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年の始まり
デート。
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コルベール領にいる時間はあっという間で年明けをして明日には王都に帰ることになった。
お母様たちはもう少しゆっくりしてから戻るようだ。
ニケお兄様は春に結婚を控えているということもあってアテナお義姉様の領地に行くことになっているらしい。
ヘルお兄様は例のごとくダルデンヌ公爵領に、オルフェウスお祖父様とヘラお祖母様はまた旅行にでも行くと思っていたのだが、他に行かなければならないところができたとか言っていた。なんでもオリオンお祖父さまからの命令らしい。
今まで好きに遊びまわっていたんだからそろそろ手を貸せということだろう…
明日帰るということで、今日は久しぶりに領内を見て回ろうということになりオスト様と二人領内へ足を向けている。
お忍びのためばれないよう町娘風の装いだ。
「オスト様、屋敷でゆっくりしていてもよかったんですよ?」
「こういう時くらいしかメルティと二人の時間を過ごせないし、たまにはいいじゃないか。それともメルティは2人でいるの嫌だった…?」
「い、い、嫌なんてことは全然ないです。」
寧ろ二人で出かけられることに少し浮かれているくらいだ。オスト様は5つ年上ということもあってかやたらと大人びて見える。いつもはピシッとした服装が多いからか商家の子息風の服装が新鮮だ。そして眼鏡姿もとてもかっこいい。さりげなく手を繋いでくるところもまたポイントが高い。
これだけかっこいいとアーテリアも普通に堕ちそうなものだけれど…
きっと最後まで顔を見ることはなかったのだろう。
「何か見たいものでもあるのか?」
「そうですね…これと言って何かあるわけではないんですけど、領内の雰囲気とか見ておきたかったんです。王都に行くとなかなか見れないので…」
王都にいるとなかなかお忍びで城下町を見ることは難しい。視察となってしまうと普段の民の生活がわかりにくかったりするし、一番知りたいのはその時その時の町の雰囲気なのだ…。
「確かにそうだな。視察となると皆委縮してしまって城下町の雰囲気を見ることは難しい。もう少しお忍びで城下町に出られるように考えてみよう。」
オスト様も同じように思っていたようだ。城下町だとオスト様の顔も割れているけど以外に領地だと名前は知っているけど顔までは分からないという方が多いのでありがたい。
「いいですね!城下町を見るのもいいですが、色々な領地を見る際にお忍びで行くのもありかもしれません。以外に領地の方が王族の名前を知っていても顔まで知らない方が多いので…」
肖像画などは見たことあるだろうけど、クオリティ次第では全く似ていないからわからないのである。
2人でゆっくり領内を回っていると、屋台通りに着いた。その名の通り、色々な屋台がある通りだ。お祭りの時期などではなくてもこの通りはずっと屋台が並んでいて、結構人気がある。
「よかったら屋台通りで何か食べませんか。今の時期だと、もつ煮というのがあって体も温まりますし、とてもおいしいんですよ」
もつ煮はある動物の内臓を使って作られている調理法だ。発酵したミソベースになっていてとてもおいしいが、この季節にしか食べられない。
理由として暖かい時期は傷みやすくお腹を下す人が多いからだ。この時期はマイナスの気温がほとんどのため安心して食べることができる。次の日には持ち越せないので、数量限定のお店が多いけど…
「ヘルから聞いたことがあるよ。なんでもこの時期しか食べられない、この地域限定のものなんだろ?しかも数量限定で食べれるかどうかは運次第と聞いている。幻の食材を使っているとも言っていたな…」
目をキラキラさせながら話すオスト様を見て、どれだけお兄様がもつ煮について熱く語ったのか何となくわかった気がする。昔からヘルお兄様の大好物だったし、気持ちはわからなくもなけど…幻は言い過ぎだろうとおもったのはここだけの話だ。
「あ、あちらのお店まだ開店したばかりですし、置いてありそうですよ。」
オスト様の手を引っ張りながら私は屋台に向かった。
「らっしゃい!嬢ちゃん。もつ煮かい?」
「おじさん、こんにちわ!えぇ、もつ煮2つください。」
おじさんはもつ煮を鍋からお玉ですくい、スープ用のお皿に盛っていく。もつ煮は色々な野菜も入っていてお出汁も効いているしとてもおいしい。とくに味のしみ込んだこんにゃくと大根、ニンジンは絶品だ。
最後にふんだんにネギを乗せてくれた。
「2人のおかげで、行列で来てるからねぎはたっぷりサービスしておいたよ。2つで合計銀貨2枚な。」
「ありがとう!」
私はおじさんに銀貨2枚渡すとお皿を受け取り空いている席にオスト様と座った。
屋台通りには屋台通りというだけあってお店の前が通路になっていてそこにいくつかテーブルが置いてある。お店ごとの席というよりは買ったものを座って食べられるようにしているという感じだ。
「色々すまないな。」
「え?何がですか?屋台通りなんて他の領地にない物ですし、始めてくるとオスト様みたいになってしまいます。現に私も初めはそうでした。さ!熱いうちに食べないと勿体ないですよ!」
そう言ってフォークを渡す。
この屋台通り、ヘルお兄様が作ったものでまだ比較的新しいものだ。始める前は皆本当に大丈夫かと思っていたけれど初めて見てからはすごい人気通りとなっている。
「そうだな!次は俺に買わせてくれ。じゃないと恰好がつかないだろう?」
