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秋のお茶会
ガイア王妃とのお茶会。
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「ガイア王妃。この度はお招きいただきありがとうございます。」
「そんなに緊張しないで頂戴。今日は2人ですし、ゆっくりお話ししましょう。」
扇子で口元を少し隠しながら話しかけてくれる王妃に少しばかり緊張が解れた気がする。
侍女たちがお茶や、お茶菓子などを準備すると皆一礼してから退出していった。どうやらほんとに二人で話をするようだ。
「私ずっと娘が欲しかったのよ。私もメルティと呼んでもいいかしら?」
侍女たちが離れていくのと同時に、少し緊張がゆるんだのか口調も柔らかいものに変わっていく。
「勿論です。ガイア王妃…ガイア王妃に愛称で呼んでいただけるなんて光栄です。その…私もお義母様と呼んでもよろしいでしょうか?」
「えぇ!むしろこちらからお願いしようと思っていたのよ。私のことはお義母様と呼んでちょうだい。それで…あまり時間もないし早速本題なのだけれど…」
そう言って来週開催される王妃主催のお茶会についての話を始めた。王妃主催のお茶会は季節の移り変わりの時期に一度行われるため、年に4回ほど行われる。今回は今年3回目の秋のお茶会だ。
年に4回行うお茶会の中で一番規模の大きいお茶会がこの秋のお茶会だ。秋のお茶会は貴族のご夫人方や、娘さんのほとんどが参加する。
「今回は少し暖かったから、紅葉が少し遅かったの…でもその変わり、たくさんのお花を準備する予定よ。」
「そうなんですね。それはとても楽しみです。どのようなお花をご準備されるのですか?」
花の話をされているお義母様は、少女のようにはしゃいでいる。相当お花が好きなんだろう。話を聞いていると、秋桜や桔梗を準備するらしい。
「秋桜はちょうど今の時期が見頃ですものね。とても楽しみです。」
この王宮は春夏秋冬の庭があり、それぞれの季節ごとに見頃になるように調整されている。
「それでね、あまり時間が無くて申し訳ないのだけれど…メルティにお願いがあるの。」
「お願いですか?なんでしょうか?」
突然真剣な顔になったガイア王妃に私もゴクリと唾を飲み込む。
「あなたにもお茶菓子を準備して欲しいのよ。そんな難しく考えなくていいわ。何を出すか考えてくれればいいのよ。」
「分かりました。ちょっと考えてみます。期限はありますか…?」
あまり時間の無い中で、どうやって立ち回るか。恐らくこれはガイア王妃からの課題なのだろう…。王妃であればどんな状況でも焦ってはならない。その場で最適解を見出さなくてはならないこともあるだろう。
国王や、王妃の一言で国民の人生を左右こともあるかもしれない。
「そうね…早ければ早い方がいいわ。私が用意する予定のお菓子はこの子達よ。」
一枚の紙にはリストアップされたお菓子の名前が色々載っていた。
チョコレート、クッキー、チーズケーキ、フロマージュ、カスタードプティング、など、お菓子というお菓子の名は出揃っている気がする。
「できるかしら?」
先程までホワホワしていた雰囲気は一転し、こちらを見ている。
「はい、3日の猶予を下さい。試作品をお持ち致します。」
お菓子にはそれぞれあった紅茶があるし、お菓子だけ準備して終わりではないだろう。きっとそれに見合った飲み物を準備する必要がある。きっとそこまでが課題なのだと考えた私は王妃様の期待に応えようと心に決めた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
ヘリーオスト王太子殿下視点。
「母上!今日メルティにお会いしたと聞きましたが…」
公務から戻るとアルマンから母上とメルティが2人でお茶会を開いていたと聞かされた。どんな話をしたのかは誰も知らないそうだ。
母上のことだ。無理難題をふっかけてなければいいのだが…。
「えぇ。とても素直でいい子だったわ。あの子だったら王妃としての器も申し分ないし、オストと一緒にこの国を背負っていくに値するかもしれないわね。」
アーテリアと婚約している時は全てを諦めていた母上だったが、今の母上はとても楽しそうだ。
今まで母上も苦労してきたことは知っている。だからこそ時期王妃となる者が苦労しないように厳しく接してくれていた。アーテリアにはそれが全く通じていなかったようだが…。
「母上がそこまで絶賛するなんて珍しいですね。」
「あら、失礼ね。アーテリアの時だって褒める所があれば褒めていたわよ。ただあの子は…ちょっとね…」
元婚約者としても確かに褒められるところがないのは分かる…
強いて言うなら、明るいところとか…フレンドリーなところなのか…。まぁアーテリアの場合は度が過ぎていて我儘とか、馴れ馴れしいとか図々しいという言葉の方が似合いそうだが。
「確かにそうですが…あまり無理難題はやめてあげてくださいね。」
「あなただってメルティに甘々じゃない。無理難題なんか吹っかけていないわ。それにメルティならできると思っているの。だから秋のお茶会が楽しみだわ。」
秋のお茶会って確か1週間後だったと記憶しているが、何をお願いしたのか聞こうと思っているといつの間にか母上は自室に戻っていた。
