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秋のお茶会

やっと嵐が過ぎ去りました。

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 お母様とガイア王妃が1度席を立つと、先程の暗雲とした空気が少し収まり、何事も無かったかのように各々会話を始める。


「皆様、我関せずという感じなんでしょうか。」


「ふふ…。それはちがうわ。寧ろ慣れちゃっているのよね。」

 どうやら、ヘシオネリア様はお母様がお茶会やパーティー、夜会に参加をする度に突っかかって来ていたらしい。始めは向こうの方が立場が上という事もあり、我慢していたがとうとう限界を超えたお母様はキレてしまった。


 毎回「アレウスは私のなの。」「アレウスを誑かした女狐!」「アレウスを返してよ!」など言われのないことを言われ続ける。そして貴族らしくない発言や態度…。

 アーテリアも私にやたらと絡んで来ていたけれど、ヘシオネリア様の方が強烈だ。


「なんだか…公爵、侯爵の位を持っている人達にこんな方々ばかりで良いのでしょうか…。」

遠くでケーキを貪り尽くしているアーテリアを見ながら溜息を着く。
全く品位の欠けらも無い…。
周りのご婦人達がケーキを取ろうとすれば、全てを口に押し込める始末…。

食い意地がはっているにも程がある。


「ふふ…そうね。その辺りは国王陛下とあなたのお祖父様、お父様が動くんじゃないかしら。」


オリオン・ボードリエ。ディアナお祖母様の旦那様でであり、私のお祖父様でもある。


オルフェウスお祖父様は数年前に家督を継いでお父様が侯爵となっているが、オリオンお祖父様はまだまだ現役だ。因みにこの国の宰相でもある。


「ほら、噂をすれば…」


お母様の方を見てみると、お父様と国王様が迎えに来ていた。そしてその後ろには久しぶりに会うオスト様がいる。こちらに気づいたの手を振ってきたので振り返した。



「本当ですね。ヘシオネリア様もお父様が来たことに気付いたみたいですが…」


「大丈夫よ。ここにいるご婦人たちは分かっているから…」

ヘシオネリア様はお父様をみて目がハートになっている。見た感じダルデンヌ公爵には興味がなく、今もまだお父様の事が好きなようだ…
一途に好意を寄せられる事だけは素晴らしい事なのかもしれないが、相手が相手なだけになんだか複雑である。

ヘシオネリア様が立ち上がり、ドスドスと大股でお父様やウラヌス国王陛下の所へ向かっていこうとすると、周りのご婦人たちがさっと道を塞いだ。
見事な連携プレイだ。

「ちょっと、通してよ!」

「ここから先は通せませんわ!」


もう少しスリムな体型であればすり抜けていけそうなところだが、ふくよかな体格を見る限り近寄っていくのは難しいだろう。


「昔からの恒例なのよ。お世辞抜きにして、アフロディーナもアレウスも美男美女でしょ。」


「はい…」
贔屓目なしにして、娘の私から見ても美男美女だ。そして40代には見えない…

「確かにアレウスやアフロディーナに恋をする人はいたけれど、あの二人を見たら誰も間に入ろうとはしないのよ。寧ろ二人が一緒にいる姿を見たいという人ばかりね。絵になるから…2人が見つめあって微笑んでいる姿をみれば、幸せが訪れるなんて迷信もあったくらいよ。」

なんだか神聖化されている…。確かにご婦人たちの一糸乱れぬ動きは慣れている所では無い。まるで二人の騎士のようだった。


そんな中でも未だに大きな声でお父様を呼んでいるヘシオネリア様。


お父様がその声に気づき、ヘシオネリア様を見るとある一言を言い放った。


「誰だ。あいつは…。あんな知り合いいたか…?」


お母様はその言葉を聞いてお父様に耳打ちした。
声は聞こえていないけど何を言っているのか何となく分かる。


「なに!?ヘシオネリアだと…たしか俺の知っているヘシオネリアは…あんな豚ではなかったような気がするのだが…」


お父様…流石に腹立たしくで女性に豚なんて言ってはいけません…。
ヘシオネリア様に今の声がとどいたのか、ハンカチを口で加えて悔しそうにしていた。

でも確かに太り過ぎだ。ヘシオネリア様もアーテリアも…本当に一体何があったのだか。

まぁ、なんとなく想像はつくけれど…


「ウラヌスお兄様!!」


「な…お、おまえ本当にヘシオネリアか!?俺の知っているヘシオネリアはもう少し美しかったと思うのだが…衛兵よ!ちょっとこちらに来い。」


国王陛下が衛兵を呼んだことでヘシオネリア様は何を勘違いしたのかしたり顔で、お母様の方を見ている。
あぁ…もしかしたらお母様を捕まえているとでも思っているのかしら…。


「はっ!なんでしょうか。」


「ここにヘシオネリアとアーテリアの偽物が紛れ込んでいるようだ。つまみ出せ。」


「はっ!承知致しました!」
国王陛下に敬礼をすると衛兵は駆け足で2人のところに向かう。

「な、何するのよ!私はヘシオネリアよ。こんなことしていいと思っているの!?捕まえるのは私ではなくあそこにいるアフロディーナでしょ!?お兄様助けてください!」

「私何もしていないわ!なんで私までこんな目に遭わなきゃ行けないの!?ウラヌス叔父様辞めさせてくださいませ。」

オスト様の婚約者でもないのに国王の事を叔父様って…。ヘシオネリア様もヘシオネリア様だ。本当に二人の性格は嫌な意味でそっくりな気がする。

ウラヌス国王陛下にもお父様にも二人の声が届いているのだろうが聞こえないふりをして、踵を返し歩き出した。


「やっと嵐が過ぎ去りましたね。」


「そうだね…」

お祖母様に話しかけたのだが返ってきた声は凄く低い声だ。

「オ、オスト様…。」

「ボードリエ夫人はボードリエ公爵に話があると帰っていったよ。近々2人で行くから待っていて欲しいと言付かった。さて、嵐が過ぎ去ったし、俺もモンブランを頂こうかな。」

お祖母様何も言わずにオスト様と入れ替わるなんて…
心臓に悪すぎます。


「そうですね…まだお茶会は始まったばかりですし、楽しみましょう。」


私たち二人が楽しそうに話している姿を周りが見ているなんて知る由もなかった。

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