「大丈夫ですよ。不思議とこの家は誰でもなじみやすいですから」と声をかけてくる。

そんなにうらやましそうにしているのが見えただろうか。オリオンを見ると、また二人をみて笑っている。私も思わず二人をみて笑ってしまった。


「さて、本題に入りましょうか…オリオン義父上から。お願いしてもいいですか?」


「そうじゃな…オルフェウスよ。お前当分家に帰ってくるな…」


「え…?まさかの儂、追放?領地から追放?」
オルフェウスの目が点になって訳の分からないことを言っている。


「追放でもいいかもしれませんね。」
アレウスは白い目でオルフェウスを見て一言言い放った。
さっきまでの雰囲気はいったいどこに行ったのだろうか…。

「冗談はさておき、父上がいない間に色々なことが動いているんですよ。父上の手を借りたいのです。帰ってきて変だなと思いませんでしたか?アポロがメルティの婚約者だったのに、ヘリーオスト王太子殿下が婚約者になっているんですよ?」

私たちの中では今までの出来事を知っているから何も気にしていなかったが、オルフェウスはずっと世界旅行に言っていていなかったのだ。だから普通であればアポロが婚約者だと思っていてもおかしくないはず…

「た、確かに…あまりに馴染んでいたから全然気にしとらんかったわい。」
頭を掻きながらのんきに話すオルフェウス。やっぱりすごいマイペースだ。


「はぁ、本当にお前は昔から変わらんな。オルフェウスよ。」
そういうと、今までの出来事を簡潔にオリオンが説明していく。婚約者が交換になったこと。ダルデンヌ公爵家とジュアン侯爵家が資金的にも今危うい状態であることなどだ。
それだけ話すとオルフェウスは何となく理解したのか、先ほどまでのおちゃらけた雰囲気がなくなりった。

「なるほどな…話は何となく分かった。ジュアン侯爵領に潜伏して現状を把握して来いということか…」
やはり、この一家は頭の回転がすごい早い、1言えば10伝わる…さすがだ。

「そういうことだ。ダルデンヌ公爵領はヘルが潜伏している。そうだなできれば次のニケの結婚式までは帰ってくるな。」

ニケオスの結婚式は確か春先だったか…。3,4ヶ月潜伏しろということだろう。

「久しぶりに帰ってきたと思ったら…老人遣いの荒いこと…わかった。メルティのためだ。年明けから行って来よう。」

この日はそれだけ話してお開きになった。

途中から私がいる意味あったんだろうか…なんて思ったが誘われなかったらそれはそれで悲しかったので、誘ってくれてありがとうと思うことにした。

しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

契約結婚のはずが、気づけば王族すら跪いていました

言諮 アイ
ファンタジー
――名ばかりの妻のはずだった。 貧乏貴族の娘であるリリアは、家の借金を返すため、冷酷と名高い辺境伯アレクシスと契約結婚を結ぶことに。 「ただの形式だけの結婚だ。お互い干渉せず、適当にやってくれ」 それが彼の第一声だった。愛の欠片もない契約。そう、リリアはただの「飾り」のはずだった。 だが、彼女には誰もが知らぬ “ある力” があった。 それは、神代より伝わる失われた魔法【王威の審判】。 それは“本来、王にのみ宿る力”であり、王族すら彼女の前に跪く絶対的な力――。 気づけばリリアは貴族社会を塗り替え、辺境伯すら翻弄し、王すら頭を垂れる存在へ。 「これは……一体どういうことだ?」 「さあ? ただの契約結婚のはずでしたけど?」 いつしか契約は意味を失い、冷酷な辺境伯は彼女を「真の妻」として求め始める。 ――これは、一人の少女が世界を変え、気づけばすべてを手に入れていた物語。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

【完結】元婚約者が偉そうに復縁を望んできましたけど、私の婚約者はもう決まっていますよ?

白草まる
恋愛
自分よりも成績が優秀だからという理由で侯爵令息アッバスから婚約破棄を告げられた伯爵令嬢カティ。 元から関係が良くなく、欲に目がくらんだ父親によって結ばれた婚約だったためカティは反対するはずもなかった。 学園での静かな日々を取り戻したカティは自分と同じように真面目な公爵令息ヘルムートと一緒に勉強するようになる。 そのような二人の関係を邪魔するようにアッバスが余計なことを言い出した。

報われなくても平気ですので、私のことは秘密にしていただけますか?

小桜
恋愛
レフィナード城の片隅で治癒師として働く男爵令嬢のペルラ・アマーブレは、騎士隊長のルイス・クラベルへ密かに思いを寄せていた。 しかし、ルイスは命の恩人である美しい女性に心惹かれ、恋人同士となってしまう。 突然の失恋に、落ち込むペルラ。 そんなある日、謎の騎士アルビレオ・ロメロがペルラの前に現れた。 「俺は、放っておけないから来たのです」 初対面であるはずのアルビレオだが、なぜか彼はペルラこそがルイスの恩人だと確信していて―― ペルラには報われてほしいと願う一途なアルビレオと、絶対に真実は隠し通したいペルラの物語です。

【完結】毒を盛るような妹には修道院送りがお似合いです

白草まる
恋愛
体調不良により学園を休学することになった伯爵令嬢ラヴィニア。 医師の診断により毒を盛られたことが原因だと判明した。 そのような犯行に及べる人間は限られており、動機まで考えると妹のリディアが犯人だとしか思えなかった。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います

***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。 しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。 彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。 ※タイトル変更しました  小説家になろうでも掲載してます

お前を愛することはないと言われたので、愛人を作りましょうか

碧桜 汐香
恋愛
結婚初夜に“お前を愛することはない”と言われたシャーリー。 いや、おたくの子爵家の負債事業を買い取る契約に基づく結婚なのですが、と言うこともなく、結婚生活についての契約条項を詰めていく。 どんな契約よりも強いという誓約魔法を使って、全てを取り決めた5年後……。

処理中です...