私の頬に付いたねぎを手で取りぺろりと舐める仕草に思わずどきりとしてしまった。
最近はやたら胸がドキドキすることが多い。何かの病気じゃなきゃいいけれど…
お母様たちはもう少しゆっくりしてから戻るようだ。
ニケお兄様は春に結婚を控えているということもあってアテナお義姉様の領地に行くことになっているらしい。
ヘルお兄様は例のごとくダルデンヌ公爵領に、オルフェウスお祖父様とヘラお祖母様はまた旅行にでも行くと思っていたのだが、他に行かなければならないところができたとか言っていた。なんでもオリオンお祖父さまからの命令らしい。
今まで好きに遊びまわっていたんだからそろそろ手を貸せということだろう…
明日帰るということで、今日は久しぶりに領内を見て回ろうということになりオスト様と二人領内へ足を向けている。
お忍びのためばれないよう町娘風の装いだ。
「オスト様、屋敷でゆっくりしていてもよかったんですよ?」
「こういう時くらいしかメルティと二人の時間を過ごせないし、たまにはいいじゃないか。それともメルティは2人でいるの嫌だった…?」
「い、い、嫌なんてことは全然ないです。」
寧ろ二人で出かけられることに少し浮かれているくらいだ。オスト様は5つ年上ということもあってかやたらと大人びて見える。いつもはピシッとした服装が多いからか商家の子息風の服装が新鮮だ。そして眼鏡姿もとてもかっこいい。さりげなく手を繋いでくるところもまたポイントが高い。
これだけかっこいいとアーテリアも普通に堕ちそうなものだけれど…
きっと最後まで顔を見ることはなかったのだろう。
「何か見たいものでもあるのか?」
「そうですね…これと言って何かあるわけではないんですけど、領内の雰囲気とか見ておきたかったんです。王都に行くとなかなか見れないので…」
王都にいるとなかなかお忍びで城下町を見ることは難しい。視察となってしまうと普段の民の生活がわかりにくかったりするし、一番知りたいのはその時その時の町の雰囲気なのだ…。
「確かにそうだな。視察となると皆委縮してしまって城下町の雰囲気を見ることは難しい。もう少しお忍びで城下町に出られるように考えてみよう。」
オスト様も同じように思っていたようだ。城下町だとオスト様の顔も割れているけど以外に領地だと名前は知っているけど顔までは分からないという方が多いのでありがたい。
「いいですね!城下町を見るのもいいですが、色々な領地を見る際にお忍びで行くのもありかもしれません。以外に領地の方が王族の名前を知っていても顔まで知らない方が多いので…」
肖像画などは見たことあるだろうけど、クオリティ次第では全く似ていないからわからないのである。
2人でゆっくり領内を回っていると、屋台通りに着いた。その名の通り、色々な屋台がある通りだ。お祭りの時期などではなくてもこの通りはずっと屋台が並んでいて、結構人気がある。
「よかったら屋台通りで何か食べませんか。今の時期だと、もつ煮というのがあって体も温まりますし、とてもおいしいんですよ」
もつ煮はある動物の内臓を使って作られている調理法だ。発酵したミソベースになっていてとてもおいしいが、この季節にしか食べられない。
理由として暖かい時期は傷みやすくお腹を下す人が多いからだ。この時期はマイナスの気温がほとんどのため安心して食べることができる。次の日には持ち越せないので、数量限定のお店が多いけど…
「ヘルから聞いたことがあるよ。なんでもこの時期しか食べられない、この地域限定のものなんだろ?しかも数量限定で食べれるかどうかは運次第と聞いている。幻の食材を使っているとも言っていたな…」
目をキラキラさせながら話すオスト様を見て、どれだけお兄様がもつ煮について熱く語ったのか何となくわかった気がする。昔からヘルお兄様の大好物だったし、気持ちはわからなくもなけど…幻は言い過ぎだろうとおもったのはここだけの話だ。
「あ、あちらのお店まだ開店したばかりですし、置いてありそうですよ。」
オスト様の手を引っ張りながら私は屋台に向かった。
「らっしゃい!嬢ちゃん。もつ煮かい?」
「おじさん、こんにちわ!えぇ、もつ煮2つください。」
おじさんはもつ煮を鍋からお玉ですくい、スープ用のお皿に盛っていく。もつ煮は色々な野菜も入っていてお出汁も効いているしとてもおいしい。とくに味のしみ込んだこんにゃくと大根、ニンジンは絶品だ。
最後にふんだんにネギを乗せてくれた。
「2人のおかげで、行列で来てるからねぎはたっぷりサービスしておいたよ。2つで合計銀貨2枚な。」
「ありがとう!」
私はおじさんに銀貨2枚渡すとお皿を受け取り空いている席にオスト様と座った。
屋台通りには屋台通りというだけあってお店の前が通路になっていてそこにいくつかテーブルが置いてある。お店ごとの席というよりは買ったものを座って食べられるようにしているという感じだ。
「色々すまないな。」
「え?何がですか?屋台通りなんて他の領地にない物ですし、始めてくるとオスト様みたいになってしまいます。現に私も初めはそうでした。さ!熱いうちに食べないと勿体ないですよ!」
そう言ってフォークを渡す。
この屋台通り、ヘルお兄様が作ったものでまだ比較的新しいものだ。始める前は皆本当に大丈夫かと思っていたけれど初めて見てからはすごい人気通りとなっている。
「そうだな!次は俺に買わせてくれ。じゃないと恰好がつかないだろう?」
私の頬に付いたねぎを手で取りぺろりと舐める仕草に思わずどきりとしてしまった。
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