「仕方がないから少しだけ秋のお茶会に顔を出すか……特に何も無ければ良いが…」
無事に秋のお茶会を終えられることを祈ることしか出来なかった。
「そんなに緊張しないで頂戴。今日は2人ですし、ゆっくりお話ししましょう。」
扇子で口元を少し隠しながら話しかけてくれる王妃に少しばかり緊張が解れた気がする。
侍女たちがお茶や、お茶菓子などを準備すると皆一礼してから退出していった。どうやらほんとに二人で話をするようだ。
「私ずっと娘が欲しかったのよ。私もメルティと呼んでもいいかしら?」
侍女たちが離れていくのと同時に、少し緊張がゆるんだのか口調も柔らかいものに変わっていく。
「勿論です。ガイア王妃…ガイア王妃に愛称で呼んでいただけるなんて光栄です。その…私もお義母様と呼んでもよろしいでしょうか?」
「えぇ!むしろこちらからお願いしようと思っていたのよ。私のことはお義母様と呼んでちょうだい。それで…あまり時間もないし早速本題なのだけれど…」
そう言って来週開催される王妃主催のお茶会についての話を始めた。王妃主催のお茶会は季節の移り変わりの時期に一度行われるため、年に4回ほど行われる。今回は今年3回目の秋のお茶会だ。
年に4回行うお茶会の中で一番規模の大きいお茶会がこの秋のお茶会だ。秋のお茶会は貴族のご夫人方や、娘さんのほとんどが参加する。
「今回は少し暖かったから、紅葉が少し遅かったの…でもその変わり、たくさんのお花を準備する予定よ。」
「そうなんですね。それはとても楽しみです。どのようなお花をご準備されるのですか?」
花の話をされているお義母様は、少女のようにはしゃいでいる。相当お花が好きなんだろう。話を聞いていると、秋桜や桔梗を準備するらしい。
「秋桜はちょうど今の時期が見頃ですものね。とても楽しみです。」
この王宮は春夏秋冬の庭があり、それぞれの季節ごとに見頃になるように調整されている。
「それでね、あまり時間が無くて申し訳ないのだけれど…メルティにお願いがあるの。」
「お願いですか?なんでしょうか?」
突然真剣な顔になったガイア王妃に私もゴクリと唾を飲み込む。
「あなたにもお茶菓子を準備して欲しいのよ。そんな難しく考えなくていいわ。何を出すか考えてくれればいいのよ。」
「分かりました。ちょっと考えてみます。期限はありますか…?」
あまり時間の無い中で、どうやって立ち回るか。恐らくこれはガイア王妃からの課題なのだろう…。王妃であればどんな状況でも焦ってはならない。その場で最適解を見出さなくてはならないこともあるだろう。
国王や、王妃の一言で国民の人生を左右こともあるかもしれない。
「そうね…早ければ早い方がいいわ。私が用意する予定のお菓子はこの子達よ。」
一枚の紙にはリストアップされたお菓子の名前が色々載っていた。
チョコレート、クッキー、チーズケーキ、フロマージュ、カスタードプティング、など、お菓子というお菓子の名は出揃っている気がする。
「できるかしら?」
先程までホワホワしていた雰囲気は一転し、こちらを見ている。
「はい、3日の猶予を下さい。試作品をお持ち致します。」
お菓子にはそれぞれあった紅茶があるし、お菓子だけ準備して終わりではないだろう。きっとそれに見合った飲み物を準備する必要がある。きっとそこまでが課題なのだと考えた私は王妃様の期待に応えようと心に決めた。
⟡.·*.··············································⟡.·*.
ヘリーオスト王太子殿下視点。
「母上!今日メルティにお会いしたと聞きましたが…」
公務から戻るとアルマンから母上とメルティが2人でお茶会を開いていたと聞かされた。どんな話をしたのかは誰も知らないそうだ。
母上のことだ。無理難題をふっかけてなければいいのだが…。
「えぇ。とても素直でいい子だったわ。あの子だったら王妃としての器も申し分ないし、オストと一緒にこの国を背負っていくに値するかもしれないわね。」
アーテリアと婚約している時は全てを諦めていた母上だったが、今の母上はとても楽しそうだ。
今まで母上も苦労してきたことは知っている。だからこそ時期王妃となる者が苦労しないように厳しく接してくれていた。アーテリアにはそれが全く通じていなかったようだが…。
「母上がそこまで絶賛するなんて珍しいですね。」
「あら、失礼ね。アーテリアの時だって褒める所があれば褒めていたわよ。ただあの子は…ちょっとね…」
元婚約者としても確かに褒められるところがないのは分かる…
強いて言うなら、明るいところとか…フレンドリーなところなのか…。まぁアーテリアの場合は度が過ぎていて我儘とか、馴れ馴れしいとか図々しいという言葉の方が似合いそうだが。
「確かにそうですが…あまり無理難題はやめてあげてくださいね。」
「あなただってメルティに甘々じゃない。無理難題なんか吹っかけていないわ。それにメルティならできると思っているの。だから秋のお茶会が楽しみだわ。」
秋のお茶会って確か1週間後だったと記憶しているが、何をお願いしたのか聞こうと思っているといつの間にか母上は自室に戻っていた。
「仕方がないから少しだけ秋のお茶会に顔を出すか……特に何も無ければ良いが…」
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